詩「モーニング・イディオット」 書き手・石川勝敏
朝目覚めてすぐ 聞こえる
絡みついてくる
それはモーニング・イディオット
いつまでも相手してくれと
せがんでくる訴求者たち
夏の暑い朝 私はまず喉をアイスコーヒーで癒やし
鍋に米を入れ炊きだす
炊飯器は生活保護では支給されない ここ吹田市では
私は1ミリたばこに火を点ける
わずか1ミリならお金がもったいないだけと思いつつ
ヒルのように 私の脳を這いずり回っている
それはモーニング・イディオット
NHKをつけて ニュースチェックしながらも
聞き取りづらい イディオットがわめいてくるから
ご飯が炊き上がった さあ植木鉢に水やりだと
表に出る 階下の年増女が下から覗いてくる
現実だから 気狂いだと うっちゃられる
ここは都会の僻地 触らぬ神にたたりなし
水を与え植物を愛でる心に水を差す
それはモーニング・イディオット
それはそれはとても悲しい話だけれど
部屋にやっと冷房を入れひと休みしだすと
独り言して相手している私があらわれる
うるささに根負けして 私は身柄を引き渡す
何も悪いことはしていず
今いい事をしているねとはモーニング・イディオットの弁
毎朝毎朝 続く カラスの声たちは
昼も夜もおかまいなし
朝目覚めてすぐ 聞こえる
絡みついてくる
それはモーニング・イディオット
朝日に照らしだされた それは一日の幕閉じ
そう それは既に一日が潰れる 魔界からの宣告
夕日は夕日にあらず
また同じ一日が始まる
また同じ一日が始まる