農家はそれほど悪くない。庭先で札びらをちらつかれて、農協に約束していたコメをコメ卸の集荷業者に売ってしまった農家以外は。
令和24年のコメの仮渡金は特別銘柄米を除く一級米は、全国平均で60キロおよそ16000円。5キロ換算で1500円もしない。庭先で、見知らぬ集荷業者から60キロ2万円で買うと言われれば、その場の現金で売ってしまうのも無理はない。
しかし、それらのコメは、スーパーの売り場では4000円で販売されている。流通の段階で2倍から3倍に跳ね上がっているのだ。卸業者や集荷業者はたまらないだろう。儲けすぎて。そして、さらに儲けようとコメ倉庫に山積みして出荷を抑えている。
政府は何もしない。備蓄米の放出だと? それが何の役に立つというのだ。入札は高値入札ではないか。もし、政府にコメの価格を下げようとする腹があるのなら、23年に備蓄米として仕入れた価格に保管料と輸送費を上乗せした価格で市場にはきだせば、コメ価格は一挙に下がる。
あるいは、カルフォルニア米にかけている1キロ当たり350円の関税を撤廃して、自由に輸入させればいい。そうすると、うまいカルフォルニア米が5キロ1300円ちょいで買えることになる。
しかし、政府は何もしない。先日、米政府の報道官が日本はアメリカのコメに770倍の関税をかけていると主張したが、それはアメリカの過去の安かった時の価格に対しての数字だから、少しオーバーな話であった。
しかし、政府はかなりの衝撃だったらしい。なにしろ、コメの日本人の主食である。そのコメが高くて買えないとあらば、すぐさまコメ騒動が起きるからだ。そこで、政府ヨイショの評論家が、カルフォルニア米は農薬などの品質の面で問題があると冷まし水をかけた。
とんでもないバカである。
日本のコメの99パーセント以上は「農薬米」である。無農薬米は1パーセントもない。減農薬米はあるが、少し農薬を抑えたというだけの話。アメリカも日本も農薬なしではコメが商品化できないのだ。本当の無農薬米は、農家自身が自家消費のために特別の田んぼで栽培している米だけだ。無農薬米は難しい。自分の田んぼが無農薬でも、上流の田んぼで農薬を使っていれば、それでおしまい。水を共有しているからだ。だから、上流に田んぼがない所でしか無農薬米は作れない。
同じ、「農薬米」ならば、カルフォルニアのカルローズ米のほうが安くておいしい。実際に食べておいしかった。
このように、悪質米卸業者、集荷業者の取り締まり、カルフォルニア米の関税撤廃などに政府が動けば、コメは安くなる。
コメの高値は、人災である。