かめよこある記

~カメもタワシも~
To you who want to borrow the legs of a turtle

不安な夜にフィリフヨンカ

2019-10-11 22:34:31 | かめよこ話
 
 カフェでのランチを食べながら、店内に流れるジャズ風(?)に女性ボーカルがカバーしている曲を頭の中で当てっこする。
 これはビリー・ジョエル、次はシンディ・ローパー、ジャミロクワイだ・・・。なかにひとつ、わかりそうでいて出てこない曲があった。
 どこかで耳にしたことがあるというだけで、アーティスト名や曲名を知っているわけではないのかも知れない。気をもんで、それを当ててみたところで、どうということでもない。
 それでも、後にショッピング・モールを歩きながらもフレーズを頭の中で繰り返していると、
 キスオブライ、キッスオブ・・・・。
 そうだ、シャーデーだ! ふいにモヤが晴れた。
 食品売り場でパンが、ごっそり無くなっているのには驚いた。焼きたてパンの店のパンまでもが。これも台風の影響だ。
 
 連日、また凄い台風がやってくるぞと繰り返し見聞きする。伝えるべき情報を伝えているだけかも知れないが憂鬱になる。
 まだ、前回の台風の記憶も生々しく、以前、目の前で車庫の屋根が次々飛ばされていった恐怖の体験が蘇ってくるのだ。
 まるで、隕石でも衝突して地球最後の日を宣告されているかのような気分。
 それも、じわじわと脅されしめつけられているようでつらい。どうせ避けられないものなら早く終わらせてほしいよ。
 そういえば、こんな話あったなと思い、本を引っ張りだしてみた。
 トーベ・ヤンソン「ムーミン谷の仲間たち」の短篇の中のひとつ「この世のおわりにおびえるフィリフヨンカ」。
 ひらがなが多い(こども向けの本なので)。しかし、中身はとても子供向けのようには思えない。
 浜辺で絨毯を洗濯、波に洗わせているフィリフヨンカは穏やかに暮らしているように見える。だが、彼女はいつも言い知れぬ恐怖の予感におびえていた。
 お茶飲み友達のガフサ夫人との会話も噛みあわない。そして、本当にその恐怖は訪れる。嵐が家を襲ったのだ。
 煙突は倒れ、天井に穴があき、強い風が吹きこんで家の中はメチャメチャになってしまう。そんな嵐の真っ只中、ついに気でもふれたのかフィリフヨンカは外に飛び出していく。そこで、彼女は・・・。
 今、読んだところで心が落ち着くとか、そういう話ではない。フィリフヨンカの気持ちにも共感出来るような心境には到底ない。
 台風が過ぎ去った後に、自分がどんな気持ちでいることになるのか皆目見当がつかない。彼女のように嵐と向き合い、それが過ぎ去るまでは。
 嵐の前のしずけさ。こんな静けさの中に一刻も早く戻ってきたい。
 
 
 なんか大きいもんが羽ばたいてるなあと思ったらカブト虫だったわ。
(今夏撮影)
 

 


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