【No Ball,No Life】馬の耳に念仏とはこのことだ。国内組で挑んだ東アジアE-1選手権の合宿3日目のこと。恒例の体脂肪率に関する指導でハリルホジッチ監督が「代表に入りたいなら落としていかないと。ネイマールを追いかけないといけないんだから」と激怒した。
2015年3月の就任当初から、体脂肪率を12%以下に下げてほしいと耳にタコができるほど言い続けたが、いまだに違反者が続出。おそらく監督の説教を、うるさいと聞き流している選手もいるのだろう。ならば結果で証明すべきだが、E-1では宿敵・韓国に当たり負けし、ホームで1-4と歴史的な大敗を喫した。Jリーガーが意識の低さを露呈したと言わざるをえない。
日本人は欧米、アフリカなどと比べ骨格で見劣りするため、フィジカル負けは仕方ないとの風潮がある。しかし、努力次第でみるみる成果が上がるのがフィジカルの分野だ。原口(ヘルタ)のここ数年の変貌を見るべきである。シドニー、アテネ五輪陸上男子110メートルハードル代表で、現在は筑波大学で准教授を務める谷川聡氏に個人的に師事。体幹を鍛えながらランニングフォームを整え、走りの質を上げてきた。
いまでは日本の左サイドを無尽蔵にアップダウン。E-1の韓国戦では両サイドハーフの守備への戻りが緩慢で失点につながったが、原口であれば最後の一歩までしつこく追い回しただろう。そんな彼も、高校生で浦和のトップチームに昇格したときは、スタミナ不足で守備に戻れずチームに迷惑をかけていたのである。
不動の1トップに成長した大迫(ケルン)にしてもそうだ。前回のブラジルW杯では2試合で0得点と悔しさを味わった。ドイツ移籍当初も外国人DFに潰されていたが、トレーナーと肉体改造に取り組み、負けないフィジカルを手に入れたのである。
「体脂肪」というキーワードでハリルホジッチ監督は語るけれども、つまりはフィジカルに対する意識を上げろと促しているのだ。2010年南アフリカW杯の岡田武史監督は「体幹」という言葉を使っていた。原口や大迫もJリーグ在籍時は、この分野のトレーニングに熱心なタイプでは決してなかった。当時は、体を鍛えなくてもやれてしまうJリーグの現状に甘んじていたのだろう。
フィジカル改造という分野は、日本サッカー界が本格的に手をつけていない金の鉱脈といえるのではないか。原口や大迫を見ると、人種の違いは言い訳にはできない。Jリーガーが意識を高め日常を変えれば、まだまだ日本は強くなる要素がある。(浅井武)
「SANSPO.COM 2017年12月21日掲載」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171221-00000538-sanspo-socc