スカイフロントフォーラム2008「パネルディスカッション質問シート」
【1】和歌山大学准教授 山田宏之様への質問
Q-1.
アオギリなど生育の早い木が鳥の糞によってもたらされるケースがあります。
屋上緑化の部分にアオギリが成育し、それが風害によって倒木する恐れがある場合、どのように対応すべきでしょうか?
A-1.
倒木しても構わない(落下や屋上利用者への危険性あるいは屋上施設は損の 危険性が無い。)ような位置に生えているのであれば、そのまま生育させておいても良いと思います。僅かでも危険性がある場合は早急に伐採すべきです。アオギリのようなものは剪定を行なっても良い樹形が保てないと思われますので、剪定管理で対応するというのは現実的でないように思います。
Q-2.
自治体で屋上・壁面緑化の助成事業を担当しています。平成19年度は11件の助成を行ないましたが、このうち壁面緑化の助成は1件でした。都市景観の向上には壁面緑化は有効であると考えています。 そこで、何が原因で壁面緑化が進まないとお考えですか?お伺いします。
A-2.
ツタを地面に植えて壁面に這わすような方法であれば、どんな建物でも壁面緑化は出来ますが、日本の建築物を考えた場合、このような工法が相応しい建物は僅かです。お年寄りのなかには、そもそも建物の壁にツタを生やしてはいけない、と頑なに信じ込んでいる人も多いですから、壁面緑化をやろうという欲求が社会全体に低いのかもしれません 。植栽基盤ごと壁面に取り付けるような工法は、デザインの自由度が高く、設置後の管理も容易なことから、様々な建物に適用できますが、非常に高価(概ね20万円/㎡以上)です。これが普及を妨げる最大の原因だと思います。 また、オフィスビルなどで大規模に壁面緑化を行なう場合には、建物側にも様々な条件が 要求されるために、既に建てられている構造物の場合、後から緑化することが困難な場合が多いのです。これが2番目の原因になると思います。
Q-3.
外国の例(特に米国の例)を教えてください。
A-3.
米国の古い屋上緑化の例としては、ニューヨークのトランプタワーのテラス緑化、オークランドミュージアムの人工地盤緑化、同じくオークランドのカイザーセンターの人工地盤緑化などが良く知られています。 イギリスのロンドンには、デリー&トムズ百貨店があり、1938年に作られた屋上庭園が見られます。ドイツではカールスルーエ、カッセルといった街で、数十年前から屋根緑化を行なった建物が多数見られます。
【2】三菱地所株式会社 井上成様への質問
Q-1.
緑化がビオトープのようになると、招かざる客(害鳥、害虫、草への病気等)が心配です。対策についてご教示お願いします。
A-1.
そもそもビオトープとは「生き物が生息する場所」なので、害虫や害鳥を含め、生物を受け入れていく場所として覚悟しなければならないのが原則とは思いますが、ある特定の害虫や害鳥が集まるには、何らかの因果関係があるのが生態系の摂理なので、それを取り除くか、あるいは害虫が集まらないようハーブ系の植物を植える等の工夫を地道にしていくのが対応として考えられます。
Q-2.
大丸有地区に皇居を呼び込み、カルガモが屋上に生まれたらどうしたらよいのでしょうか?
A-2.
カルガモの生育環境に必要なのは、水面ではなく、本来は沼地のような浅瀬です。新鮮な水と浅瀬が必要だとすれば、屋上緑化部分にカルガモが生まれることは少し想定しにくい気がします。生まれればそれはそれで話題性もあるので、生育場所として相応しい環境づくりを検討するとは思いますが、大丸有地区はとにかくビル中心の土地利用なので、余程皇居の水と緑に連続した再開発をしない限りは難しいのではないでしょうか。
Q-3.
「魅せる」緑化から「生産する」緑化というお話がありましたが、行政との連携の中から 貸し菜園のような動きも出てきているのでしょうか?有れば具体的にお話いただけると幸いです。
A-3.
質問にある「行政との連携の中で、家庭菜園の位置づけが変わってきたのか?」については、特にそうではありません。行政的には、屋上緑化の評価は依然としてヒートアイランド現象や地球温暖化対策、あるいは良好な都市景観形成の視点からの評価が中心で、コミュニティー拠点あるいは生物拠点として家庭菜園を評価する動きは無いと言えます。行政ではなく民間が他物件との差別化、集客効果を狙って、いわば経済的な価値を家庭菜園に期待して取り組む事例が出てきているのが実情ではないでしょうか。
Q-4.
井上様は都市に生き物を呼び込むことをどうお考えですか?
A-4.
昨今の環境問題では、地球温暖化防止、CO2排出抑制が議論の中心になっておりますが、例えば環境省が掲げる環境立国戦略では、目指すべき持続可能な社会の実現の為に、低炭素社会、循環型社会と並んで自然共生社会への取り組みが挙げられています。そのなかでは「生物多様性の保全による自然の恵みの享受と継承」が具体の戦略となっておりますが、これは何も農村や郊外に限った話ではなく、都市部においても生物多様性を保全することを妨げるものではないと思います。 昔に比べ、都市部の生き物が減ったと感じるのは小職だけの感覚ではなく、ある年代以上 の共通した印象ではないかと思いますが、治水や道路の舗装化、上水道の整備等都市生活の利便を追求した結果として、生物が生息する緑(森や林、野原)や水面が減った事と無関係ではないはずです。ここ最近は、緑化や水辺の復活が取り組まれる再開発事例も増えてきましたが、そこには ヒートアイランド現象の緩和という視点に加えて、蝶や鳥を呼び込んで都市のアメニティを高めることも狙った取り組みでもあります。 増えれば増えたで問題や課題(例えば鳥インフルエンザなど)が持ち上がる可能性はありますが、都市と郊外あるいは外部との連関をもって都市が閉鎖空間ではない、一定の生態系の中で一定の役割を果たしていくためには、都市に生き物をもう少し復活させる必要があると思っています。
【3】かをり商事株式会社 板倉敬子様への質問
Q-1.
昨年見に行きました。裏側にネットを設置してありましたが、あれは何のためですか? 落ち葉が落ちるからでしょうか?
A-1.
お隣のビルオーナー様の要請によりツタがお隣に乗り移らないようネットで防止しました。壁面にツタを這わせると壁が剥がれると思っておられるようですが、当社のビルは築40年近くになりますが、ツタの影響で壁が剥がれたというような事例はありません。
【4】有限会社豊島屋ビル 木村蓉子様への質問 トーセイ株式会社 藤原宣人様への質問
Q-1.
屋上緑化を行なって最も良かったと思うことは何ですか?
A-1.
豊島屋木村社長:
豊島屋ビルを今では「幸せになる貸しビル」と銘打って経営しております。人が快適に仕事が出来る空間の提供が私の責務ですから、その考えでどうしても緑化は外せないアイテムです。思った以上の空間を作ることができて良かったですし、考えていた以上のCO2削減もできて「瓢箪から駒」です。
A-1.
トーセイ藤原部長:
環境に配慮した不動産を提供でき、お客様はじめメディア、行政からもご評価を頂いている点。
Q-2.
メンテ費用を負担に思うことはありますか?
A-2.
豊島屋木村社長:
プランの段階からメンテ費用は計算していましたので、負担とは考えていません。どうしても辛くなったら自分でやると思います。
A-2.
トーセイ藤原部長:
自動潅水システムなどローコストのメンテナンス手法を取り入れるようにしているため、現時点大きな負担とはなっていません。
【5】パネリスト全員への質問
Q-1.
皆さまのビルは台風を経験されましたか?結果はどうでしたか?
A-1.
かをり商事板倉社長:
何度も経験していますが、落ち葉が多い程度で、特に被害が出たようなことはありません。
A-1.
豊島屋木村社長:
昨夏は2度ほど台風に見舞われましたが、意外なほど被害はなく、落ち葉が多い程度でした。
A-1.
トーセイ藤原部長:
経験あり。風雨の影響を受けやすい屋上の特性上、多少のメンテナンス(土がこぼれるなど)は必要であるが、想定の範囲であり、通常のメンテナンスでカバーしている。
Q-2.
壁面緑化がなかなか進まない原因は何だと思われますか?
A-2.
和歌山大学山田准教授:
上記参照
A-2.
かをり商事板倉社長:
皆さん、お金が掛かる、手入れが大変、という先入観があるからではないでしょか?肩に力を入れず、まずやってみることだと思いますよ。
A-2.
豊島屋木村社長:
水の歩留まりが悪く枯れ易いと聞いておりますし、清潔感がないように誤解している方も いらっしゃるのでは。また、今流行のガラスウオールのビルには全く不向きですし。ビルのデザインがもっと環境にやさしいものに変わっていかないとおかしいと思います。
A-2.
トーセイ藤原部長:
コストの問題が一番だと思われます。ツタ類などローコストの壁面緑化もあるが、この場合は生育に時間が掛かることがネックになると思われる。
NPO法人 屋上開発研究会大阪支部 定例会 平成20年度第1回
2008 APRIL SESSION OSAKA のご案内
【定例会】
開催日時:2008年 4月24日(木)
16:00~18:00 (2H)
場 所:大林ビル(大阪市中央区)4階の会議室
【懇親会】
開催日時:2008年 4月24日(木) 18:00~
場 所:定例会会議室の近く
*案内メールを送らせていただいた方は返信にて出欠をお知らせください。
「スカイフロントフォーラム2008」開催予告!!
「やって良かった!!屋上緑化」
民間企業必見!屋上緑化の効果と成功の法則
平成20年2月13日
■開催日時 :平成20年3月17日(月)13:00~17:00
■開催場所 :住宅金融支援機構本店1階「すまい・るホール」
(東京都文京区後楽1-4-10)
■開催内容
第一部(13:00~14:00 )
基調講演 「屋上緑化古今東西:先人に学ぶ緑化の活用法」
講師:山田宏之氏(和歌山大学システム工学部准教授)
第二部(14:00~14:30)
講 演 「大丸有地区の最新都市づくり事情:
クールシティーに向けた新たな取り組み」
講師:井上 成氏(三菱地所株式会社都市計画事業室 副室長 )
休憩 (14:30~14:40 )
第三部(14:40~16:40)
パネルディスカッション 「やって良かった!!屋上緑化」
コーディネーター: 和歌山大学 山田准教授
パネラー(予定):
三菱地所 井上 成 (都市計画事業室 副室長)
レストラン「かをり」 板倉敬子 代表取締役社長
オフィスビル「豊島屋」様
小田原駅ビル「ラスカ」様
トーセイ株式会社様
■定 員: 先着200名
■参加費用: 一般:5,000円(当日6,000円)(消費税込み)
会員:4,000円(当日5,000円)(※会員紹介含む)
学生:2,000円(当日3,000円) (指定銀行に事前振込みとします)
■申込方法: 所定用紙に必要事項を記載の上、FAXでの申し込みとします。
■開催主旨: 多くの建物に屋上緑化や壁面緑化が採り入れられるようになってきましたが、まだまだ実施に躊躇されるビルオーナー様もたくさんいらっしゃいます。 国土交通省、環境省はじめ国の機関や東京都を筆頭とした各主要自治体では、CO2対策並びにヒートアイランド対策の有力な解決策の一つとして「建物緑化」や「都市緑化」を積極的に推進しようとしています。 このような動きに対応し、当屋上開発研究会としても建物緑化の普及のために様々な取り組みをしてきました。今まで、建物緑化を設計・施工するためのフォーラムや緑化メーカーによるフォーラム等「作る側」のフォーラムや勉強会はたくさん開催されてきましたが、「実際に使用する側」や「管理する側」から見たフォーラムは驚くほど少なかったというのが実情です。このたび企画しました「やって良かった!!屋上緑化」はそんな事情を考慮し、実際に建物緑化を実施されたビルオーナー様にお集まりいただき、その利点や効果あるいは解決すべき問題点など、使った側にしか分からないような内容について率直にお話しいただこうとして企画したものです。 今回お話いただけるビルオーナー様は、それぞれ環境改善とビジネスを両立され、素晴しい実績を収められておられます。このような先人の知恵やご経験を聞かせて頂くことで、より多くの皆さまに建物緑化について関心を持って頂き、実際に緑化する機会につながればこれに勝るものは無いと思っています。
*詳細は近日中にホームページに掲載します。
11月13日に開催された一時審査会で選ばれた5作品について、それぞれの提案者から10分間のプレゼンテーションと5分間の質疑応答を行いました。
5作品とも甲乙付け難い素晴しい内容でした。
プレゼンテーションの終了後に開かれました公開審査会で真剣に審議され、下記の通りの結果となりました。
最優秀賞
村尾直美様・加藤美歩様
「Special Meal For Children」
優秀賞
町田ひろ子アカデミー 河西きよの様
「東京『水源地』化計画」
優秀賞
町田ひろ子アカデミー 矢藤昭憲様
「緑化ナビ」
入選
京都造形芸術大学 是洞洋子様
「空中こども園」
入選
町田ひろ子アカデミー 牧田直子様
「企業が変われば街が変わる」
以上でした。
皆様奮ってご応募下さい!
開催日時:平成19年10月6日(土)、7日(日)am9:30~pm5:00
開催場所:新宿モノリスビル24階
東京都新宿区西新宿2-3-1
新宿駅西口・南口より徒歩5分
都営大江戸線都庁前駅徒歩5分
受講希望者は事務局までFAXまたは郵送にてお申し込みください。
受講料等詳細はホームページを参照下さい。
http://www.sky-front.or.jp/planner/index.html
現在「第3回学生のための屋上提案競技」を募集中で、テーマはヒートアイランド現象緩和のための「空間利用」「技術提案」「政策提言」の3つです。
10月10日に受付終了し、12月に公開審査を行う予定です。
また来年1月にはフォーラムの開催を予定しており、これらの活動を通じて更に当研究会の認知度を向上させるべく、これからも様々な情報を提供していきたいと考えています。
広報部会長 前田正明