〔よしなしごと〕

※不定期公開

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言葉の小箱【食事は不思議だ。終わらせ方にもその人の心理状態が透けて見える】

2024-12-18 11:12:07 | 近藤史恵


『マカロンはマカロン ビストロ・パ・マル③』近藤史恵(創元推理文庫2020年7月31日)

 

下町の小さなフレンチ・レストラン『ビストロ・パ・マル』はスタッフ四人、カウンター七席、テーブル五つ。
フランスの田舎を転々として、
料理修業をしてきた変人シェフ三舟の気取らない料理と身も心も温めてくれるヴァン・ショーは大人気。
実はこのシェフは客たちの持ち込む不可解な謎を鮮やかに解く名探偵でもある。
『コウノトリの運ぶもの』『青い果実のタルト』『共犯のピエ・ド・コション』『追憶のブーダン・ノワール』
『ムッシュ・パピヨンに伝言を』『マカロンはマカロン』『タルタルステーキの罠』『ヴィンテージワインと友情』
8話連作短編集


・人の心をのぞき見ることはできない P20

・レストランは、自分もまわりのお客さんにとっての風景になるでしょう。
あんまりラフな格好では行きたくないと思って P31

・どんな仕事でも失敗はつきものだ。
だが、接客業の失敗は、相手の失望がはっきりと目の前に突きつけられる。
しかも、こちらが怒られるだけならまだいいが、
お客さんに迷惑をかけてしまうことがあれば、なおさら気持ちは落ち込んでしまう。
しかし、こちらも人間だ。
なるべく失敗を少なくする努力はできても、まったく失敗をしないことはできない P45

・細やかなサービスというのは、ただ過剰に世話を焼くこととは根本的に違うのだ P48

・ときどき思う。
店というのは小川のなかの小石みたいなものだと。
お客は魚で、一度通り過ぎてもう戻ってこない人もいれば、
そのあたりにとどまって、何度も小石のそばまできてくれる人もいる。
しばらく姿を見ないかと思うと、がらりと違う印象で現れる人もいる。
もちろん、岩ではなく小石だから、こちらもそれほど堅固に同じ場所にいられるわけではない。
濁流がくれば簡単に押し流されてしまうだろう。
その場にいても、形が変わってしまうかもしれない。
それでも、ひさしぶりに懐かしい顔のお客さんが現れると、
ここで店を続けていられてよかったなぁ、と思うのだ P72

・息抜きは誰にでも必要ですよ P76

・レストランという場で見えるのは、お客さんたちの晴れやかな顔、リラックスした顔ばかりだ。
偶然、夜の電車で見かけたお客さんの顔が、別人のように疲れ果てていて、驚いたことも何度かある P86

・食事は不思議だ。
終わらせ方にもその人の心理状態が透けて見える P87

・人がいちばん仲良くなる方法は、秘密を共有することだ P101

・一口食べて、嫌いならそれでいい。
無理に食べさせようとは思わない。
でも、食べないで嫌がるのは納得できない P114

・料理人は、人の喜びのために料理を作る(略)
その手間も、すべて食べてくれる人たちの喜びのためだ。
薬ならば、苦くても価値はある(略)
嫌な人に無理矢理食べさせるようなものではない P118

・異文化を知らなければ、異文化に対して寛容になれなくて当然だ。
でも、一度異文化の奥深さを知れば、気持ちは変わるのではないですか? P132

・同じものをおいしいと思えることは、とても大事なこと P133

・世間様のことなんか考えず、やりたいようにやるときもあるが、
世間様と無関係で生きていけるわけじゃないしな。
少しは気になるさ P208

・人に喜んでもらうのは、難しいことだと思います。
でも、それよりも友達はお互いを尊重し合うことが大事だと思いますよ。
その上で一緒にいて楽しいともっといい(略)
少なくとも、ひとりの人はあなたがこんな扱いを受けることをよしとしなかった(略)
もしかすると、好きとか嫌いよりも、それは大事なことなのかもしれない P267




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