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記事:軍事侵攻直前 プーチン大統領演説全文

2022-03-06 15:11:17 | 世界を見る眼

2022年3月4日 18時25分

2月24日に突然、ロシアがウクライナを侵攻。その日、侵攻直前に、ロシアの国営テレビはプーチン大統領の国民向けの演説を放送しました。
プーチン大統領は何を語ったのか?
演説全文は次のとおりです。

NATOの“東方拡大”への危機感

親愛なるロシア国民の皆さん、親愛なる友人の皆さん。

きょうは、ドンバス(=ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州)で起きている悲劇的な事態、そしてロシアの重要な安全保障問題に、改めて立ち返る必要があると思う。

まずことし2月21日の演説で話したことから始めたい。それは、私たちの特別な懸念や不安を呼び起こすもの、毎年着実に、西側諸国の無責任な政治家たちが我が国に対し、露骨に、無遠慮に作り出している、あの根源的な脅威のことだ。
つまり、NATOの東方拡大、その軍備がロシア国境へ接近していることについてである。

この30年間、私たちが粘り強く忍耐強く、ヨーロッパにおける対等かつ不可分の安全保障の原則について、NATO主要諸国と合意を形成しようと試みてきたことは、広く知られている。
私たちからの提案に対して、私たちが常に直面してきたのは、冷笑的な欺まんと嘘、もしくは圧力や恐喝の試みだった。

その間、NATOは、私たちのあらゆる抗議や懸念にもかかわらず、絶えず拡大している。
軍事機構は動いている。
繰り返すが、それはロシアの国境のすぐ近くまで迫っている。

西側諸国が打ち立てようとした“秩序”は混乱をもたらしてきた

なぜ、このようなことが起きているのか。
自分が優位であり、絶対的に正しく、なんでもしたい放題できるという、その厚かましい態度はどこから来ているのか。
私たちの国益や至極当然な要求に対する、無配慮かつ軽蔑的な態度はどこから来ているのか。

答えは明白。
すべては簡単で明瞭だ。

1980年代末、ソビエト連邦は弱体化し、その後、完全に崩壊した。
当時起きたことの一連の流れは、今でも私たちにとってよい教訓となっている。
それは、権力や意志のまひというものが、完全なる退廃と忘却への第一歩であるということをはっきりと示した。
当時、私たちはしばらく自信を喪失し、あっという間に世界のパワーバランスが崩れたのだ。

これにより、従来の条約や協定には、事実上、効力がないという事態になった。
説得や懇願ではどうにもならない。
覇権、権力者が気に入らないことは、古風で、時代遅れで、必要ないと言われる。

それと反対に、彼らが有益だと思うことはすべて、最後の審判の真実かのように持ち上げられ、どんな代償を払ってでも、粗暴に、あらゆる手を使って押しつけてくる。
賛同しない者は、ひざを折られる。

私が今話しているのは、ロシアに限ったことではないし、懸念を感じているのは私たちだけではない。
これは国際関係のシステム全体、時にアメリカの同盟諸国にまでも関わってくるものだ。
ソビエト連邦の崩壊後、事実上の世界の再分割が始まり、これまで培われてきた国際法の規範が、そのうち最も重要で基本的なものは、第二次世界大戦の結果採択され、その結果を定着させてきたものであるが、それが、みずからを冷戦の勝者であると宣言した者たちにとって邪魔になるようになってきた。

もちろん、実務において、国際関係において、また、それを規定するルールにおいては、世界情勢やパワーバランスそのものの変化も考慮しなければならなかった。
しかしそれは、プロフェッショナルに、よどみなく、忍耐強く、そしてすべての国の国益を考慮し、尊重し、みずからの責任を理解したうえで実行すべきだった。
しかしそうはいかなかった。

あったのは絶対的な優位性と現代版専制主義からくる陶酔状態であり、さらに、一般教養のレベルの低さや、自分にとってだけ有益な解決策を準備し、採択し、押しつけてきた者たちの高慢さが背景にあった。

事態は違う方向へと展開し始めた。

例を挙げるのに遠くさかのぼる必要はない。
まず、国連安保理の承認なしに、ベオグラードに対する流血の軍事作戦を行い、ヨーロッパの中心で戦闘機やミサイルを使った。
数週間にわたり、民間の都市や生活インフラを、絶え間なく爆撃した。

この事実を思い起こさなければならない。
というのも、西側には、あの出来事を思い出したがらない者たちがいるからだ。
私たちがこのことに言及すると、彼らは国際法の規範について指摘するのではなく、そのような必要性があると思われる状況だったのだと指摘したがる。

その後、イラク、リビア、シリアの番が回ってきた。

リビアに対して軍事力を不法に使い、リビア問題に関する国連安保理のあらゆる決定を曲解した結果、国家は完全に崩壊し、国際テロリズムの巨大な温床が生まれ、国は人道的大惨事にみまわれ、いまだに止まらない長年にわたる内戦の沼にはまっていった。
リビアだけでなく、この地域全体の数十万人、数百万人もの人々が陥った悲劇は、北アフリカや中東からヨーロッパへ難民の大規模流出を引き起こした。

シリアにもまた、同じような運命が用意されていた。
シリア政府の同意と国連安保理の承認が無いまま、この国で西側の連合が行った軍事活動は、侵略、介入にほかならない。

ただ、中でも特別なのは、もちろん、これもまた何の法的根拠もなく行われたイラク侵攻だ。
その口実とされたのは、イラクに大量破壊兵器が存在するという信頼性の高い情報をアメリカが持っているとされていることだった。
それを公の場で証明するために、アメリカの国務長官が、全世界を前にして、白い粉が入った試験管を振って見せ、これこそがイラクで開発されている化学兵器だと断言した。

後になって、それはすべて、デマであり、はったりであることが判明した。
イラクに化学兵器など存在しなかったのだ。

信じがたい驚くべきことだが、事実は事実だ。
国家の最上層で、国連の壇上からも、うそをついたのだ。

その結果、大きな犠牲、破壊がもたらされ、テロリズムが一気に広がった。
世界の多くの地域で、西側が自分の秩序を打ち立てようとやってきたところでは、ほとんどどこでも、結果として、流血の癒えない傷と、国際テロリズムと過激主義の温床が残されたという印象がある。

私が話したことはすべて、最もひどい例のいくつかであり、国際法を軽視した例はこのかぎりではない。
 
NATOが1インチも東に拡大しないと我が国に約束したこともそうだ。
繰り返すが、だまされたのだ。
俗に言う「見捨てられた」ということだ。

確かに、政治とは汚れたものだとよく言われる。
そうかもしれないが、ここまでではない。
ここまで汚くはない。

これだけのいかさま行為は、国際関係の原則に反するだけでなく、何よりもまず、一般的に認められている道徳と倫理の規範に反するものだ。
正義と真実はどこにあるのだ?あるのはうそと偽善だけだ。

ちなみに、アメリカの政治家、政治学者、ジャーナリストたち自身、ここ数年で、アメリカ国内で真の「うその帝国」ができあがっていると伝え、語っている。

これに同意しないわけにはいかない。
まさにそのとおりだ。

しかし謙遜する必要はない。
アメリカは依然として偉大な国であり、システムを作り出す大国だ。
その衛星国はすべて、おとなしく従順に言うことを聞き、どんなことにでも同調するだけではない。
それどころか行動をまねし、提示されたルールを熱狂的に受け入れてもいる。
だから、アメリカが自分のイメージどおりに形成した、いわゆる西側陣営全体が、まさに「うその帝国」であると、確信を持って言えるのには、それなりの理由があるのだ。

我が国について言えば、ソビエト連邦崩壊後、新生ロシアが先例のないほど胸襟を開き、アメリカや他の西側諸国と誠実に向き合う用意があることを示したにもかかわらず、事実上一方的に軍縮を進めるという条件のもと、彼らは我々を最後の一滴まで搾り切り、とどめを刺し、完全に壊滅させようとした。

まさに90年代、2000年代初頭がそうで、いわゆる集団的西側諸国が最も積極的に、ロシア南部の分離主義者や傭兵集団を支援していた時だ。
当時、最終的にコーカサス地方の国際テロリズムを断ち切るまでの間に、私たちはどれだけの犠牲を払い、どれだけの損失を被ったことか。
どれだけの試練を乗り越えなければならなかったか。

私たちはそれを覚えているし、決して忘れはしない。
実際のところ、つい最近まで、私たちを自分の利益のために利用しようとする試み、私たちの伝統的な価値観を破壊しようとする試み、私たちロシア国民を内側からむしばむであろう偽りの価値観や、すでに彼らが自分たち側の国々に乱暴に植え付けている志向を私たちに押しつけようとする試みが続いていた。

それは、人間の本性そのものに反するゆえ、退廃と退化に直接つながるものだ。
こんなことはありえないし、これまで誰も上手くいった試しがない。
そして今も、成功しないだろう。

色々あったものの、2021年12月、私たちは、改めて、アメリカやその同盟諸国と、ヨーロッパの安全保障の原則とNATO不拡大について合意を成立させようと試みた。
すべては無駄だった。
アメリカの立場は変わらない。
彼らは、ロシアにとって極めて重要なこの問題について私たちと合意する必要があるとは考えていない。
自国の目標を追い求め、私たちの国益を無視している。

そしてもちろん、こうした状況下では、私たちは疑問を抱くことになる。
「今後どうするべきか。何が起きるだろうか」と。

私たちは、1940年から1941年初頭にかけて、ソビエト連邦がなんとか戦争を止めようとしていたこと、少なくとも戦争が始まるのを遅らせようとしていたことを歴史的によく知っている。
そのために、文字どおりギリギリまで潜在的な侵略者を挑発しないよう努め、避けられない攻撃を撃退するための準備に必要な、最も必須で明白な行動を実行に移さない、あるいは先延ばしにした。

最後の最後で講じた措置は、すでに壊滅的なまでに時宜を逸したものだった。
その結果、1941年6月22日、宣戦布告なしに我が国を攻撃したナチス・ドイツの侵攻に、十分対応する準備ができていなかった。
敵をくい止め、その後潰すことはできたが、その代償はとてつもなく大きかった。
大祖国戦争を前に、侵略者に取り入ろうとしたことは、国民に大きな犠牲を強いる過ちであった。
最初の数か月の戦闘で、私たちは、戦略的に重要な広大な領土と数百万人の人々を失った。

私たちは同じ失敗を2度は繰り返さないし、その権利もない。

世界覇権を求める者たちは、公然と、平然と、そしてここを強調したいのだが、何の根拠もなく、私たちロシアを敵国と呼ぶ。
確かに彼らは現在、金融、科学技術、軍事において大きな力を有している。
それを私たちは知っているし、経済分野において常に私たちに対して向けられている脅威を客観的に評価している。
そしてまた、こうした厚かましい恒久的な恐喝に対抗する自国の力についても。

繰り返すが、私たちはそうしたことを、幻想を抱くことなく、極めて現実的に見ている。

軍事分野に関しては、現代のロシアは、ソビエトが崩壊し、その国力の大半を失った後の今でも、世界で最大の核保有国の1つだ。
そしてさらに、最新鋭兵器においても一定の優位性を有している。
この点で、我が国への直接攻撃は、どんな潜在的な侵略者に対しても、壊滅と悲惨な結果をもたらすであろうことに、疑いの余地はない。

また、防衛技術などのテクノロジーは急速に変化している。
この分野における主導権は、今もこれからも、目まぐるしく変わっていくだろう。

しかし、私たちの国境に隣接する地域での軍事開発を許すならば、それは何十年も先まで、もしかしたら永遠に続くことになるかもしれないし、ロシアにとって増大し続ける、絶対に受け入れられない脅威を作り出すことになるだろう。

NATOによるウクライナ領土の軍事開発は受け入れがたい

すでに今、NATOが東に拡大するにつれ、我が国にとって状況は年を追うごとにどんどん悪化し、危険になってきている。
しかも、ここ数日、NATOの指導部は、みずからの軍備のロシア国境への接近を加速させ促進する必要があると明言している。
言いかえれば、彼らは強硬化している。

起きていることをただ傍観し続けることは、私たちにはもはやできない。・・・
 

【演説全文】ウクライナ侵攻直前 プーチン大統領は何を語った? | NHKニュース

【NHK】2月24日に突然、ロシアがウクライナを侵攻。その日、侵攻直前に、ロシアの国営テレビはプーチン大統領の国民向けの演説を放送…

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