天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

蜜に溺れる

2017-01-26 20:01:16 | 
「私の胸でお泣きなさい」

絶望の海に溺れていた夜

一筋の光をくれた女神

ロープを投げてくれた恩人

胸を開き

包み込み

甘やかしてくれた

僕は

うつらうつら

たゆたう波に

ゆられていた

彼女は

柔らかな手で

僕を撫でている

僕は

まだ

この花弁の中で

この薄明の中で

彼女に守られている

何かを忘れていくような
何かを失っていくような

そんな気もするのだけれど

日々

そんな気も薄れていく

ただ

彼女に

抱かれ

目を細め

考えることをやめ

彼女の香りだけを

感じている






夜の釜の蓋が開く

2017-01-23 20:21:24 | 
闇が深い夜

そんな夜は

幼い自分が顔を出す

無力で

無垢で

常に

怯えてた

常に

伺っていた

愛されたいのに

愛されていると

感じることがなかった

幼い日々

(本当に

愛されなかったのか?

それとも

単に

甘やかされなかっただけなのか?

今となっては

わからないこと)

膝小僧を抱え

上目遣いの

陰気な子供

けれど

私は

愛されたかった

抱きしめられたかった

暖かいおうちで

美味しいものを食べて

柔らかなお布団で眠って

それでも

私は

愛されたかった

抱きしめられたかった

そんなことを

思い出す夜

自分を

我が手で抱きしめながら

そんなことを

思い出す夜




底冷えする夜の闇

2017-01-23 19:42:55 | 
雪が冷たく降る夜

足元からぞわりと
立ち上る冷気

闇が
底光りする

絶望が
せり上がる

そんな夜

冷え冷えとした空気は
青白い

冴え冴えとした夜空は
赤黒い

音は

凍ってしまったのだろうか

無音の世界

凝まった
縮こまった

よじれた夜



こじ開けてはならぬもの

2017-01-18 20:04:23 | 
緑の蔦に覆われた

秘めやかな花園

その帳は

優しくノックしなければならない

閉じられたままでも

優しくノックしなければならない

そうすれば

いつかは

和えやかに開くだろう

まばゆく

恍惚となる

花園の奥深くにたどり着く

けれど

この非情な世界では

そんな

まだるっこしいことはしない

簡単に

力でねじ曲げることをよしとする

扉は

こじ開けられ

叩き壊され

花園は

蹂躙され

無残に

散らされる

どれだけ

悲惨に

花園を踏みにじったか

声高に

喧伝することが

ステイタス

せせら笑いながら

口にする

決まり文句

「花園をきちんと隠しておかないのが
悪いのさ」





シナモンアップルケーキ

2017-01-17 19:09:00 | 
寒い冬は

オーブンを温めて

素朴なケーキを焼きましょう

茶色い地肌に

金色の林檎が散りばめられた

リングケーキ

シナモンと蜂蜜で

甘く煮た

黄金の林檎

バターをきちんと使って

焼くの

甘い香りは

天使の口づけ

柔らかい甘さは

女神の微笑み

満月だったリングケーキが

三日月になって

悪魔の体重計が

にやりと笑う

そんな冬のお楽しみ