買う事になったけど
バブルの絶頂の数年前
建売り住宅も
建つ前から売ったりした
そんな感じで
買った時には
土台だけだった気がする
どんな家になるのかな
もちろん、モデルハウスはある
ただ、大きさもかたちも違う
興味津々
建築途中に、何度か
見に行った記憶
特に、地震の後の時は
何となく、覚えている
当時は、まだK県
政令指定都市K市の辺境
そのマンションでも
かなり揺れた
しかも、震源はC県
犠牲者も出た
かなりの大地震
引っ越す一か月前だから
ほぼ完成している筈だった
壊れたりしていないかな
次の休みには
子どもも連れて行った
午後、着いて
販売事務所に寄って
だいたい出来た家を
ゆっくり見せて貰ったから
帰りは、日が暮れた後
冬至の頃だ
道を調べていて
狭い県道は止めて
湖沿いに走り
隣り街のニュータウンに抜ける
そこで、いつも寄った
大きなファミレスに寄る
門前街の老舗酒蔵が経営
それから、インターに向かう
そこからは、空港道に乗る
そんな予定にした
ただ、ニュータウンへの道は
初めての道
県道から折れると
しばらくは、まばらな住宅
やがて、干拓地が広がる
宵の頃だった
それは、本当に
真っ暗だった
たいして旅行もしないおまえ
勤め先は、首都
マンションも、実家も
田舎だけど、都会のうち
ところが、そこは
全く違う暗闇
ひたすら広大な
湖の干拓地は
人里が切れてしまった
遥か彼方迄
光一つ感じない
ただ、本当には
大して人里からは
離れていなかった
でも。干拓地だけではない
その先には
人気のない夜の湖
何処にも、光はなかった
田舎に住んでいたつもりで
そうでもなかった
そう思い知らされた
光も、人気もない
真の闇の深さ
生まれて初めて
そう思えた
人見知りなおまえ
でも、そんな風な
人の温もりの見えない
真の闇には
佇んだ事もなかった
甘いよね
漠然とした、畏怖
少しだけ
ゾッとした、遠い記憶