かなり、痛かった
婆さまは、しろを
どうしたら、救えるか
そればかり、考えていた
今、思い返すと
その日は、結論を出さず
もし、手術となれば
後日お願いする
そう話を、収めた
ただ、婆さまは
収まらなかった
どうしたら、T大農学部に
連れて行けるのか
そればかり、考えていた
まあ、それが
本当の愛情なのだろう
とは、思うよ
おまえには、真似が出来ない
おまえは、やっぱり
愛情が、足りないのだろう
しろが、可愛いと言っても
そこまでは、思えない
いや、わんこだからじゃない
ひとでも、そうだと思う
家族の死を経験して来たけど
とうさん、かあさん、にいさん
でも、おんなじだったな
ショックだのなんだの
いつも、あったけど
ショックから、冷めている
最初から、分離して
冷め続けている
そんなおまえもいた
もっと、愛さなくちゃ
そうは、思う
でも、仕方がない
そう思う冷血
しろは、クルマに乗るなり
ぐったりする子
クルマが、走り出せば
もう、戻し始める
クルマに乗せて行くしか
方法がなくて
どうやって、連れて行く❓
わんこ用の救急車❓
あんな時代に
ある訳なかったけど
クルマは、クルマ
絶対、無理
ましてや、連れて行けたとして
手遅れの可能性の方が大きい
大の苦手のクルマで
何時間も苦しませて
挙げ句、無理でしたは
それは、人間の我儘
それが、冷血の理性
理性を失っている
母親の熱情は、危うい
とにかく、諦めて貰うしかない
婆さまは、がっくりしている
でも、仕方がない
しろは、諦めるしかない…