「ねえ、しろ、綺麗だって!」「まっしろだもんね!」子どもたちも、ちょっと、恥ずかしかったのかな。母娘が、遠ざかっていくと、父親に、纏わりつきながら。二人とも、何か、誇らしそうだ。
しろは、無心に、くんくんしている。か、と思えば、前の電柱に。ぐいぐい、引っ張る。くんくん。「ぼくに、持たせて。」お兄ちゃん。リードを持たせる。「今度は、ぼくの番だぞ!」弟。お兄ちゃん、知らん顔。本当、面倒臭い。
「ほら、持たせてやれ。」「ちゃんと、持てよ!」兄。弟、嬉しそう。相変わらず、こころの中では、しろは、ぼくのいぬだと思っている。もっとも、この頃から、仲が良過ぎて、二人、いや。一人と、一匹で。よく喧嘩をするようになった。弟が、ちょっかいの出し過ぎ。しろ、うざがる。かゆい乳歯で、噛み付く。痛っ!何すんだよ!みたいな。
息子たちの通った幼稚園の正門前辺りで、母娘にすれ違った。幼稚園脇の急坂を、登って行く。幼稚園は、分譲住宅の端にあるから、もう域外に出た。まだ、初めての散歩から、ひと月も経っていない。これだけ歩いてくると、戻るとしても、2㎞を、遥かに超える。この子犬にしては、大変な距離だ。ただ、しろは、まだ子犬にしては、明らかに大きくなっていた。もう、小型犬とは、思えない。それだけ、体力もあるから、いっぱい歩き、走れる。
その頃、空手の父母会の会長さん、元の飼い主さんが、空手少年団員のお姉ちゃんと、一緒に見に来たと聞いた。妻が、「会長さん、何か、凄い大きくなるんだけど。」別に、こっちは、怒っている訳じゃない。ただ、一応、知りたい。「あら、そんな筈ないんだけど。」と言い訳したらしいが。やはり、気が咎めたのかな。確認に、来たらしい。「あらっ、こんな大っきくなっちゃったの⁉︎おかしいわね。」と、白々しく。妻に、言ったとのこと。「でも…そう言えば、一匹だけ、飛び抜けて大きかったのよねえ。」って。だからあっ、それを先に、言えよ!