そうだな、子どもの頃からだ
あんまり、何処にも
行けなかった
にいさんだけは
とうさんの親戚回りとか
遠くにも行った
おまえは、せいぜい
かあさんの実家
でも、市内だからね
とうさんは教師で
末端公務員は
昔は、薄給だった
結核のおじさんもいた
おじさんが亡くなって
ばあちゃんとかあさんが揉めて
ばあちゃんが、家を出た後
何度か、日帰り旅行はした
ただ、その頃から
とうさんは
凄く忙しくなった
文部省指定の道徳教育研究を
現場でしていた
おまえは、結局
かあさんの実家以外
親戚に泊まった事もない
とうさんの親戚も
みんな県内
日帰り出来てしまった
おまえの通った学校は
市内の工場労働者も多い
新興住宅地だから
友だちの親戚は
みんな、つづ浦々
東北に帰省して
スキーをしたとか
四国の海で泳いだとか
母子だけで
夏休みは、長々帰省もあった
地元の海と里山
それがせいぜいの
おまえとは、凄い違いだった
羨ましくて、仕方がなかった
でも、引っ込み思案
そんな、おまえだからね
なんか、そう言うひとになった
出掛ける、出掛けない
ふたつあると
そうだな、止めとくか
そうして、これまで
まだ、一生じゃないけど
止めといた気がする
