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日記、日々の想い 

ペットホテルのしろ

 しろが、多分一歳の時だったのではないかと、思う。しろを、貰ってきた頃に、次男が、入院して、扁桃腺とアデノイドの手術を、受けた。かなり、心配される中耳炎があったのだが、この手術で、根絶出来ていた。それで、久しぶりに、家族旅行となった。GWの頃だったと思う。
 行き先は、日本の屋根地域の巨大ダム、ダム湖周辺の大観光地。二泊三日。しろくんは、残念。お留守わん。と、言うことで、ペットホテルに預けるしかないか、と。当たりは、付けてあった。空港地区にいっぱいある。その中で、地域のミニコミ紙に出ていた記事に、注目した。もちろん、自分が。妻は、そんな熱心に、新聞も、折り込みも読まない。
 老夫婦の記事だった。二人暮らしだったのだが、ご主人が、体調を崩して、自宅での老々介護状態になってしまった。だから、犬を飼うのは、もう難しい。住まいは、空港のある街だから、やはり、空港の近くのペットホテルに、長期で預けることにした。預けてから、老夫婦は、定期的に、そのホテルに、会いに行っている。すると、スタッフに連れられてくる愛犬は、もちろん、忘れることなく、大喜びで、跳びついてきてくれる。しかし、スタッフにも良く懐いていて、元気だし、大事にされているのが、よく分かったと言う。まるまる信じた訳でもないが、料金なども調べると、良心的なようだ。そのホテルに、予約することにした。
 そのホテルの特徴は、空港に物凄く近い訳では無いが、里山の丘陵地帯の広大な敷地に、あることだった。犬舎も大きくて、広い。そこが、街中などのペットホテルとは違った。かなり広大なドッグランが、併設されている。周辺の山道にも、散歩に連れて行って貰えるようだが、ドッグランだけで、大型犬でも、不足ないほどだ。大型犬を飼う、海岸旅行客には、うってつけのペットホテルに、思えた。
 ただ、我が家の場合は、問題は、やはりわん本人、いや本犬にあった。我が家のある町は、空港の街に隣接していると言っても、空港は、隣街では、我が町から、一番遠い地区にある。ペットホテルは、空港のゲートよりは近いが、それでも、十数キロある。とにかく、この空港地区は、空港が造られたくらいだから、首都圏では、別世界の田舎。いくらでも、土地は、あるのだ。
 そこで、問題は、しろのクルマ酔い。何しろ、乗っけただけで、気分が悪くなる。トラウマになっているようだ。パニック。逃げ出そうとする。何とか、子どもたちが、抱いて抑えて、発車するが。その瞬間に、もう、ぐったり。たいして、走ってもいないのに、戻しそうな様子。そんな直ぐに、クルマ酔いする訳ねぇーだろうっ!と、喝っ‼︎を入れてやりたいくらいだが、わんには、人間の言葉は、分からないから、まあ、しょうがない。あの真ダニに、足指の間に食いつかれたあと、直ぐ除去して貰ったのに、十年以上も、びっこを引いて、ぷりぷりぶりっ子をして、気を引こうしたりと。この神経質と、人格の弱さ、いや、犬格の弱さは、どうよ⁉︎と、言う話なのだが。
 まあ、でも、この地域は、空港の需要のある空港周辺地域に、ペットホテルは、集中してしまっているから、他の選択肢はない。覚悟を決めて、出発する。人間様たちも、空港の入り口から、高速に乗って、一気に旅に出るから、旅支度。しろは、好きな毛布、タオル、更に追加のタオル。いざと言う時のポリ袋。大好きなジャーキーを、持たせたかどうかは、記憶にない。
 ただ、直ぐ、いざだ。あれっ、あれっ。まだ、十キロ以上走るんだぜ。まあ、長の別れの息子たちが、必死の抱っこで、介抱。しろは、もう、断続的に。あと、少しだ。ただ、この少しが大変。高速と並行して走る空港への幹線から、里山の道へ。ぐるっと、回りながら、登って行く。しろの目も、ぐるっと… 
 まあ、何とか着いた。ひろ〜いっ、ペットホテル。と言うより、広大なドッグラン。息子たちの頑張りで、しろの吐瀉物は、一応、ポリ袋に収まった。だいぶん臭うが、あとは消臭剤。汚さなかった。それだけは、息子ともども、しろにも、感謝。
 さあ、問題の長の別れ。到着すると、係のお姉さんがお出迎え。予約で、だいたいの時間も告げてあるから、スムーズに手続き。まだ、早朝だ。しかし、空港対応のペットホテルだから、朝早くても、問題ない。さあ、終わった。しろ、大好きなお姉さんに、ちょいラブラブ。何しろ、女子高生とか、大好きな危ない犬。今だ。とっと、後にする。振り返ると。しろ、きょとんっ。でも、お姉さんが、気になる。あっ、結局、お姉さんに、ついて行っちゃった。
 と言うことで、無事、初めてのしろのペットホテル。ただ、それからが、大変だったが。GW。日本の屋根にあるスキー場併設のホテル迄、九時間。ああ、うんざりなんてもんじゃない。数十キロの大渋滞が、そのまま移動して行く、恐怖。やっと着くと、しろ、大丈夫かな。息子たち。しかし、一晩眠れば、怒涛の日程。ケーブルカーとトンネルトロリーバス。巨大ダムに、まだ雪を頂く山々に囲まれた雄大な人工湖。ただ、ロープウェイは、混み過ぎていて、断念。両端に雪の壁がそそり立つ山岳道路も、首都圏方向からだから、もともと、拝めない。翌日は、帰り道、城下町に寄って、国宝天守と忙しい。たまに、息子たちが、しろどうしてるかな、と呟くが、運転手には、気にしている余裕などない。とにかく、延々。
 やっと、戻って来ました。国際空港。と言っても、飛行機に、乗り降りした訳ではないのだが。高速を下りて、空港道路から、山道へ。帰りは、意外と順調だった.行きの半分ちょいの時間。明るいうちに、着けそう。さすがに、そろそろ、しろくんの話題で、満載な車中に。あのペットホテル、大型犬が多いから、しろ、圧死してないかな。きっと、お姉さんに、浮気してるよ、とか。
 着くと、今度は、係の男性。さあ、あちらへ。案内されて、遠目に、しろ。あ〜あっ。唖然、家族一同。しろくん、一回り背の高いコリーに、見下ろされていた。そして、卑屈に、下から、ぺろぺろっ、て、情けねぇ〜っ。
 怒りに震える家族に対しては、また、ぶりぶり。ぼくちゃん、クルマダメなのって、か。と言うことで、この時に、改めて、見せつけられた、しろの情けない性格は、その後、意外と悲惨だったかも知れないしろの人生、いや犬生の伏線だったのかも知れない。
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