しろが、一、二か月のうちに
逝っちゃうのかな、と思った
いぬは、ひとより
身体も、小さいんだしね
きっと、がん細胞の
回りだって
早いはずだと、思い込んでいた
先生も、言わなかったし
自分たちも
しろの余命なんて
聞きたくもないから
そのままにしてあって
自分は、勝手に
そう思っていたんだ
でも、春に発症したしろは
ひと夏を、越したんだ
随分と、大変そうだったけど
不思議なことに
一度、不気味に
飛び出していた眼球は
元に、戻ったんだ
普通のしろの顔になった
妻も、自分も
子どもたちも
みんな、喜んだ
ちょっと、年老いてはいるけど
見慣れたしろの顔に
なってくれたんだ
ただ、歩くことは
どんどん、大変になるみたいで
もちろん、もう
ちびと、一緒の散歩は
無理になってきた
だから、自分がいる時には
少し前から
自分が、ちびと
散歩に行って
お母さんが、しろと
散歩に、行っていた
でも、もう
真夏になる頃には
自分が、いない時でも
二匹を、分けなければいけない
だから、しろはやっぱり
お母さんで
ちびは、学校から帰ってきた
お兄ちゃんが行く
でも、それでは
ちびが、やきもちをやくから
結局、お母さんは
二匹別々に、二度散歩に
出掛けるようになった
秋になる頃には
しろが、右の後軀を
かなり痛がる素振りを
するように、なってしまった
きっと、転移だろうとは
思ったけど
脳に腫瘍があるのに
今更、脚だけ手術しても
どうしようもない
動物病院には
しろは、もう
通っていなかった
クルマは、酔うから無理で
歩いて行けなくなったら
もう、行きようがないんだ
先生には
春の、狂犬病の注射も
もう良いでしょうと
言われたから
今年は、もう
打ってはいない
鑑札のないいぬに
なってしまっていた
もう、フィラリアの薬も
飲まなくて良いって
だから、先生には
通院はせずに
妻が、時々
相談をしていた
痛みが、酷くなれば
痛み止めを貰う
そう言うことで
そして、しろの
脚の痛みが、出始めて
歩き辛そうになってから
鎮痛剤を
貰うようになった
自分も、たまに
また、しろを
散歩に、連れて行くように
なっていた
もう、きっと
残りは、少ない…
to be continued