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日記、日々の想い 

しろ… タバコの吸い殻が

 ラーニングケーブルを、そのままにしておいたのは、自分の非。間違いなく。世の中は、犬好きの人ばかりじゃない。母みたいに、子どもの頃に、犬に噛まれたトラウマを抱えるなんて人は、多いだろう。吠え声だけで、怖いと言う人だって多い。特に、しろは、大型犬だ。体臭が受け付けない、とか。抜け毛が、嫌。糞尿が、汚い、とか。いくらでもある。犬は、生き物だから。
 犬の、生命の営み、そのものを受け入れられない人がたくさんいる、と言うこと。この世界は、良かろうが、悪かろうが、人間が支配していて、その人間の一人として、自分も、その社会に生きている。その人間一人一人には、人権や、自由が、保証されていて、お互いに、折り合いをつけて、守り合わなければならない。
 犬を、飼う自由。愛犬を、慈しむ人権。犬を、嫌う自由。犬を、忌避する人権。しろは、自分にとっての三番目の息子だった。妻も、同じ。息子たちには、可愛くて、時に生意気で、言うことを聞かない弟。でも、そう勝手に思っているのは、我々家族だけ。犬好きの人たちにも、我が家の単なる飼い犬だろう。ましてや、犬嫌いの人たちには、ただのうるさくて、鬱陶しくて、汚らしいケダモノに、過ぎないのだろう。
 間違いなく、あの危ない非行少年らしき不審者にとっては、そうだったのだ。それは、あの非行少年は、一方的に悪い。社会的にも、その考え方の正当性は、担保されるだろう。しかし、犬嫌いの人たちの存在も、この時点で、しっかりと自覚するべきだった。そして、しろを我が子のように愛する飼い主として、しろと人間の社会との問題無い共生の在り方を、用意してあげなければならなかった。それは、少なくとも、しろの欲望のままに、自由に、と放任することではなかった。
 自転車の不審者が、現れなくなったことは、事実だと思う。それらしき人影を、二度と見ることはなかったし、何より、前の道路沿いの他の家でも、いたずらは、止んだ。しかし、しろが、時折り吠え立てることは、止まなかった。生垣から、顔を出せてしまうのだし、前の道路を、犬の散歩や、人通りがあるのだから、仕方がなかった。それは、分かっていたが、まあ、仕方がないか、と言う程度。更に、少し、遅い時間帯に、家の裏手でも、吠えることがあった。こちらは、裏手の家の前庭。人通りが、ある訳じゃない。どうせ、野良猫だろうと、気にも、留めなかった。
 休みの日の昼間だった。確かに、その前の晩は、しろが、裏手でも吠えていた記憶はある。子どもたちは、遊びに行ってしまった。自分は、ちょっと、しろをかまってやろうと、庭に出た。ランニングケーブルで、少し、あっちこっちと、芝生を追っかけっこ。一休み。しろは、裏手の家の庭の方に、歩いて行く。ああ、そっちにも、義父の植えてくれた植木がある。
 義父は、とにかく、植木、特に、皐月が好き。K県の国際貿易港都市の郊外の自宅から、わざわざこのど田舎まで、クルマで運んでくれて、皐月の苗木をいっぱい植えてくれた。盆栽もくれたし。お陰で、庭など何の趣味のない自分の、この我が家が、それなりの庭になった。手入れは、義父の弟子の妻が、してくれる。植物の世話は、子どもの頃から、手伝っていて、お手のものだった。 
 ああ、そんなところ突っ込んで行ったら、植木が、折れちゃうよ。あ〜あっ、引っ掛かった。外しに行く。ほらっ。あれっ!しろ、顔が出ちゃうの⁉︎
 しろは、隣家との境のアルミ製の柵から、隣の家の庭に、鼻が出てしまう。まずいな、これは。この裏手の家とは、何となく、疎遠。近い年齢の子どもはいるが、二人ともウチの悪ガキとは、どう見ても接点のないおとなしい女の子たち。それと、確認出来ていないが、あの話がある。しろを、初めて庭に下ろした時の貼り紙の疑惑。された可能性を、感じていた。近所では、一番疎遠な家だったし。
 そんなことを、考えながら、ふと草花の間の地面が、目に止まった。吸い殻?吸い殻だ‼︎もちろん、タバコ。隣の家しか、考えられない。一応、手で触れないように。トングで、拾った。気持ち悪い。だいたい、火事になったら、どうするんだ!怒鳴り込んでやりたい。衝動が、ふつふつと。
 しろを、庭に引き戻して。リビングのガラス戸を開けて、妻に声を、掛ける。リビング前のコンクリートの叩きに置いたタバコの吸い殻を見せる。「あらっ!」
 自分は、まったくタバコは、吸わない。吸ったことがない。それで、営業職だし、会社では同僚との付き合いがある。だから、日頃、他人の喫煙には、咳も我慢して、受動喫煙を、耐えている.顔色に出さないように、素知らぬ顔で。それだけに、内心の嫌悪感は、凄い。咥えタバコとか、ポイ捨てとか。だから、こんな投げ入れるようなことをされて、怒りは、収まらない。場所的に、裏の家しか、あり得ない。
 「ホタル族なのよ、ご主人。」と妻。だから、それがどうした、なのだが。隣の家は、ご主人以外は、皆、女性。肩身が狭く、庭で喫煙しているのだと言う。しろが、貼り紙された時も、そうだったのか。最初は、奥さんのお父さんも、同居していた。愛想の良いお爺さんで、その頃は、我が家も、交流があった。ただ、お爺さんは、身体を悪くしていたので、あの頃から、ご主人は、喫煙は、庭だったのかも知れない。やがて、お爺さんは、亡くなったが、ご主人は、そのまま外での喫煙を、求められたのだろう。
 そこへ、隣家で、子犬が、庭に下されて、ひぃ〜っ、ひぃ〜っ。泣いて、五月蠅かった訳だ。やがて、子犬は、成犬になって、タバコの火を見ると、吠え騒ぐ。更に、何か、ランニングケーブルにしていて、吸っていると、犬が、アルミの柵に、鼻を突っ込んで、吠え立てる。
 う〜んっ… これは、やっぱり、怒れないな。ただ、日頃、交流も無くて、タバコの吸い殻を投げ入れられた。火事になったら、どうしてくれる?だがら、詫びを入れるような気持ちには、ならない。話し合わなけば、とも思ったが。生来の人見知りが、頭を擡げる。まあ、いいか。でも、これは、自分も悪い。相手の家の庭まで、しろの鼻を突っ込めたのだ。相手にも、権利がある。その権利を、知らず侵害していたのは、我が家が先で、その愛犬。そうさせたしまったのは、自分。
 直ぐに、その日、ランニングケーブルは、止めた。元の長いビニール被膜のスチールケーブルで、直接繋いだ。しろは、窮屈そう。一度、伸び伸びしてしまったからね。これは、自分が悪い。しろを、それなりに周囲と協調出来る環境で、飼ってあげる。これは、飼い主の責任。貴重な、教訓でした。
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