見出し画像

氷川きよしについて ★ by とねりこ

☆九段の母〜Kiinaの歌声を味わい尽くす♬237

アルバムカバー曲4曲めは、塩まさるさん「九段の母」です。Kiinaの歌唱はこちら

https://m.youtube.com/watch?v=OBsz1Be0d6Y

歌詞は歌ネットより。

https://www.uta-net.com/song/113862/

 

12年前にこのアルバムがリリースされて、Kiinaの「九段の母」を聴いた時、上野駅の駅頭で途方に暮れる年老いた母親の姿が目に浮かびました。そこからどういうルートで靖国神社までたどり着いたんだろうと。

上野駅に着いたのだから、このお母さんは東北地方から夜行列車に乗って来たか、あるいは北関東や信州あたりからなら始発列車に乗りこんだか。

地下鉄はもちろん無いし、山手線で神田から総武線で飯田橋?

違いますね。それは現代人の感覚で、このお母さんは歌詞の通り、道々人に尋ねながら九段坂まで歩いて行ったのでしょう。

そして、この時代の東京の人は靖国神社までの道を尋ねられることに慣れていたのでしょう。杖をつきながら行く後ろ姿をどんな思いで見送ったのでしょうか。

 

この歌のミソというか、キーポイントは「金鵄勲章」にあると思います。敗戦と同時に廃止になった、特別に戦功のあった軍人に授与される勲章でした。

その当時、金鵄勲章を貰うような兵士を出したことは、その家だけでなく村全体の名誉とされたそうです。

 

戦死した息子は、年がいってから授かった一人息子だったのでしょうか。子沢山のなかでも殊更可愛がって育てた末っ子だったのでしょうか。或いはもう妻も子どももいて、一家の大黒柱になっていたのかもしれません。

普通の農家であれば、息子が戦死したからと言ってわざわざ靖国神社まで参拝に行く余裕はありません。ひょっとしたら、「金鵄勲章を見せて来なさい」と、村長さんあたりが音頭を取って東京まで行く旅費をみんなで工面してくれたのかも知れません。

 

Kiinaの「九段の母」を聴くたびに、この年老いたお母さんの家から靖国神社にたどり着くまでの物語をあれこれと想像してしまうのでした。

 

塩まさるさんがこの曲を発表されたのは昭和14年。日中戦争のさなかです。もちろん反戦歌などであるはずがありません。制作した側には「これが軍人の母親のあるべき姿」という意図があったことでしょう。

でも、大事な大事な息子の命と引き換えに小さな勲章を貰って「果報が身にあまる」と本心から思えるでしょうか?「こんな立派なお社に祀られて、ありがたい」と本心から嬉しく思うでしょうか?

世界中のどこに、そんな母親がいるでしょう。

この曲を聴いた人は、息子を亡くした悲しみを押し殺してそう歌う(しかなかった)母親の健気さに心打たれたのではないでしょうか。

 

Kiinaはこの「九段の母」のみ、自分から「歌いたい」と申し出て収録したそうです。

「戦争を知らない僕たちは、こういう歌を歌い継いでいかなければいけない。この時代に生きていた方々の大変さを、決して忘れてはいけない」とインタビューでお話ししています。

 

二葉百合子さんを始め多くの方がカバーされています。サブスクで何人もの方の歌を聴きましたが、Kiinaほど「こう歌おう、ああ歌おう」という欲を捨て去って、このお母さんの心情そのものだけを歌声に乗せている歌手はいないと思いました。男性歌手が女性を歌っているのではなく、「九段の母」その人が、靖国神社の前で背中を丸めてお念仏を唱えている、その姿が鮮やかに浮かんでくるのです。

 

皆さんが書いていらっしゃるように、Kiinaは歌の主人公になり切ってしまうんですよね。

 

前にも書いたことがありますが、母は6人兄妹の末っ子で、わたしの伯父に当たる長兄が南方で戦死して靖国神社に祀られています。母は祖父と一緒に秋田駅まで伯父の入隊を見送りに行ったそうですが、その時「もう帰って来ないと思った」と、のちに祖父が語っていたと私に話してくれました。

何も世の母親だけが息子を戦争で亡くして泣くのではなくて、男手ひとつで子ども6人を育てた挙げ句に大事な長男を戦争に取られて、祖父だってやはり悔しく悲しかっただろうと思うのです。

コメント一覧

き〜ちゃん
「九段の母」、初めて聞きました。
戦争を知らない私、愛しい我が子を戦禍に失った母の苦しみ辛さは詩から感じる何倍もの想像を超えた辛さだったことでしょう。
とねりこさんが書いて下さった、なかにし先生が歌謡曲の歴史を代表する10曲の中にあげて下さった同期の桜、日本の歴史を辿ってみても軍国時代が厳然とあった、、、その事を忘れないためにこの曲を選んだと話されていましたね。
そして、軍歌は名曲であればあるほど罪深いとも。
この番組の中で、なかにし先生から現在の歌謡界の男性歌手の中で唯一新しい歌謡曲を歌える頂点にいる人とKiinaを評してゲストに迎えて下さったなかにし礼先生。
初めて同期の桜を知ったと言ったKiina。この歌をどんな気持ちで歌ったのかしらと、当時そんな思いをしながら聞いた同期の桜。今でもあのシーンははっきり覚えています。
藪つばき
こんばんはー、再度失礼します。
とねりこさんの、この歌に対する記事や、コメントを読んでいると、本当に戦争が憎いという気持ちがわき上がってきます。戦争をして喜んだ人は誰一人いなくて、ただ、国の命令に従わざるをえなかった、だから行っただけですよね。そして、なかにし先生が問題提起された音楽を作る人たちの戦争責任ということ、ほんとにそうですよね。子供の頃に聴いた軍歌にしろ、流行歌にしろ、戦争自体を批判するような歌はほとんどなく、戦争に行った人たちの士気を高めるような、その勇気をたたえるような、又は英雄視するような歌ばかりでしたよね。そのことは、幼いながらも戦争というものに巻き込まれた体験のあるなかにし先生にしてみれば、納得のいかないことだったに違いなかったと思います。これからの世を生きていく人たちは、そのことを肝に命じておかなければならないと私も思いました。そして、kiinaさんの言われた「この時代に生きていた方々の大変さを決して忘れてはいけない」という言葉に、その通りだなと思わされました。
チャチャチャ
とねりこさん有り難うございました。神様でしたね。神社でおねんぶつは唱えませんね。お母さんの姿が目にうかぶようです。
悲しい時代でしたね。
とねりこ
チャチャチャさん。
靖国神社は、明治の時代になってから明治天皇の御意思で維新や戊辰戦争で命を落とした人たち、その後は国を守るために亡くなった兵士や従軍看護婦など戦争で亡くなった軍事関係者を御霊(神様)として国が祀った「神社」です。
この歌のお母さんだけでなく、どの遺族も家では戦死した家族を「仏様」として仏壇で懇ろに供養していたことでしょう。
それで、「ここに我が子がいる」と思わずお念仏を唱えてしまったのです。

KiinaはBS-TBSだったか、なかにし礼先生の出演された番組で「同期の桜」を歌ったことがありましたね。
Kiinaが歌った中にあったかどうか、あの歌で「靖国の桜の下でまた逢おう」という歌詞があったかと思います。
戦友の間でも、戦地から家族に宛てた手紙でも「靖国の桜の下で」というのが合言葉のように使われていたようです。

あの番組でなかにし先生が特にKiinaを指名されたのは、音楽を作る人たちの戦争責任を問うためでした。「音楽家が戦争を賛美するため、若者を戦地に駆り立てるために名曲を作ってはいけないのだ」と、生涯訴えていらっしゃいました。
だからこそ、この歌を立派に歌える歌手でなければならなかったのです。
藪つばき
おはようございますー。昨夜は調布花火大会の模様を見させてもらい、夏の終わりに、再びあんな豪華な花火が見れて良かったです。調布といえば、水木しげるさん夫妻がずっと住まわれていた所ではなかったかなと思い、ご夫妻の以前の連続ドラマのことなども思い出しました。

今日は「九段の母」でしたね、とねりこさんの色々な想像上のことがらを思い浮かべながら、この歌を聴きました。本当にその頃の母親たちのことを思うと、辛くて涙が出てきてしまいます。
いくら遠い所でも、そこに息子が眠っているとなれば、どうしても行かねばと思う親心は、今の世に生きる私でも分かる気がします。
チャチャチャ
いつも有り難うございます。
申し訳ございません。塩まさるさんの九段の母はkiinaのこの曲で初めて聴きました。二葉百合子さんの岸壁の母は良く聴いていましたがこの曲は聴いたことがありませんでした。
3番の歌詞の中で両手合わせてひざまずき、おがむはずみのおねんぶつ、はっと気ずいてうろたえた。せがれ許せよ田舎者

とねりこさん、おねんぶつは唱えてはいけなかったのでしょうか?
それともこの歌詞の中のどれかがいけなかったのでしょうか。

Kiinaはご両親思いで、とくにお母様は神様ですもの。自分の親でなくても、自分の親だったらと自分を重ねてkiinaは受け止めたと思います。悲しい曲ですね。
せり
「九段の母」昭和14年の歌なんですね。とねりこさんの文を読みながら勲章をもらって靖国に祀られた果報者の息子と思わざる終えない世の中、そう納得せざる終えない母の姿が目に浮かびます。kiinaの歌唱が胸に沁みます。母と息子の歌といえば大好きな「かあさん日和」平和の世でほのぼのとした母子の姿にホッとします。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「日記」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事