2004年7月、この年の勝負曲「番場の忠太郎」がリリースされました。
https://columbia.jp/artist-info/hikawa/discography/COCA-15678.html
ジャケットは「ドドンパ」と同一人物とは思われませんね(笑)。まったく、変幻自在なKiinaです。
この時は「ドドンパ」ではアルバムを出さず、「忠太郎」の後に2枚組として出したんでしたね。
歌詞は歌ネットより。
https://www.uta-net.com/song/19304/
ある人物を曲のテーマにする時、それが実在の人物であれば、その人をどの視点から描くかでどのようにでも表現出来ますね。
極端な話、善人にも悪人にも出来ます。
国定忠次は、お芝居では悲劇のヒーローですが、評伝によると実像はただの残忍な乱暴者だっと言われています。
原作が存在する架空の人物なら、その原作者の描いた人物像がすべてです。
「番場の忠太郎」は、長谷川伸さんの戯曲の中の人物ですから、そこに描かれた忠太郎の人物像を動かすことは、本当は出来ません。
やっと巡り会えた実母にヤクザの姿を拒絶された忠太郎は、妹に説得されて心を変えて追いかけてきた母に
「誰が会ってやるものか」と
「こう上下の瞼を合わせ、じいっと考えてりゃあ、逢わねえ昔のおっかさんのおもかげが出てくるんだー逢いたくなったら、俺あ眼をつぶろうよ」
と背を向けます。
忠太郎もまた、(絶望の果てに)母を拒絶するのです。
Kiinaの「番場の忠太郎」は、そうではありませんね。
「もう二度とお目にゃかかりませんが いつまでも達者でいておくんなせえよ」というセリフは、誰よりもお母さま思いのKiinaにはそう言ってほしいというファンの願いを松井先生が体現してくださったのかなと思います。
母への思いを断ち切らない忠太郎です。
「番場の忠太郎」は、歌うにはとても難しい曲ですよね。
「白雲の城」ともまた違う緊張感を、歌い手にも聴き手にも求める曲だと思います。
コンサートで忠太郎になりきったKiinaを固唾を飲んで見守るのは、至福のひととき、ファン冥利に尽きるひとときでした。
私がファンになる直前の紅白歌合戦。
黒を基調にした豪華なフロックコート衣装を身にまとったKiinaが、ステージ中央に向かおうとした途端に表情が変わったのが強烈に印象に残っています。
「憑依」というものを、この目で見た瞬間でした。