【特報 追う】地域ぐるみでバレー再興
8月の北京五輪を前に、テレビでは出場権をかけたバレーボールの最終予選が連日放送されている。画面には「ニッポン」コールを送る人、人、人…。しかし、現実のバレーボール界は表面上の人気とは裏腹に年々競技人口が減少、春高バレーの優勝校や多くの名選手を輩出し、バレー人気が高いといわれる東北でも、その流れには逆らえない。どうやれば子供たちに興味を抱かせ、つなぎ止めることができるのか。各地で生まれた“バレー再興”の動きを追った。(豊吉広英)
宮城県大崎市の古川総合体育館。ここでは毎週水曜日、「大崎バレー塾」と称したバレーボール教室が行われている。
春高バレー県予選で常に上位進出を果たしている強豪校、古川工バレー部の佐々木隆義監督が同塾で指導を始めたのは昨秋のこと。「昔からバレー熱が高い大崎地区でも最近は競技人口が明らかに減少している。バレーを楽しむ環境をつくる必要があると思った」のだという。
指導者は佐々木監督のほか、今春の春高バレー準優勝校、古川学園をはじめとする大崎地域のバレー関係者、そして古川工のバレー部員だ。コートが2面ある体育館では、大きな声をあげながら高校生が激しい練習をする傍ら、数人のバレー部員が小学生にやさしくレシーブの仕方を教えている。さらには、ママさんバレーや社会人のグループも部員とともに練習する。
「ママさんバレーは一緒に来る子供も狙っている。興味を持ち始めた子供たちに、バレーの面白さを伝えていきたい」と佐々木監督。また「地域住民が部員と練習すれば、今でも真剣にバレーに取り組む高校生がいることを知ってもらえる。結果、地域社会の中でバレーへの理解が深まり、競技人口も増えていくことも期待している」とも。
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表の通り、バレー人気の低下は中学校の部活数や部員数減少からも見てとれる。
「中学バレーは負の連鎖状態にある」と指摘するのは、ある中体連関係者だ。一時期の熱烈な人気が冷め、野球やサッカー、テニスなどの人気に後れをとったバレーは、少子化からくる部活削減の対象になりやすかったのだという。「削減対象は個人競技より団体競技。人気が低下してきたバレーはやり玉に挙がりやすい。部活がなければさらにバレーの認知度が低下し人気も低くなる」
男子はその傾向が特に顕著だ。「スポーツの選択肢が多い男子は、もともと女子に比べてバレー部が少ない。バレーを指導したい熱心な教員らは女子の顧問に流れる。顧問がいなければ部は成立せず、男子のバレー部は維持しにくい」と関係者。低年齢層のバレー離れが続けば、地盤はどんどん低下する。
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一方、部活の枠を飛び越え、サッカーのようにクラブチームを結成、競技力向上の場を提供しようという動きもある。
「TEAMi」は宮城県の中学校事務職員として中学のバレーボール部の指導に当たっている板垣光則代表が平成13年に設立したクラブチームだ。「才能ある選手の、強くなりたいという気持ちに応えたい」という狙いで始まった同チームは、当初女子チームのみでスタート。セレクションを経て入団してきた選手は中学卒業後、県内外の強豪校に進学するケースも多い。
そんななか、同クラブでは今年度から男子の募集を始めた。ただ男子の場合、選手強化を前面に押し出した女子と違い「進学先にバレー部がない生徒の受け皿」という狙いもある。男子チームの我妻敬一監督は「バレー適性があっても中学に部活がなかったり、指導者がいない子供たちを受け入れられる場にしていきたい」という。
これらの動きは実を結ぶのだろうか。元全日本主将で東北福祉大バレー部コーチの佐藤伊知子さんは、「地域を巻き込んだ子供たちの指導はどんどんと行われるべきだ」と評価。クラブチームについては「現状の中学バレーはどうしても部活動が中心で、部活指導者との連携が重要。そういう意味で(危機感の強い)男子は成功しやすいのではないか」と指摘している。
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