バラの歴史は紀元前の記述にもあり、ローマ時代の壁画にも残されている。栽培は古代ペルシャ時代に始まり主に薬用・香料に利用されていたバラですが、その後観賞用へと発展を遂げ、その後様々な交配が繰り広げられ今日では4万種もの園芸品種が作り出された。
この園芸品種の改良に使われた原種バラは8〜10種類と言われています。
別表の左側上段の原種から特徴などみていこう
⑴ ロサ・フェティダは、黄色の元祖です
◉ロサ・フェティダ Rosa foetida 咲くやこの花館
黒海東岸の国・グルジアのカフカース山脈山麓の丘陵地帯を原産地とする原種のばらが「ロサ・フェティダ」(Rosa foetida)です。学名の「foetida」がラテン語で「悪臭を放つ」という意味をもつことから分かるように酸っぱい腐敗臭がします。
原種のバラとしては他にない鮮やかな黄色い花で、黄色系の現代バラを生み出す重要な親となりました。
(2)ロサ・ガリカは濃紅色のバラの祖です
◉ロサ・ガリカ Rosa gallica ピンクになっている 長居植物園バラ園
薬用・香料用にヨーロッパで古くから栽培されていたのがロサ・ガリカ(Rosa gallica) です。学名「gallica」は、古代ローマ時代に、現在のフランスを中心とした広い地域を「ガリア」と呼んだ地名に由来しています。
ガリカ系統の園芸品種には赤や桃色の花を咲かせ、華やかな香りのあるものが多くある。赤色の祖です。
(3)ロサ・ダマスケナはダマスク香と返り咲きの祖です
◉ロサ・ダマスケナ Rosa × damascena. 長居植物園バラ園
ロサ・ダマスケナ(Rosa × damascena)は、豊かなダマスク香と返り咲きの親
ギリシャ、ローマ時代から栽培され、今もなおブルガリアなどでは香料を採るため栽培されている
ロサ・ダマスケナ(Rosa×damascena)は、ロサ・ガリカとロサ・モスカータの自然交雑種と考えられています。ただし、人工的に交配したものという見方もあり、原種に含めないという考え方もあります。ロサ・ダマスケナはロサ・ガリカとともに、多くの園芸品種の重要な親になっています。
◉ロサ・ダマスケナ・ビフェラRosa × damascene var. birera 長居植物園バラ園
この写真は、ロサ・ダマスケナの中でも秋に返り咲く性質をもつ「ロサ・ダマスケナ・ビフェラ」(Rosa × damascena var.bifera)。別名:オータム・ダマスクの返り咲く性質は、ヨーロッパの他のバラにないものだったので、中国原産のバラがヨーロッパに渡る18世紀末〜19世紀初頭までとても貴重だった。オータム・ダマスクを親として、ポートランド系やブルボン系のバラが作出された。
ロサ・ダマスケナ系統のバラは通称ダマスク・ローズと呼ばれ、その豊かな香りは「ダマスク香」と呼ばれている。
(4)ロサ・モスカータは、ムスク香の祖です
◉ロサ・モスカータ Rosa moschata. 長居植物園バラ園
ロサ・モスカータ(Rosa moschata)は、ロサ・ダマスケナの親となった、ムスク香が特徴のバラ。ムスク(じゃこう)の香りがすることで、別名ムスク・ローズと呼ばれる西アジア・北アフリカ原産のバラです。
香料を採るバラとして今でも盛んに栽培されているロサ・ダマスケナの親となった、香りの強い原種バラです
(5)ロサ・キネンシスは四季咲き性と
木立性(ブッシュ)樹形の祖です
◉ロサ・キネンシス Rosa chinensis (コウシンバラ) 浜寺公園バラ園
中国原産の原種ロサ・キネンシス(庚申バラ)は、18世紀末から19世紀初めに中国からヨーロッパに渡りました。
ロサ・キネンシスは、原種バラ唯一、四季咲きの性質をもち、オールド・ローズのポートランド系、ブルボン系など様々な系統に受け継がれ、さらにそれらは現代バラ(モダンローズ)のハイブリッド・ティー系統のバラの作出に重要な親となった。
ロサ・キネンシスは元々四季咲き性をもっていた訳でなく、もとは他のバラと同じ様に一季咲き性だったものが、突然変異で四季咲き性質を獲得したと考えられている。四季咲き性質を持つバラは、枝を長く伸ばすエネルギーを繰り返し花を咲かせる為に使うので樹高も高くならず木立性(ブッシュ)樹形となる。
一季咲きのバラは殆どが枝先の長いシュラブ樹形ですが、ロサ・キネンシスの四季咲き性と同時に木立性(ブッシュ)樹形をヨーロッパにもたされた。
(6)ロサ・ギガンティアは、大輪、剣弁咲き、
ティー香の祖です
◉ロサ・ギガンティア Rosa gigantea. 浜寺公園バラ園
ロサ・ギガンティア(Rosa gigantea)は、大輪の花を咲かせる性質と剣弁咲き、さらにティー香の親です。
ヒマラヤ山脈山麓、ミャンマー北部、中国南西部を原産とし、枝がよく伸び、他のどの原種バラよりも大きな10cm近い花を咲かせる。学名の「gigantea」は、ラテン語で「巨大な」という意味です。ややクリーム色がかかる白の一重咲きのはなで、花弁が中心から左右に反り返る剣弁咲きの性質があります。香りは紅茶を思わせるティー香です。 モダンローズの代表的なハイブリッド・ティー系統の重要な親となった。
ロサ・ギガンティアにより、・大輪の花・剣弁の花弁・ティー香 がもたらされ、園芸品種の作出の重要な親となりました。
(7)ロサ・ムルティフロラは房咲きする園芸品種の祖
◉ロサ・ムルティフロラ Rosa multiflora. ノイバラ 浜寺公園バラ園
日本原産の原種ノイバラの学名でRosa multiflora ロサ・ムルティフロラ
「multiflora」はラテン語で「多花種」を意味します。性質が強健なことと、学名が示す通りこのバラの多花性が重要で、オールドローズのポリアンサ系統やそれに続くフロリバンダ系統のバラの、房咲きする園芸品種の重要な親となりました。
(8) ロサ・ルキアエは、つる性園芸品種の祖です
◉ロサ・ルキアエ Rosa luciae. テリハノイバラ 浜寺公園バラ園
日本原産の原種テリハノイバラの学名ルキアエ(Rosa luciae) 、旧ロサ・ウィクライアナ(Rosa wichuraiana) は、つる性の親です。
艶のある葉が特徴で、花径は3〜3.5cmお白い花を咲かせます。19世紀末にフランスやアメリカに紹介され、現在のつる性園芸品種の親となった。
以上
オールドローズを生み出す主な品種群です。バラの原種は世界中でおおよそ150種類あると言われています。今日のバラの祖先を遡れば行き着く相当数がこの8品種群かもしれない。
※バラの原種の基本形は花弁は5枚であるが、何故花弁数の多いバラに発展したか?
☞それは、雄蕊の数が影響している。雄しべは花弁に変化しやすい性質もある。
バラは、雄しべの数が多いため品種改良の過程で花弁が多くなっていったものである。オールドローズの中には60〜80枚とあまりにも多い花弁数になったために、雄しべも雌しべも退化して交配育種による親株になれないものも多い。