道東を発見する旅 第3の人生

異次元空間

異次元空間

新病院開院の前日までは仮オープンであった。廊下や壁には傷がつかないようにブルーの防護シートなどが貼ってあり、移動しやすいように全ての扉が開放されていた。院内は、あちこちを動き回ったので、少なくとも自分の居場所まではどう行けばいいのかしっかりと把握していたつもりだった。しかし甘かった。

本格稼働の日、火曜日の朝7時40分ごろ、新病院の南出入口から中に入ると、まったく勝手が違っていた。6か所くらいある階段の扉、長い通路の扉など、全て開いていたドアの半分くらいが閉じられて施錠されていた。

いわゆる関係者以外立ち入り禁止区域(管理区域と呼ぶ)に入るためには、ドアの横にあるセンサーにIDカードをかざして認証されないとドアが開けられなくなってしまっていた。

フルオープン初日の朝

その日の朝、7時40分、南出入り口で一緒になった病理の先生、事務員のおばさんと自分の3人は、ドアを開けて管理区域の中に入り、まったく見覚えのない空間になってしまっていたので狼狽した。ドアの外は綺麗に色分けされて分かりやすい空間だったのに、一歩中に入った途端、壁も廊下も何もかも真っ白で何も表示がないのだ。我々は、全くの異次元空間に迷い込んでしまった。

「どうしよう、ここはどこ」から始まって、「今、どこにいるんだろう」、そして「ここから出られなくなるかもしれない」、と3人でぼやきながら、通路を進んで2回、ドアを開錠して開いた。最後のドアを開いた瞬間、見覚えのある目指していたエリアにたどり着いたことがわかり、3人とも「良かった、良かった」と歓声をあげた。

夕方の退勤時

自分たちの居場所である3階から1階や2階に行くにしても、6つある階段のとれを選ぶかによって、到達する場所が全く違ってしまう。

その日の夕方、今度は3階から南出口に出るため、ある階段(F階段と書いてあった)を降りようとドアを開けた。たまたま、若い先生が4人、ワイワイ言いながらついてきた。「どこに出るのかな、南の出入り口に出るはずだ」、と言いながら1階に降りてドアを開けた。

その瞬間、自分も入れて5人とも、ここはいったいどこなんだ?と声があがる。朝と同じだ。真っ白な異次元空間に迷い込んだのだ。ひょっとしたら霊安室じゃないかという声があがった。

結局、その通路は調理関係の部署への通路だと分かった。最後のドアを開いて外に出たら、北側(南から一番遠く離れた出口)に出てしまい「エーッ、こんな所だったんや」と皆で安堵の声をあげた。

職員用エレベーター

仮オープンの時は、エレベータがあることは知っていた。しかし、自分の行動空間は1階から3階までなので、特にエレベータを利用する必要はなかった。昨日の朝、「職員は職員用のエレベータに乗って患者さん用のエレベーターに乗ってはいけない」というお達しが出た。

職員用のエレベーターがどこにあるのか知らないわけにはいかない。昨日のお昼、あわてて、それがどこにあるのか、どう行けばいいのか探し回って、ようやく、同じく真っ白な異次元空間の中に、まったく飾りっ気のない、物品エレベーターという名前のエレベーターを見つける。それが職員用であった。

午後、廊下でバッタリ顔なじみの研修医の先生と出会って話していると、「私、方向音痴なんでエレベーターがどこにあるか分からないんです」というので、親切に教えてあげた。

昨日の夕方、聞いた話では、外来のあるブロックには、1階と3階を結ぶエレベーターがはしっこのほうに2基あるそうだ。さがせば隠し扉などのアイテムが、もっとゴロゴロ見つかりそうである。

まとめ

年配の職員(非常勤?)であるお爺さんとかおばあさんとか、ホントに分からなくて心底困っているようだが、自分も含めて大半の職員は、迷路を楽しんでいる様子だ。日常から離れて3次元空間の迷宮に迷い込んだような感覚は心の底に潜んでいた子供心を湧き立たせている。

しばらくすると、魔の迷宮も、自分にとっては快適な移動経路になるだろうけど、この2,3日、新しい異次元空間をさまよっているような不思議な体験をしているのがホントに楽しい。
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