交通コンサルタントの願い

交通工学の知識と交通管制官としての勤務経験から得た知見に基づき、交通問題を解説する。

大渋滞は起こりうる 3

2024-10-02 10:15:01 | 記事

エスコンフィールド北海道周辺における大渋滞発生の懸念 で述べたように、様々な要因が重なったとき大渋滞は起こる。

では、どのようなことが渋滞悪化を助長し、大渋滞を引き起こす要因となるのか。
要因として、大きく5つ挙げられる。

1つ目は、「イベントが開催される日時と当日の天気」。
2つ目は、「イベント主催者による駐車場の開放・駐車券の販売」である。

そして、3つ目は、「イベント会場周辺の駐車場」である。
ここでいう駐車場とは、月極駐車場をはじめとする長期又は定期的な利用の契約をした人向けの駐車場を除く、
時間単位又は1日単位で誰もが利用可能なコインパーキングのような駐車場のことである。

イベントに来場予定の人の中には、イベント主催者による駐車場の開放にかかわらず、
イベント会場周辺の駐車場に駐車する前提で、自動車で会場に向かおうと考える人がいる。
そのため、会場周辺にコインパーキング等の駐車場が多く、駐車できる台数が多いほど、そこへの駐車を想定して自動車で来場する人も多くなり、
会場周辺の道路での交通量の増加や渋滞の発生、悪化につながるおそれがある。

また、それらの駐車場が事前予約制か否かで、交通状況に与える影響は大きく変わってくる。

会場周辺の駐車場が事前予約制の場合、イベント当日は、事前に予約した人が駐車場に向かうことになる。
しかし、コインパーキング等の駐車場は、事前予約制ではなく、到着時に空きがあれば駐車できる仕組みのものも多い。
その場合、駐車可能台数を上回る台数の車両が、イベント当日、駐車場に殺到するという状況が生じうる。

目当ての駐車場が到着時には既に満車だったとき、その車両は、空いている他の駐車場を探すため、
周辺をゆっくりと走行する「うろつき交通」となる。
この「うろつき交通」は、渋滞を発生させたり、悪化させたりする要因となるのだ。

そして、コインパーキング等の駐車場だけでなく、数千台収容可能な駐車場を有する商業施設が会場周辺にある場合も、注意が必要である。

郊外の商業施設は、駐車場が無料であったり、商業業施設で買い物や食事をすると
駐車料金が割引されて無料または低価格となったりすることが多い。
そういった商業施設がイベント会場周辺にあると、そこに駐車して会場に向かおうと考える人が出てくる。

商業施設が、「イベント来場者の駐車場利用禁止」といった掲示をするなどの対策を講じても、
数千台規模の駐車場を有し、商業施設で買い物や食事をしてからイベント会場に向かう人も多い中で、
イベント来場者の駐車場利用を完全に防ぐことは容易ではない。

発見し次第、罰金を科すといった対策を講じて抑止力を高めている場合もあるが、
厳格に対処するには、商業施設が多くの労力・コストを割かなければならず、
十分に対処できていないケースも少なくない。

商業施設の駐車場は基本的に事前予約制ではないため、イベント当日、どれくらいの車両が駐車場を利用予定であるかを
事前に把握することはできない。
数千台収容可能な駐車場であれば、イベント開始時刻に合わせて、数百台、場合によっては1,000台を超える車両が殺到するという状況も生じうる。
短時間に車両が殺到した場合、会場周辺の道路では交通量が大幅に増加し、想定外のひどい渋滞が発生しかねないのだ。

このように、イベント会場周辺の駐車場は、渋滞に影響を及ぼす要因の1つである。

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大渋滞は起こりうる 2

2024-03-26 17:27:02 | 記事

エスコンフィールド北海道周辺における大渋滞発生の懸念 で述べたように、様々な要因が重なったとき大渋滞は起こる。

では、どのようなことが渋滞悪化を助長し、大渋滞を引き起こす要因となるのか。
要因として、大きく5つ挙げられる。

1つ目は、「イベントが開催される日時と当日の天気」である。

そして、2つ目は、「イベント主催者による駐車場の開放・駐車券の販売」である。

東京ドームのように、公共交通機関でアクセスしやすい会場でのイベントの場合、
主催者が一般来場者用として駐車場を開放することはほとんどない。
一方、公共交通機関でのアクセスが困難な会場でのイベントの場合、
主催者が一般来場者用として駐車場を開放することとし、駐車券を販売することがある。

例えば、主催者が4,000枚の駐車券を販売し、完売したとすると、
イベント当日は、駐車場に向かう車両4,000台がイベント会場周辺の道路を走行することになる。
そのため、会場周辺の道路では、通常より交通量が増加し、渋滞は悪化する傾向となる。
実際にはイベントの運営に携わる関係者の車両も加わるため、イベントに関連する車両は4,000台以上となるであろう。

なお、駐車券の販売枚数が多いほど、会場周辺の交通量は通常より増加し、渋滞は悪化しやすくなる。
つまり、駐車券の販売枚数が渋滞悪化の程度に影響を及ぼすということである。

また、同じ販売枚数でも駐車券の販売方法によって、交通状況に与える影響は大きく変わってくる。

事前予約制で駐車券の販売を行う場合、イベント当日は、事前に駐車券を購入した人が駐車場に向かうことになる。
一方、イベント当日、現地で駐車券の販売を行う場合、例えば、当日販売する駐車券100枚に対して、1,000台の車両が殺到するという状況が生じかねない。
つまり、主催者の想定をはるかに上回る台数の車両が、イベント会場に殺到するおそれがあるのである。

殺到した車両が駐車場に入りきれず、会場周辺の道路上にあふれたり、
車両殺到による混乱から、駐車券購入済みの人の車両を円滑に駐車場に入庫させられなかったりすると、大渋滞を引き起こしかねないのだ。

このように、イベント主催者による一般来場者のための駐車場の開放、そして、駐車券の販売は、渋滞に影響を及ぼす要因の1つである。

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大渋滞は起こりうる 1

2023-09-04 15:13:53 | 記事

エスコンフィールド北海道周辺における大渋滞発生の懸念 で述べたように、様々な要因が重なったとき大渋滞は起こる。

そもそも、なぜ渋滞は発生するのか。
少し乱暴だが、端的に言うと、走行する車両が多すぎるから。
もう少し正確に言うと、ある道路区間を通過しようとする車両の台数が、通過できる車両の台数を上回るからである。
つまり、
通過しようとする車両の台数 > 通過できる車両の台数
という状況で渋滞は発生する。

イベントが開催されるとき、通勤や業務といった日常的な活動に関連する一般交通に、イベントの関係者や観客等によるイベントに関連する交通が加わる。
そのため、イベント開催時は、通常より交通量が増加し、渋滞が悪化する傾向にある。
その際、いくつかの要因が重なると、道路交通網が麻痺してしまうほどの大渋滞となる。

では、どのようなことが渋滞悪化を助長し、大渋滞を引き起こす要因となるのか。
要因として、大きく5つ挙げられる。

1つ目は、「イベントが開催される日時と当日の天気」である。

交通量は、時間、曜日、季節によって変動する。
平日だと、朝の通勤時間帯と夕方の帰宅時間帯の交通量が多く、1日の中でも渋滞が多く発生することは、広く知られている。

例えば、イベントが平日19時に開始されるとき、夕方の帰宅時間帯とイベント来場者の移動のピーク時間帯が重なる。
通常でも交通量が多く渋滞しているところに、イベントに関連する交通が加わることになるため、渋滞は悪化する。
なお、イベント来場者の自動車利用が多いほど、渋滞悪化の程度も大きくなる。

一方、極端な例だが、もしイベントの開始時刻が深夜だったら、交通量の少ないところにイベントに関連する交通が加わることになる。
通常の交通量が少ない分、平日19時開始のときほど渋滞しないことは想像いただけるであろう。

同じイベントでもいつ開催するかで、交通状況に与える影響は大きく変わってくる。
開催日時によっては、ひどい渋滞を引き起こす要因となるのだ。

また、天気も交通状況に影響を及ぼす。

雨の日は、晴れの日より渋滞しやすい。
日常的に運転している人の多くは、経験則としてこのことを知っているのではないか。
これは、雨が降ると、視界の悪化や路面状態の変化を受けて晴れの日より車両の走行速度が低下することや
晴れの日は自動車を利用しない人が移動手段を自動車に変更することにより交通量が増加すること等に起因する。

天気はコントロールしがたいが、イベント当日に雨が降った場合、晴れたときより渋滞は悪化しやすくなる。

このように、イベントが開催される日時と当日の天気は、渋滞に影響を及ぼす要因の1つである。

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伝えることの大切さ

2023-06-02 13:59:10 | 記事

昨年度、2つの大学で講義を行った。
イベント開催時の交通対策について、交通管制官として私が従事した事例を交えて話をした。

講義を行うに当たり、受講する学生さんたちには、講義を通して、大学で学ぶ交通工学の知識が実務でどのように用いられるのかを知ってほしいという思いと、
日々の生活で交通行動をとる一人として、イベント開催時の交通対策がどのように検討、実施されているのかを知ってほしいとの思いがあった。
そこで、少しでも興味を持ちやすく、具体的にイメージしやすくなるよう、4年前、日本で開催され、大きな盛り上がりを見せた大規模スポーツイベントを例に用いた。

講義後に提出されたレポートを読んだところ、予想以上に多くの学生さんが強い関心を持ってくれたことがわかった。

「交通分野の仕事に興味が湧いた」、
「自動車は個人の意思によって走行ルート等が決まるため、その予測や対策が容易ではないことを改めて実感した」といった感想。
「これまで何度もスポーツ観戦に行ったことがあるが、裏でこのような対策が行われているとは知らなかった」、
「交通対策の力になれるよう、今後、身近でイベントがある際は協力したい」など、様々な感想が述べられていた。

たくさんの質問や感想に触れ、刺激を受けるとともに、伝える大切さを実感した。
そして、交通対策の検討から実施まで従事した経験がある私だからこそ、伝えられることがあると実感した。

このような思いから、このブログを始めることにした。

講義でも触れたが、安全で円滑な交通の実現には、一人一人の協力が必要不可欠である。
どれだけ警察等が交通対策を実施しても、それぞれが自分のことだけを考えた行動をとれば、大渋滞や交通事故は起こるのである。
そのことを広く知ってもらい、交通事故や交通渋滞が少しでも減少することを願って。

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エスコンフィールド北海道周辺における大渋滞発生の懸念

2023-04-18 14:51:10 | 記事

3月30日、プロ野球日本ハムファイターズの新球場、エスコンフィールド北海道が開業した。
球場内にホテルや温泉があるなど、これまでの球場とは異なる新しい形の球場ということで注目を集め、ニュースや情報番組で多く取り上げられた。

球場の最大収容人数は3万5千人。
最寄りの駅から徒歩約20分の場所ということもあり、最寄り駅を含む複数の地点から球場までシャトルバスが運行されている。
4,000台の駐車場は、試合開催日は事前予約制とされ、車での来場も可能となっている。

これらの情報を耳にし、「いつか周辺で大渋滞が発生するのではないか」との懸念が私の脳裏に浮かんだ。

そして、ある出来事を思い出していた。
2018年11月、大分で開催されたサッカー日本代表とベネズエラ代表の試合のことである。
試合開始前、会場周辺で大渋滞が発生し、両チームの選手バスは予定より約1時間遅れで会場に到着した。
3万6千枚の観戦チケットが完売していたにもかかわらず、キックオフの19時半時点での観客席は空席が目立ち、試合終了まで会場に駆け込んでくる観客が見られた。

会場直近の交差点を起点として5km以上の渋滞が4時間以上続き、そのうち1時間半は10.4km渋滞していた。
会場周辺を含む大分市内中心部では、合計20km以上の渋滞が2時間半にわたって続き、大分市内中心部の交通網はほぼ麻痺した。

この大渋滞は、試合関係者や観客だけでなく、当然、住民にも大きな影響を及ぼした。
仕事を終え、帰宅のためにバスを利用した乗客は、通常30分ほどかかるところが2時間以上要したと話していた。

様々な要因が重なったとき、このような大渋滞は起こるのである。

エスコンフィールド北海道とこの大分のスタジアムは、立地などに類似する点がある。
そのため、私は、エスコンフィールド北海道周辺で、住民にも大きな影響を及ぼす同じような大渋滞が発生するのではないかと懸念している。

同じような事態が起こらないことを願って、次回以降の記事で大渋滞を引き起こす要因について解説する。

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