わくさき日記

千葉県習志野市の司法書士事務所の日常です。

自筆証書遺言のメリット・デメリット

2022-02-02 00:00:00 | 司法書士
自筆証書遺言のメリットはなんと言っても手軽さです。
紙とボールペンと印鑑さえあればいつでもどこでも作成することができます。
もちろん、費用もかかりません。
強いて言えば、紙代、ボールペン代、印鑑がない方は印鑑代です。

自筆証書遺言とは、自分で作成する遺言のことです。
要件は法律で決まっていますが、次のとおりです。

1.全文を自筆で書く
2.日付けを書く
3.氏名を書く
4.印を押す

これだけです。
なお、「1の全文を自筆で書く」という要件は、近時の法改正により少し緩和されています。
具体的には、財産目録に関してはパソコンで作ったりしてもよいことになりました。
その場合、印刷した書面の余白に、署名・押印をしてください。

例えば奥様に財産全部を相続させたいと思ったら次のような内容になります。

遺言書
遺言者○○は、遺言者の財産すべての妻○○(昭和○年○月○日生)にすべて相続させる。
遺言執行者は妻○○を指定する。
令和○年○月○日
住所○○
氏名○○印


自筆証書すぐにすぐに作成できるため、次のような場面でも活用できます。
・公正証書遺言を作成するまでの間の念のための遺言として
→公正証書遺言を作成しようと思っても、予約日まで日にちがあることが多いです。
それまでに万一のことがあっても大丈夫なように、最低限の内容で念のための自筆証書遺言を作成しておくとよいでしょう。

・病状等が悪化している。
→緊急的に作成するもの
緊急時に作成する遺言としては危急時遺言がありますが、そこまでではなくても
遺言の全文が自署できるのであれば、病室等でも作成することができます。


次に自筆証書遺言のデメリットですが、デメリットというより
使い勝手の悪さといえるかもしれません。

それは、遺言者が亡くなった後に家庭裁判所での手続が必要であるという点です。
この手続を検認(けんにん)といいます。

検認は、家庭裁判所で裁判官の立会のもと、遺言書の中身を確認する手続です。
家庭裁判所に遺言書を持参すればすぐに行ってくれるものではなく、申請をしてから
1.5~2ヶ月後位に検認をしてもらうことができます。

この検認の手続を行わない限り、不動産名義変更も預貯金の手続もできません。
相続後、早く手続をしたいときなどは、やきもきする時間かと思います。

なお検認については、家庭裁判所から相続人全員に検認のお知らせがされます。

ただし、近時の法改正で自筆証書遺言でも検認が不要となる「自筆証書遺言保管制度」という制度ができました。
これは法務局で手続を行うことにより、相続開始後の検認が不要となるものです。

デメリットの2つめは、内容が無効となる可能性がある点です。
自筆証書遺言の要件は冒頭で記載した通りですが、そもそもその要件を満たしていなければ
適法な遺言としてみとめられず、各種の手続ができない恐れがあります。
また、形式的な要件は満たしていても、内容が不適切な場合もあり得ます。

そのほかには、見つけてもらえない、敵対的な相続人に破棄・隠匿されてしまう可能性があるなどです。

せっかく遺言を作成したのにもかかわらず、内容が無効だったとしたら
相続人も複雑な気持ちになってしまうでしょう。

そうならないためにも、法律の専門家である公証人が作成する公正証書遺言であったり、
自筆証書遺言であっても弁護士・司法書士・行政書士等の専門家のアドバイスを受けながら作成されることをお勧めします。