わくさき日記

千葉県習志野市の司法書士事務所の日常です。

休眠担保権とは何ですか?②

2022-02-04 00:00:00 | 司法書士
前回の続きで、まずは、休眠担保は残っていたら問題なのか問題について。
答えは、問題ありです。

一番問題になるのが、休眠担保がついた不動産を売却するときです。
休眠担保とは言っても、抵当権です。
抵当権とは、もしかしたら債権者が競売を申し立てるかもしれない権利です。
そのような抵当権がついている不動産を買う人は、少なくとも一般の人はいません。
もう使用済みの抵当権です。大丈夫です。といったところで、だったら、抹消してから売ってください
と言われてしまします。
したがって、少なくとも売却の際は問題となり、抹消しなければなりません。

では、抹消してしまえばいいのではないか問題に移りますが、
その答えは、抹消しなければならないが、手続き的にそれがなかなか難しい、です。

抵当権の抹消登記手続きは、「不動産の所有者」と「債権者」が一緒に手続きをする必要があります。
簡単に言えば、申請書類に「不動産の所有者」と「債権者」のハンコが必要になります。

例えば、住宅ローンを完済した際に抵当権を抹消する場合は、マイホームの所有者と銀行ということなります。
そして、休眠担保も抵当権ということには違いはないので、同じように手続きをする必要があります。

ここで、田舎のおじいちゃんが先祖代々住んでいる実家をイメージしてください。
先祖代々、長男が守ってきた土地・家屋です。
一応登記はされていますが、これまでは当然に長男が継ぐものとされていましたから、相続登記(名義変更登記)などはされていません。
しかし、時代の波として、土地・家屋の売却話が持ち上がりました。
そこで、改めて登記簿を確認してみると・・

不動産の所有者 大正時代のご先祖様
抵当権者    まったく知らない〇山権兵衛という個人名

所有名義は、先々代くらいのおじいちゃんかと思いますが、そのほかに債権額10円でまったく知らない〇山権兵衛という債権者の
抵当権が設定されていました。

そして、不動産業者から、不動産の所有名義を現在の所有者さんに変更してもらうのと同時に、抵当権も抹消してくださいと
いわれました。

これが休眠担保の典型的なイメージです。

抵当権の抹消には「所有者」と「債権者」のハンコが必要になります。
当然、亡くなった方はハンコが押せませんので、ハンコが押せるように、登記名義を相続人に変更しなければなりません。
ここがとても難しい場合が多いのです。

所有者についても、簡単とは言えませんが、それでも身内ですから何とかできそうです。

一方、債権者(抵当権者)は、まったく心当たりがありません。
昔(戦前)は、個人からの借金も普通にあったようですが、この債権者も亡くなっていますので、ハンコをもらうためには
この債権者の相続人も探さなければなりません。

これが、休眠担保(権)の概要です。
かなりかみ砕いた書き方をしましたので、正確なところは、別途お問い合わせ等していただければと思います。

休眠担保を見つけたら、専門家にご相談されることをお勧めします。

休眠担保権とは何ですか?①

2022-02-03 00:00:00 | 司法書士
休眠担保もしくは休眠担保権という言葉を聞いたことがありますか?
もしかしたら、休眠担保のことを調べていてこのブログにたどり着いた方もいるかもしれません。

休眠担保とは、法律等で定義されているものではなく、登記業界(?)で使用されている業界用語みたいなものです。

休眠   → 長い間使われていない
担保(権)→ 抵当権

長い間使われていない抵当権=休眠担保です。

そういわれてもわかったような、わからないようなですね。

この休眠担保は、抵当権の抹消登記の問題と密接に関係しているのですが、
そもそも抵当権とは、お金を借りた際に債権者に土地建物を担保として差し入れるものです。
債権者に土地建物を差し入れるといっても、債権者も土地建物を使いたいわけではないので
土地建物の登記に抵当権の登記をすることによって担保に取ります。

これによって、もし万一返済が滞ったら、裁判所に申し立てることによって土地建物を
競売することができ、その売却代金から貸金を回収することができるようになります。

これが抵当権の制度ですが、上記のとおりお金を借りた際の担保なので、
当然借りたお金を返せば担保の役割が終わります。
すなわち、完済した時点で抵当権はなくなってしまうはずです。

おそらく多くの方の感覚でも、借りたものを返したんだから、抵当権はもうおしまいと
思われるのではないでしょうか。

確かにその通りなのですが、登記の記載はそのようになりません。

役割が終わった抵当権とは言えども、自動的には登記簿から抹消されないのです。
ここ感覚のずれが、休眠担保を生み出しています。
すなわち、本来、抹消すべき抵当権の登記が忘れさられてずっと残ってしまっている、
それが休眠担保(権)です。

つまり、休眠担保権という権利があるわけではなく、使用済みの忘れ去られた抵当権というのが
その正体です。

なるほど、では抹消してしまえばいいのではないか?と思われますね、普通は。
というか、使用済みの抵当権が残っていたとして、何か問題でもあるの?とも思いますね。

一体、実務はどうなのでしょうか。
答えは次回をお楽しみにしてください。

自筆証書遺言のメリット・デメリット

2022-02-02 00:00:00 | 司法書士
自筆証書遺言のメリットはなんと言っても手軽さです。
紙とボールペンと印鑑さえあればいつでもどこでも作成することができます。
もちろん、費用もかかりません。
強いて言えば、紙代、ボールペン代、印鑑がない方は印鑑代です。

自筆証書遺言とは、自分で作成する遺言のことです。
要件は法律で決まっていますが、次のとおりです。

1.全文を自筆で書く
2.日付けを書く
3.氏名を書く
4.印を押す

これだけです。
なお、「1の全文を自筆で書く」という要件は、近時の法改正により少し緩和されています。
具体的には、財産目録に関してはパソコンで作ったりしてもよいことになりました。
その場合、印刷した書面の余白に、署名・押印をしてください。

例えば奥様に財産全部を相続させたいと思ったら次のような内容になります。

遺言書
遺言者○○は、遺言者の財産すべての妻○○(昭和○年○月○日生)にすべて相続させる。
遺言執行者は妻○○を指定する。
令和○年○月○日
住所○○
氏名○○印


自筆証書すぐにすぐに作成できるため、次のような場面でも活用できます。
・公正証書遺言を作成するまでの間の念のための遺言として
→公正証書遺言を作成しようと思っても、予約日まで日にちがあることが多いです。
それまでに万一のことがあっても大丈夫なように、最低限の内容で念のための自筆証書遺言を作成しておくとよいでしょう。

・病状等が悪化している。
→緊急的に作成するもの
緊急時に作成する遺言としては危急時遺言がありますが、そこまでではなくても
遺言の全文が自署できるのであれば、病室等でも作成することができます。


次に自筆証書遺言のデメリットですが、デメリットというより
使い勝手の悪さといえるかもしれません。

それは、遺言者が亡くなった後に家庭裁判所での手続が必要であるという点です。
この手続を検認(けんにん)といいます。

検認は、家庭裁判所で裁判官の立会のもと、遺言書の中身を確認する手続です。
家庭裁判所に遺言書を持参すればすぐに行ってくれるものではなく、申請をしてから
1.5~2ヶ月後位に検認をしてもらうことができます。

この検認の手続を行わない限り、不動産名義変更も預貯金の手続もできません。
相続後、早く手続をしたいときなどは、やきもきする時間かと思います。

なお検認については、家庭裁判所から相続人全員に検認のお知らせがされます。

ただし、近時の法改正で自筆証書遺言でも検認が不要となる「自筆証書遺言保管制度」という制度ができました。
これは法務局で手続を行うことにより、相続開始後の検認が不要となるものです。

デメリットの2つめは、内容が無効となる可能性がある点です。
自筆証書遺言の要件は冒頭で記載した通りですが、そもそもその要件を満たしていなければ
適法な遺言としてみとめられず、各種の手続ができない恐れがあります。
また、形式的な要件は満たしていても、内容が不適切な場合もあり得ます。

そのほかには、見つけてもらえない、敵対的な相続人に破棄・隠匿されてしまう可能性があるなどです。

せっかく遺言を作成したのにもかかわらず、内容が無効だったとしたら
相続人も複雑な気持ちになってしまうでしょう。

そうならないためにも、法律の専門家である公証人が作成する公正証書遺言であったり、
自筆証書遺言であっても弁護士・司法書士・行政書士等の専門家のアドバイスを受けながら作成されることをお勧めします。