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10日夜出火したソウル市の「南大門」(崇礼門)は、木造二層構造の楼閣のうち、一階部分のごく一部を残して全焼、崩壊した。韓国社会は600年の歴史を持つ国宝第1号の焼失に強い衝撃を受けている。
出火したのは10日午後9時前。消防車約40台などが出動した。一時は鎮火したかに見えたが、二階内部に残った火種が再び広がり、11日未明には崩落が始まった。朝鮮王朝時代の複雑な木造建築で、放水が内部になかなか届かず、初期消火に失敗。途中から瓦や柱の解体も試みたが、間に合わなかった。
文化財庁から「文化財を痛めないように、慎重に消火してほしい」という要請があったため、積極的な鎮火作業に踏み切れなかったと消防関係者の発言している。
一方、韓国テレビ各社は未明まで、火災の模様を生中継で放送し「我々の自尊心が失われた」「どうして火災を防げなかったのか」などと嘆く現場の市民の声を伝えた。大手紙も、国宝1号も守れない韓国」(中央日報)などと大々的に報じた。
韓国警察当局は11日午前、全焼したソウル市の「南大門」(崇礼門)について、放火と漏電などによる失火の両面から捜査していることを明らかにした。
出火当時の目撃者が3人いるものの、供述内容に食い違いが出ている。南大門に登っていく不審な男性を見たという目撃証言を伝えているが、周辺に設置された監視カメラ(CCTV)からは確認されていない。通常、南大門公園管理事務所の職員が午前10時から午後8時まで周辺に勤務しているが、出火当時は退勤した後だった。
韓国政府は、06年に調査した図面を基に、焼失を免れた木材を使って南大門を復元する方針を決めた。復元には少なくとも2年以上の期間が必要で、200億ウォン(約22億7000万円)程度の費用がかかる。
李明博次期大統領は11日午前、火災現場を訪れた。関係者の説明を受けると、「象徴的な場所だけに、国民の心が痛むだろう」と語った。
朝鮮王朝時代の1398年に完成した南大門は、ソウルに現存する最古の木造建造物。国宝第1号に指定されており、日本人観光客も多く訪れる。2006年春から門の下の通路が一般市民に開放されたが、楼閣部分への立ち入りは禁止されている。
(記事)
南大門、全焼崩壊 韓国社会に強い衝撃
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