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政府は、裁判の判決で懲役刑などの執行を猶予する条件として、公園の清掃や落書きの消去などを無報酬で行うことを命じる「社会奉仕命令」を導入する方針を固めた。
確かに実刑と執行猶予では大きな差がある。「社会奉仕命令」のような中間的な処遇が必要いう考えにも一理あるだろう。
イギリスやフランスなどでは社会奉仕命令を懲役刑、罰金刑などと並列する独立した刑としても導入しており、受刑者に道路や公園の清掃、落書きの消去などを行わせている。
何やら裁判所が突然リベラルになったようだが、事情は全く別のところにあった。
刑務所が過剰収容状態で、もうどうしようもないのである。
で、執行猶予を増やして何とか凌ごうということなのだが、本来懲役刑にするべきところを、猶予刑で許してやるのだから、簡単に「どうぞ」というわけにもいかない。
裁判所が考えているのは、「道交法違反や業務上過失傷害などによる短期の懲役・禁固刑」のようである。「裁判官は社会奉仕命令の作業時間の上限や下限を宣告し、受刑者が作業を行わなかった場合は刑務所に収容するなどの罰を科す」としている。
「道交法違反」というと、暴走族などにメリットがありそうだ。暴走族などはスプレーで落書きもよくしているので、自分で書いた落書きを自分で消して、違反分をチャラにする、なんとことにもなりかねない。
トラック運転手などの過失致死の場合、遺族の怨恨は深い。その場合は執行猶予にはならないだろうが、過失傷害なら執行猶予になってしまう。日本人は温厚な民族なのだが、敵討ち志向は根強い。被害者が加害者の罪を「社会奉仕」で許す気になるとも思えない。
さらに、注意が必要なのは、誰が監視するかである。責任感の強い人が偶然過失を犯してしまった場合などはまじめにやってくれるだろうが、どちらかというと犯罪志向癖のある連中が多いだろうから、監視人がいないとまともに「社会奉仕」しないと考えるべきだろう。
行政の発想だと、監視人は刑務官が担当することはせず、外部委託になる可能性が高い。
その場合、天下り特殊法人が新たにできてしまうだろう。駐車違反摘発の実例もある。
「最初から、これが目的なのでは…」と勘ぐりたくもなる。
凶悪犯罪は累犯者による場合が多いので、この法令が実行されれば凶悪な犯罪が増加する可能性も考えられる。
できることなら、刑務所を増設して対応してもらいたいものである。
年金のために消費税値上げは断固反対だが、刑務所増設のためなら7%くらいなら認めてやるよ。
(記事)
清掃や落書き消去、判決に「社会奉仕」導入…政府方針
コインには表と裏があるように、物事は多面的に見ないと、えらいことになる。Just wait and see! というところでしょう。ではまた。