200806イスラエルで「シオニズム運動」の根拠を否定する著書がベストセラー

イスラエルで「建国根拠なし」本、ベストセラーに

建国から今月６０年を迎えたイスラエルで、建国の原動力である「シオニズム運動」の　根拠を否定する著書がベストセラーとなっている。題名は「ユダヤ人はいつ、どうやって発明されたか」。

シオニズム運動は、古代に世界各地へ離散したユダヤ人の子孫が「祖先の地」に帰還するというもの。著者はユダヤ人でテルアビブ大学のシュロモ・サンド教授（６１）＝歴史学。３月にヘブライ語で出版され、アラビア語やロシア語、英語に訳される予定だ。
著書では、今のユダヤ人の祖先は別の地域でユダヤ教に改宗した人々であり、古代ユダヤ人の子孫は実はパレスチナ人だ――との説が記されている。

現在のイスラエル人がロシア系であることは誰でも知っている事実である。今更驚くほどのことではない。イスラエル人自体別にこのことを隠し立てしていたわけではない。

サンド教授は「ユダヤ人は民族や人種ではなく、宗教だけが共通点」と指摘。
第２次世界大戦中に約６００万のユダヤ人を虐殺したナチス・ドイツが、ユダヤ人は民族や人種との誤解を広めたとする。

これも正しそうな解釈だ。しかし、ナチスがユダヤ教という宗教を弾圧したわけではない。虐殺の対象はユダヤ人であり、そしてユダヤ人の人種を特定するのは困難なのである。
シュロモ・サンド教授が言うように、古代ユダヤ人に限定して言えばパレスチナ人に近いだろうことは推定される。
しかし、古代においてすら、人種的特定性を見極めるのは困難である。
実際にバビロン捕囚やエジプト脱出などがあったかも定かではない。

そのため、イスラエル政府が標榜する「ユダヤ人国家」には根拠がないと批判。「パレスチナ人を含むすべての市民に平等な権利を与える民主国家を目指すべきだ」というのが著者の最大の主張だ。

何となく、政府肝いりの宥和政策のような気もする。


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