「春夏秋冬そして春」DVDにて

韓国映画『春夏秋冬そして春』をDVDで観ました。

監督は韓国の異端児「キム・ギドク」


春・・・・・・・・・何も知らないがゆえに純粋であり、残酷でもある幼き時代。自分が行った行動の罪の深さを初めて知ることになる。
夏・・・・・・・・・美しい同年代の女性との出逢い、初めて感じる想いこそが初恋だった。
秋・・・・・・・・・愛し続けた妻に裏切られ、激情に駆られ殺めてしまう。育った寺で自らの命を絶とうとする。
冬・・・・・・・・・罪を償い寺に戻る男。心身ともに鍛え上げようとする男の前に一人の女性が現れる。
そして春・・・めぐりめぐるのは季節であり人生だった・・・


この作品ほど静謐という言葉が似合う作品は観たことがありません。

ファーストカットで思ったことはこの作品は是非とも劇場で観たかった、という思いでした。
山水画と見まごうばかりの美しい山と湖、移ろいゆく四季の美しさと、あたかもその場にいるかと勘違いさせるような木々のさざめき、流れる水の音などの自然を見事に作品の中に閉じ込めています。

私は「キム・ギドク」監督ほど映像の力を使いこなしている監督はいないと思っています。極端なまでに抑えられたBGMと登場人物たちの台詞。それゆえに一つ一つの音の重みが違います。

「キム・ギドク」監督は人として生きていくうえにおいて必ず犯してしまう罪をあえて真正面から描いてきた監督だと思います。それゆえ異端児扱いされてきたのだと思いますが、本作では癒しという目線が追加されたのかもしれません。業という考え方が西洋にもあるのかは不勉強な為分かりませんが、人としての業をこの作品では四季になぞらえて描いています。そして『春夏秋冬そして春』という題名に隠されているのは輪廻。人々の暮らしとは繰り返し営まれていくことであり、そこに人としての業が生まれていくのではないでしょうか。

挿入歌としてアリランが歌われています。韓国の心『恨　-ハン-』を写した歌は言葉の分からない私たちの心すらも揺さぶり掛けてきます。


残念な点は青年役を演じた「キム・ヨンミン」。一人の男をあらわした映画の中で、彼の端正なルックスと激情をあらわした演技は、一人だけ浮いてしまった感があります。


評価　星　よんてん　ご


公式サイトはコチラ

・春夏秋冬そして春＠映画生活


P.S.
この作品を見るには集中力が必要だと思います。


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