野鳥にもやさしい風力発電であってほしい・・・

私たちが使っている電気、野鳥たちが犠牲になっている!たかが鳥なのか・・・。

渡り鳥~飛翔ルートの風車を避ける

2024-08-14 11:17:57 | 日記

林立する道北の風車を避けて飛ぶ野鳥たち

「野鳥は風車を避けて飛び、衝突リスクは小さい」と胸を張る事業者の顔が見えるようですが、移動コースの変更を余儀なくされる野鳥への影響は計り知れません。

     

 風力発電の適地とされる道北(北海道)で、渡り鳥が風車を回避するために、移動ルートの変更を強いられる「障壁影響」が生じていることが、日本野鳥の会による調査で分かった。渡り鳥は50キロ飛ぶごとに体重の1%に相当するエネルギーを使うといい、風車の急増で移動ルートが妨げられれば、目的地や中継地にたどり着けずに死ぬなどのリスクにつながりかねない。同会は「累積影響を検討すべきだ」と警鐘を鳴らす。(参考引用:2024年8月13日北海道新聞より)

 風車を避けて飛ぶ鳥ばかりではない!危険な風車間を飛んでいる鳥も相当いるはず。

 下の図はヨーロッパにおける、多数の風車に向かって飛ぶガン・カモ類の飛翔軌跡を調査したものです。ガン・カモ類の多くは風車を避けるように飛んでいますが、それでも相当数の個体が風車間を縫うように飛んでいます。その理由はわかりませんが、かなりの数が風車に衝突していると推測されます。「鳥たちが風車を避けて飛んでくれた!」と安心してはいけません。

     

 以前、愛媛県佐田岬半島上空を渡るハチクマ(タカ科)が、半島の尾根に並ぶように建設された風車を回避するように飛ぶようになったと、環境アセスを請け負った会社の社員が胸を張るように言っていたのを思い出しました。しかし、野鳥の会の地元支部の会員は、「風車が建つ前は、半島の尾根上空で上昇気流に乗り高く舞い上がり、滑空するように九州方面に飛んでいたが、今は、必死に羽ばたきながら九州方面に飛んで行っている。」と話していました。ハチクマは長い渡りでできるだけエネルギーを使わなくて済むように、上昇気流を掴まえながら、滑空と羽ばたきを組み合わせて遠い東南アジアまで渡る旅をしています。ハチクマが飛びやすい風況の良い場所に次々と風車が建てば、野鳥の会のコメントのように、疲労困ぱいして、目的地にたどり着く前に命が尽きるかもしれません。ハチクマの国内最終休憩場所の長崎県五島市福江島にたどり着くハチクマが少なくなり、さらにその先中国上海まで(700km)の、休む所など全くない海に落下してしまうハチクマが増えるかもしれません。「海外にまで渡る野鳥のことなど知る由もないし、責任はない!」と風力発電事業者は言うでしょうが、今後増えていくであろう洋上風車に弾き飛ばされ、海に落ちていく野鳥と同じように、その影響の実態は闇に葬られていくのでしょうか。

 野鳥たちに多大な犠牲を強い、自然環境や人への影響をないがしろにして発電する今の再エネ、そんな電気を使っていることの後ろめたさを感じます。再エネの間違った進め方を正すためにも、「再エネ賦課金制度の廃止」も視野に入れて、議論を始めましょう。「環境にやさしい風力発電・太陽光発電 」が、今は必ずしもそうではないことを国民のみなさんに知っていただくためにもです。


九州鹿児島も危機感募らせる!

2024-08-05 12:16:00 | 日記

吹上浜洋上風力発電100基以上の計画

 国が導入拡大を目指している洋上風力発電、鹿児島県では薩摩半島西方沖一帯に100基以上の整備が検討されている(下図参照~アセス配慮書より)。しかし、鹿児島県はいちき串木野市の沖合について、地元の理解が十分に得られていないとして、国に対し今年は情報提供を行わないことを決めた。

     

 いちき串木野市は、市の沖合およそ5キロ圏内を建設候補の海域として示したうえで、国に情報提供を行うよう県に提案をしていた。鹿児島県は2023年に周辺の自治体や地元漁協などと協議を重ねてきたが、参加する団体からは建設による漁業や環境などへの影響を懸念し、情報提供に反対する声があがっていた。こうした状況の中、計画を進めるうえで必要な情報を国に提供する期限を過ぎたため、鹿児島県は反対する意見があることを踏まえ、いちき串木野市の沖合に関する国への情報提供を見送った。※当初、対象地域のひとつであった南さつま市では反対運動があり、事業者は対象地域をいちき串木野市沖と日置市沖を対象にしていた。

伊佐市・出水市と水俣市にまたがる山間部の計画

 鹿児島県境にある水俣市の山林で計画されている風力発電事業「肥薩ウインドファーム」について、熊本県は土砂災害や希少動植物への影響が懸念されるとして、「事業計画全体の抜本的な見直し」を事業者に求める知事意見を経産省に提出した。同事業は熊本県水俣市と鹿児島県出水市、伊佐市にまたがる県境の山間部3,500ヘクタールに大型風車30基を建設する計画(下図参照)。

      

 知事意見は、事業区域で死亡事故があった2003年の土石流災害の現場に近いことなどを指摘、「土砂災害発生の懸念が払拭されていない」とした。熊本県知事と同様の懸念を示した水俣市長の意見や審査会、公聴会などでの意見を踏まえた厳しい内容となった。また、「希少種のキリシマエビネの自生地の半数が消失する」「クマタカが風車に衝突する可能性」から、自生箇所の開発回避や、風車の位置の変更などを求めた。

◆水俣市の市議会議員も疑問を呈しています。                 

「建設予定地は県有林と国有林で、水源涵養林も含まれる森林を壊してもいいのか。しかもどのくらいの深さ掘削するのか事業者は未公表」「建設予定地の鬼岳山~頭石集落までは1.2kmで、しかも砂防指定地域(土砂災害警戒地域)」「建設がもし開始されれば、湯の鶴温泉地域のかなり狭い道路を、10トントラックが毎日200~300台通過予定」「近くの茶畑を営んでいる地域までは200mほどしか離れていないため、近隣住民の低周波の健康被害が出る可能性も」「希少なクマタカの生息地域。バードストライク発生の可能性も」

◆日本野鳥の会鹿児島県支部の役員の一人は、「吹上浜沖の計画については、主に南さつま市の団体が活発に反対運動をされています。陸上風力発電については、熊本県水俣市の方々を含めて「南九州風車ネット」を作ろうかという話が出ています。やはり、計画予定地の地元の方が声をあげて、野鳥の会と共に活動してもらうことが大事だと強く思います。これから共有し、連携し合ってネットワークを広げていけたらと願っています。」

 そのほかに、薩摩川内市・いちき串木野市の周辺山間部18基や、伊佐市~えびの市~人吉市にまたがる山林に20基程の計画もあります。さらに、こう着状態?の紫尾山系の大規模な風力発電計画も気になります。野鳥の会鹿児島県支部のご苦労は如何ばかりと推察します。自然環境をないがしろにし、人の健康や野鳥への配慮もなく、利権目的の再エネバブルに悪乗りする自治体もあり、私たち保護団体も翻弄されています。地元で反対する団体と保護団体が連携し歩調を合わせ、励まし合いながら、風力発電促進が一旦立ち止まり、その進め方を見直すまでがんばりましょう!

 


抗議の意見書提出

2024-07-18 09:39:17 | 日記

「着床式洋上風車25基が最大級の地震と津波に十分耐え得るとの主張に対する抗議の意見書」を提出!

 福岡県北九州市の若松区沖で建設工事中の響灘洋上ウインドファーム事業の「ひびきウインドエナジー社」に対して、7月12日付で標記の意見書を提出しました。以下、紹介します(要旨のみの個所あり)。意見書には専門用語もあり、ブログをご覧の皆さまには、やや難解な個所もあると思いますが、事業者とはこのようなやりとりをしております。鳥類への影響だけではなく、防災上の懸念もある風力発電の進め方に問題があることを市民の皆さまに知っていただければと思います。

<意見書>                                

本年5月9日付で貴社に提出しました「響灘洋上風力発電の耐震性における質問書」に対しての回答を6月5日付で頂きましたが、肝要な項目の回答がなされておらず、適合性確認の疑問点や、不十分と思われる自主的な取組みなど、洋上風力発電の防災上の安全性についての懸念がさらに増す回答と言わざるを得ません。企業の技術秘匿という貴社にとって都合のよい理由による回答は看過できないことから、抗議するとともに、下記の意見を提出致します。なお、質問文と回答に対する意見は、「一般社団法人日本国土・環境保全協会代表理事」および「NPO法人防災推進機構理事長」鈴木猛康氏の作成によるものです。

【質問1の回答について】                        

質問:「津波の荷重をどのように作用させ、どのような解析方法を用いて洋上風力発電施設の安全性を照査されたのか。」

事業者の回答:「津波荷重は暴風波浪時の波力に比べて小さいことを算定によって確認。円筒形構造物は甚大な荷重にはならない。」

回答に対する意見:「結局、円筒型タワー構造であるので、津波の影響は考慮していない(検討の必要がない)と回答されているようですが、これでよろしいのですね。円筒形であっても大型になると、津波荷重による影響は大きくなることが懸念されます。」

【質問2の回答について】                        

質問:「レベル2地震に対する適合性確認認定は、沿岸技術研究センターによって行われたのか。同センターの清宮参事によれば、洋上風力発電施設については、モデルの作成、液状化の検討、地盤ばね、減衰などの入力定数の取り扱い方など、まだ十分に固まっていないことを指摘されている。また東北大学の今村文彦教授も、洋上風力発電の設計法は研究されていないとおっしゃっている。第三者機関で安全性を確認されているのであれば、その根拠となる書類をご提示いただきたい。」レベル2地震:構造物の耐震設計に用いる入力地震動で最大級の強さを持つ。極めて稀であるが、非常に強い地震動)(地盤ばね:地盤の水平方向に対する抵抗力

事業者の回答:「第三者機関である、沿岸技術研究センターと日本海事協会による適合性確認を受けている。」

回答に対する意見:「沿岸技術研究センターはレベル2地震に対する適合性認証をされる機関のはず。ところが時刻歴地震応答解析線形解析となっている。レベル2地震では非線形解析となる。沿岸技術研究センターの清宮先生の指摘されている地盤剛性および減衰の非線形性、タワー、ブレードの非線形性を考慮していないのではないか。能登半島地震では、靭性の欠如したブレードが破断した。」地震応答解析:地震波には建物が応答する。固い建物は早く揺れ、柔らかい(粘度の高い)建物はしなってゆっくり揺れる。建物のしなり、揺れ幅、揺れるスピードは、地震波と建物の相互応答により決まる)(線形解析:材料の弾性領域内で行う解析。最初の降伏点までは力と変形が比例し、力がなくなると元の状態(弾性)に戻るが、降伏点を越えれば永久的に形が変わり(塑性)、外力が強すぎると破断する

【質問3の回答について】                          

質問:「能登半島地震の地震動を入力とした地震応答解析を実施されたようだが、その地震動はどこで観測された地震動なのか。入力されたのは水平成分だけなのか、水平と鉛直方向を同時入力されたのか。」水平成分:上空から見てどちらに揺れたか

事業者の回答:「震度7を観測した地震動を対象とし、応答解析(水平動、鉛直動も同時入力)を行っている。」

回答に対する意見:「能登半島地震の際、どこで観測された地震動を入力振動として使われたかをお尋ねしましたが、回答されておりません。また、当初は能登半島地震に対しても安全性を確認したというご説明でしたが、第三者機関による確認はなく、「自主的な取組み」と、かなりトーンダウンしていることが気になります。この際、安全性照査の結果を教えていただき、安心させてください。」

【質問4の回答について】                          

質問:「安全性を確認するためのシミュレーションに使われたソフトウェアの名称を教えていただきたい。安全性照査をどの部材のどのような耐力について行ったのか。港湾空港技術研究所の解析モデルの研究では、ナセルやブレードの安全性を評価できない。能登半島地震ではブレードが折損して落下している。響灘では能登半島より規模の大きな風車が計画されている。

事業者の回答:「地震応答解析にて安全性評価を行っている」

回答に対する意見:「安全性を確認するためのシミュレーションに使われたソフトウエア名称の回答がありませんでした。また線形計算による許容応力度設計(中規模地震を対象)しか行われていないと解釈されてしまいます。それでよろしいですか?」変形破壊に至らない安全と考えられる最大値

【質問5の回答について】                          

質問:「東日本大震災を経験して、我が国では津波荷重による構造物の設計方法の開発に着手されたが、津波荷重については具体的な設計法を解説する学会等の報告書はない。延長の長い防波堤を対象とした波力をどのように着床式洋上風力発電施設に適用するのか確認させてください。

事業者の回答:「質問1の回答に集約」

回答に対する意見:特になし

【質問6の回答について】                          

質問:「津波が発生すると多くの船舶が制御不能となって流され、倒壊した家屋が流されることは、東日本大震災、そして、能登半島地震で知られている。津波が発生すると、密に設置された洋上の風力発電施設に大型漂流物が衝突する確率は極めて高くなる。設計では、このような施設と漂流物の衝突はどのように評価しているか。」

事業者の回答:「風力発電施設の倒壊リスクは十分に小さいものと考える。」

回答に対する意見:「小型船舶が衝突したとしても倒壊に至らないことを確認されているようだが、どのクラスの船舶をどのように衝突されたかについて公開していただけないか。この点、秘匿性はないと思われる。」

 以上、設計について、できる限り情報を公開して、洋上風力発電に関する懸念を払しょくされることを切に希望します。

【「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」代表より】          

貴社の響灘洋上ウインドファーム事業計画については、環境アセス手続きの段階から、日本野鳥の会北九州支部が「このまま事業計画を進めるべきでない」と意見を提出してきました。その主な理由として、「響灘海域に生息する鳥類のバードストライクや生息放棄などの悪影響を及ぼす重大な懸念がある」「響灘海域は北九州市の豊かな生物多様性を有する稀な島嶼地域であり、25基の洋上風力発電設置によってその多様性が大きく損なわれる重大な懸念がある」などを指摘してきました。それでも貴社は何ら実効性のある対策を示さないまま、建設工事を開始したため、当会(風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州)としては、建設工事の中止を求める行動に至ったところです。今、風力発電による悪影響は近隣住民の健康問題や自然破壊と防災上の問題へと大きくなり、自治体を巻き込む社会問題にも発展しています。そのような状況の中において、貴社がこのまま建設工事を進め、野生生物や人への影響を軽視し、さらに防災上の懸念を棚上げするかのような姿勢は看過できず抗議します。響灘洋上風力発電に反対する市民も少なからずいることを踏まえて、引き続き建設工事の中止を求めます。なお、この意見書につきましては、洋上風力発電の安全性を広く市民のみなさんに問い、懸念を認識していただくために、貴社に提出後、公開させていただきます。ご承知おきください。

◆この意見書は共同出資企業の九電みらいエナジー(株)、電源開発(株)、西部ガス(株)、(株)九電工、(株)北拓の五社社長宛にも送付しました。また、この事業を誘致した北九州市の市長宛にも「市民のこえ」制度を利用して送付しました。問題の重大さを真摯に考えてほしいものです。

7月22日、この意見書を政府の資源エネルギー庁 再生可能エネルギー推進室に送りました。数々の問題点を棚上げし、積み残したまま、建設工事をこのまま進めていいのかと、今後の再生可能エネルギーの進め方の参考にしてもらうことを願って送付しました。北九州の小さな団体から届いた文書に目を通してくれるのかどうかもわかりませんが、中央政府から見て、特に波風は立っていないように見える?北九州市沖の洋上風力発電事業にも、鳥類への影響や防災上の懸念のため事業に反対する市民がいることくらいは知ってもらいたいものです。

 


“全国初” のイヌワシ生息地マップ公開のワケ

2024-07-08 12:16:05 | 日記

風力発電か?絶滅危惧種イヌワシか?両立のジレンマ

 

自然エネルギーバブルの最中、風力発電建設が相次ぎ、絶滅危惧種イヌワシの保護との両立が大きな課題となっている。専門家は「このままでは第2のトキになる」と警鐘を鳴らす。風力発電を推し進めてきた岩手県では、全国初のイヌワシ保護策を打ち出した。岩手県が今年3月に公表した地図が波紋を広げている。

    

 公表された地図には、絶滅危惧種イヌワシの詳細な生息地が示されている。1km四方で細かく色分けされ、赤色のレッドゾーンは繁殖地や餌場として使われている “特に重要な生息地” 。これまでは希少な生きものの生息地は、生態への影響を配慮して非公開が常である(密猟などを防ぐため)。岩手県が公開に踏み切ったわけは、このままではイヌワシが絶滅しかねないという強い危機感があるからだ。

「東北の空の王者」絶滅の危機

 イヌワシは環境省が定める絶滅危惧種。国内ではわずか500羽ほどしかいない。餌場となる開けた草原が減少し、その数は減り続けているが、岩手県はそのうち25つがいが確認されている日本有数の生息地だ。そんな中、風力発電の建設が問題となっている。

 近年、絶滅が危ぶまれる希少な鳥が、風車の羽根に衝突して(弾き飛ばされ)死ぬ事故が相次いでいる。今年(2024)4月、北海道幌延町の陸上風力発電でオジロワシやオオワシなどが、今年3月までの10ヵ月間で3羽が衝突死していたことがわかった。環境省によると、北海道では一昨年までの18年間で、風力発電の風車にオジロワシとオオワシが衝突する事故が73件発生、2008年には岩手県内でもイヌワシが衝突死している。

「このままでは第2のトキになる!」

「風力発電が建設されると、衝突を恐れて、発電所の周囲500mはイヌワシをはじめほとんどの鳥が近づかなくなり、餌場として使えなくなる。貴重な餌場が減ることで、イヌワシが飢餓状態に陥ってしまう。このまま風力発電の建設が相次げば、あっという間にイヌワシは滅んでいなくなる。第2のトキになってしまう。」と識者は言っている。

県が公表・・・1km四方の生息地

 風力発電に適した風が安定して吹く開けた草原に風車の立地を目指す事業者が増え、そこがイヌワシの生息地と重なるため、岩手県は再エネ拡大の一方、イヌワシ保護の方針も掲げている。どちらも環境を重視した政策だが、どちらかを無視することもできない。

 「本来、イヌワシなどの保護のために建設を避けるべきエリアに、多くの事業が計画されていることがわかった。計画段階で事業者に知ってもらう仕組みが必要だと考えた。」(岩手県環境保全課)つまり、赤や黄色のエリアでの風力発電建設を避けるよう促したというわけだ。

レッドゾーンに風力発電事業が5件進められている!

    

 しかし、今回の県の対応は、あくまでガイドラインの変更に留まっている。つまり、レッドゾーンへの建設を防ぐ強制力はない。さらに、これまで計画を進めてきた事業者にとっては、後出しのように「レッドゾーン」を指定されたことになる。「計画撤回」や「エリア外への計画変更」を考えている事業者は今のところひとつもない。

「再エネ拡大」も「イヌワシ保護」も、どちらも環境に配慮したものだが、この両立には大きなジレンマがある。国を挙げた議論が求められる。

【ブログ作成者から】                          

野生生物への影響を重視してこなかったことで、慌てて今回のイヌワシ生息マップの公表になったのでしょう。県の環境審査会の中には警鐘を鳴らしていた委員もいたでしょうが。しかも「このままでは第2のトキになる」と言った重鎮的識者もいましたよね。こうなったからには、イヌワシ生息地への計画禁止を条例化し、現在計画している事業者に県が丁寧に説明し、計画撤回を促すしかないでしょう。国を挙げた議論は全く期待できませんね。今の国会議員や官僚にどれほどの自然保護家がいるでしょうか。少なくとも私が接触した議員は動く気配どころか、全くと言っていいほど認識と危機感がありませんでした。当てにならない国よりは、イヌワシが生息する自治体が連携して、広域的で実効性あるゾーニングを作成しましょう。こう言ってる間にも、計画を目論んでいるでしょうから。

★ジレンマとは「相反する二つの事の板ばさみになって、どちらとも決めかねる状態」ですが、今は一方的に風力発電が進められている状態です。「風車かイヌワシか 」ではなく、イヌワシを優先させなければです。

 

 

 


目撃!ナベヅルが風車にはねられた!

2024-06-30 07:02:04 | 日記

北帰行のナベヅルの群れ

2023年2月15日鹿児島県長島町で、群れ約20羽の中の最後尾の1羽が、回転しているブレード(羽根)に接触、そのまま落下した!

 日本野鳥の会鹿児島県支部の役員は、「1年以上も前のナベヅルの衝突落下目撃情報だが、その瞬間の写真を撮っていないので、慎重を期して報告が遅くなり、今年の支部報6月号での報告になった。」また、別の役員からは「ツルのバードストライクは以前からあったが、野鳥の会会員が確認していない、証拠がない、ということで報告できなかった。今回、やっと会員が目撃したが、写真がないので信ぴょう性を疑われるかもしれない。」とも話しています。

☆彡ナベヅル(絶滅危惧Ⅱ類、特別天然記念物):マナヅルとともに、鹿児島県出水市の干拓地で毎年1万羽を超す数が越冬している。世界最大のツルの越冬地として知られている。地元出水市では、官民協働で保護に尽力している。

写真上:長島町の風車群(事業者H.Pより)と風車にニアミスのナベヅルの群れ(北帰行)

写真のナベヅルの群れ飛翔は今回の衝突落下時のものではありません。

 「ナベヅル衝突の場面に遭遇した野鳥の会会員によると、長島町の行人岳(ぎょうにんだけ394m)の展望所からは、出水平野を飛び立ったツルは、東側の八代海を渡るルートと、島の南西部に設置された風車群側を渡るルートがあり、北帰行をするツルの群れが観察できる絶好のポイントだそうです。その日は、2023年2月15日、子供さんと二人で10時頃ナベヅルの群れ約20羽を双眼鏡で観察していると、その群れが風車の横を通過しようとしていたその瞬間、最後尾の1羽が回転しているブレードに接触したと思われ、そのまま直角に落下して視界から消えてしまった、とのこと。本当に一瞬のことであり、二人顔を見合わせ、あっけにとられた出来事であったと、当日を振り返り話を伺いました。」(日本野鳥の会鹿児島県支部 支部報2024年6月号より)

【日本野鳥の会自然保護室の研究員から】                 

「やはり何らかの管理連絡体制を構築しないと、ツルのバードストライクが起きたかどうか、いつまでも確証を得られませんね。事業者によるパトロールの頻度を上げて、科学的手法で死骸探索調査を行うか、今回のように目撃した会員、または鹿児島県支部の幹部がすぐに発電所内に立ち入って、死骸がないかを確認できるようにする、といったところでしょうか。」

【ブログ作成者から】                          

16年間も稼働している風車群で、やっとツルのバードストライクが野鳥の会会員によって目撃されたわけですが、16年の間にどれほどのツルをはじめとする野鳥が犠牲になったのでしょうか。毎年9月には、越冬のために東南アジアに渡って行くタカ類も多数がこの地域を飛翔しているはずです。そのことに対して事業者は風車に衝突しないように配慮していたのでしょうか。早速事業者に訊いてみたところ、「運転開始前にツルの保護団体と協議し、ツルの主な飛翔コースを調査し、飛翔の支障にならないように、設置位置を変更した風車もある。定期的なパトロールも実施してきた。」「バードストライク防止策は特に実施していない。」とのことでした。16年前というと、風力発電は環境アセスの対象にはなっていなかったので、私たち保護団体も事業者も、野鳥への影響の危機意識も高くはなかったでしょう。ただ、環境アセスが始まってからは鳥類への影響については、どの事業者も一応配慮する姿勢を見せているので、長島町の風力発電事業者も、実効性ある衝突防止策を検討実施するべきでした。“他の事業者は何もしていないのに、いまさらなぜ当社が?” “環境省さえ実効性ある対策を示していない” “これ以上の費用はかけられない” と、言いたいのかもしれません。今もこの流れは変わっていません。「環境に(野生生物にも)やさしい風力発電」のはずですよね。違いますか?