http://www.sakigake.jp/p/editorial/news.jsp?kc=20121020az
人口減が進む中、いかに身の丈に合った、しかも将来に希望の持てるまちをつくり上げるか。全国の地方都市で展開されている再開発事業で特に着目したいのが、この点である。
その視点に立つと、事業完了から1年半がたつ横手市の再開発は、コンパクトなまちの在り方を考える上で興味深い。JR横手駅の東口に公益施設棟、商業施設棟、高齢者住宅棟などを一体的に整備した。事業区域は約2・1ヘクタール。特に目立つ施設があるわけでもないのに、若者から高齢者まで実に幅広い世代でにぎわっている。
4階建ての公益施設棟「わいわいぷらざ」が、予想を上回るペースで利用されていることが大きい。当初は3~4年での達成を見込んでいた入場50万人を先日、早々と達成した。どんなに立派な箱物をこしらえたとしても、利用率が低ければかえって街のイメージはダウンする。市民がどう反応するか心配されていたが、まずは上々のスタートを切ったと言っていい。
隣の商業施設棟のスーパーで買い物をして、わいわいぷらざの各フロアで食べたり飲んだりしながら談笑するお年寄りや高校生の姿が目立つ。飲食の持ち込みも含めて使用上の制約が少なく、気兼ねなしに利用できるのがいい、と市民は口をそろえる。広々とした児童センターも人気で、子育て世代の交流の場として重宝されている。今後とも、この和やかで開放的な雰囲気を大切にしてもらいたい。
わいわいぷらざには、知的障害者や精神障害者らが働く喫茶店もある。社会復帰に向けた職業訓練という狙いから、あえて多くの市民が集まる駅前に就労の場を設けたという。障害者の社会進出を皆で後押ししようという機運を、市民の間に広げる画期的な取り組みといえる。
広場に面した一角には地元のFM放送局「横手かまくらFM」のスタジオが入居、身近な情報を毎日発信している。市民有志が積極的にイベントを仕掛けていることも、にぎわい創出に一役買っている。関係者は何が好調の要因かを詳細に分析し、さらに親しまれるエリアに育て上げてほしい。
課題は、このにぎわいをどうやって周辺に波及させるかだ。今のところ再開発地区を除けば、にぎわい創出への動きが大きなうねりには至っていない。駅前の事業区域のみならず、近隣を含めて全体が活気を帯びてこそ、再開発は目的を達成したといえる。官民の一層の奮起を期待したい。
横手市は現在、人口約9万9千人。秋田市に次ぐ県内第2の都市に位置付けられるものの、人口減に歯止めがかかっておらず、雇用情勢も芳しくない。今年7月に再開発事業の建設工事に着手した大仙市と共に、地方の新たなまちづくりのモデル都市を目指して切磋琢磨(せっさたくま)してほしい。それが県南部、引いては県全体の発展につながる。