今回は乗鞍岳頂上にほど近い畳平で1泊しましたが
山荘なのでいろいろな制限があり面白い体験でしたよ。
バスターミナルに着いて歩いて数分の宿に着くと
5組ほどの宿泊客はオーナーから説明を聞きます。
宿はバストイレなし、洗面所共用、暖房は小さな電気ストーブ1個
電力も少ないのでPM10.00には全館電気が消えます。
狭い部屋ですが個室というだけ贅沢でしょうか。
山では相部屋、雑魚寝なんてよくあることですね。
テレビも無く寒いのでPM5.00前には毛布にくるまって
疲れていたのか、AM3.00前まで爆睡して起床。
そこから45分かけて大黒岳に向かうことにしたのですが
結果は前述のような状況でした。
天候はドンピシャで願い通りにはいかないものです。
ただ この時期にだけ味わえる自然の出迎えは嬉しかったですよ。
日の出後に明るくなった大雪渓の道路には
人の姿がだんだんと見えてきました。正面は大黒岳。
ご夫婦らしいふたりがカメラを提げておられたので
「おはようございます。日の出は撮れましたか?」とご挨拶。
「はい、何とか あなたもいいのが撮れましたか?」
「それなりですがやっとやっとでした」
明るくなった道路わきにはあちこちにコマクサが
こんな環境でよく頑張ってるネ~ 。
< 乗鞍岳クマ襲撃事件 >
さて、宿に帰る道々、この景色の中であの惨劇が起きたのかとよぎるものがありました。
写真は左からバスターミナル、銀嶺莊、パトロール小屋です。
2009年9月、午後2時頃このターミナル付近には連休でもあり
このエリアに1000名ほどの観光や登山の人たちがいたのですね。
運行中のバスの運転手さんが大黒岳の上の方から物凄いスピードで
駆け下りて来るクマを目撃したのです。
そして、惨劇が始まりました。
興奮気味のクマは次々と人を襲い
周りにいた人たちは石を投げたりして助けようとして応戦。
中にはクマに襲われた妻を助けようとクマの頭に杖を振り下ろした人も・・
この人は後に大掛かりな手術を何度も受けるほど
顔を襲われ右目を失い顔面を大きく損傷しました。
クマはいよいよ興奮してバスターミナルのほうへ
わたしの泊まった山荘にもなだれ込んだのですね。
山荘のオーナーさんは客を避難させたり職員とバリケードを張ったり
クマに身を呈して戦いに挑みました。
父親がクマに襲われているのを見たオーナーの息子さんは
間に割って入り助けようとします。
そこに軽トラックが突っ込んでクマはバスターミナルのほうへ。
こちらでも職員さんはじめそこにいた人たちが必死に戦いに挑みます。
居合わせたバスやタクシー、パトロールの車が
いっせいにクラクションを鳴らしてもクマは動じず荒れ狂うばかり
職員が消火器を近くから噴射して、驚いたクマはパトロール小屋に逃げ込んで
ここでクマは閉じ込められるのですが窓を壊して逃走。
3時間半にわたりクマの襲撃は続きましたが
最後は猟友会によって処分されました。
結果10名以上の人がクマに襲われて負傷、重傷者多数。
救急搬送も2710mの山岳地ですから困難を極めたようですね。
よくクマとの共生を模索するべきだとの意見も聞きますが
このような事態には難しくも思えます。
そもそもどうしてクマはあんなに激怒し興奮していたのか
何故人間を敵とみなして次々と襲ったのか
原因の大元は大黒岳の山頂に何らかの出来事があったようです。
山でクマよけの鈴とか笛とか効果があるのか不安になりますね。
いよいよのときには、山の知り合いによるとクマよけのスプレーが強力で
唯一、効果が期待できるとの事でした。
この時、バスターミナルエリアにいた人たちは
一丸となってクマとの闘いに全力を尽くしましたが
改めてその勇気と行動に深く心打たれることです。
今、全国でクマの目撃情報が続いてきます。
極力近づかない事、刺激させないことが大切のようですね。
そんなこんなで下山する時が来ました。
山に行く度、いつも戒めが増えていくように思えます。
人に迷惑をかけないよう、無理な行程は組まない事、
そんな事を思いながら、乗鞍高原に向かって下りるバスに身を委ねます。