滋賀県高島市の今津地区では
今、座禅草がいっせいに顔を出しています。
今年は例年以上に多いですよ。
この群生地は去年の2月に行った時は
真っ白に覆われた雪を割るように
にょきにょきと頭を出しているそんな様でしたね。
ここは自由に散策できて、入園料も駐車場も無料です。
ひとえにボランティアの方たちの努力と管理のおかげですね。
停まっている車を見ると、結構遠い他府県からも来られているようです。
座禅草は、僧侶が祠で座禅を組んでいる様子に似ていることから
ザゼンソウと呼ばれるようになったとか・・
私がこの花を知ったのは、父母のふるさとである山奥の細い川の傍でした。
湿地帯に群生すると言いますが
そのあたりは水芭蕉とほぼ変わりません。
昔、信州の奥深い村でひとりの語り部から
こんな話を聞いたことがあります。
・・・この村のさらに山奥に働き者の老夫婦が一人息子と住んでおった。
心優しい息子は小平といって親孝行な子でな
20を5つ6つ越えた年ごろだったじゃろうか
三人は炭焼きを生業に仲睦まじく暮らしていたのだが
ある日父親が崖から足を滑らせて死んでしもうた。
母親は嘆きのあまり床についてしまって
小平はそれは献身的に世話をしておったが
2年後にはその母親も亡くなって
ひとりで母親を埋葬した小平は抜け殻のようになって
生きていくはりも無くしたんじゃろな
おらもお父やおっ母の所にいこう・・・
小平が選んだ木に縄を投げ結んでふと足元を見ると
一対の座禅草が咲いておってな
しばらくその前に座っていると はらはらと涙が零れ落ちたそうな。
お父とおっ母が 「まだこっちへ来たらいかん
お前が悪い気を起こしたら その下に咲いているザゼンソウが
つぶれてしもうて来年咲くことも出来んじゃろ」
小平はやがて了見してまた炭焼きの小屋に戻っていった。
小平が座禅草を守ったとも 座禅草が小平を守ったとも言えるがな・・・
あらかたこんな話だったと思います。
語り部の静かな味のある口調に引き込まれたものでした。
ちなみに座禅草の花言葉は
「沈黙の愛」 「ひっそりと待つ」 だそうですね。