ソフトバンクグループのハイブリッド債が個人向けによく売れたという記事。
「ソフトバンクグループが「ハイブリッド債」と呼ばれる債券4000億円(25年債)を9月30日に発行した。事業会社の個人向けハイブリッド債は初めてで、高い利回りを背景に販売は順調だったようだ。対照的に先行して販売した機関投資家向けは当初3000億~5000億円程度を見込んだものの710億円の起債にとどまり、明暗が分かれた。」
機関投資家がほとんど買わないような金融商品を個人に大々的に売っていいものなのか...
日経記事によれば、当初5年間は年3%の固定利率(その後は変動金利)でたしかに利回りは高いのですが、以前資料請求した証券会社からたまたま送ってきた宣伝資料によると、以下のようなリスクがあります(広告では小さな活字で書いてあります)。
・本債券は25年債です。
・5年目以降の各利払日に期限前償還される可能性があります。(「当然のことながら期限前償還されないこともあります。」(資料の文言どおり))
・本債券には劣後特約が付されています。本債券は発行体の一般債務に加えて、上位劣後債よりも弁済順位が劣後します。
・本債券の利払いは発行体の任意により繰り延べされる可能性があります。
要するに、利回りはよいけれども、普通株と同じようなリスクを負う(しかし株式と違って大きく値上がりする可能性はほとんどない)商品のようです。
日経記事で書いているように、5年後に繰り上げ償還されるという前提なら魅力的なのでしょう。実際も、5年で償還される可能性は高いとは思いますが、それまでにソフトバンクの経営に何があるかわかりません(例えば海外企業巨額買収が失敗したような場合はどうなのか)。もし2年縛りどころか、25年縛りになってしまったら...。
ソフトバンクの監査人の責任はますます重くなりそうです(会社からのプレッシャーも?)。
会社の財務諸表上は、負債である社債勘定に計上されます。株式を発行するのと違って、純資産は膨らまないので、ROEの計算上も有利なのでしょう。こういったスキーム(他の会社でも例があるようです)が出てくるのは、経産省や金融庁がROE向上をあおっている影響もあるのでしょうか。
公募ハイブリッド社債(公募劣後特約付社債)の条件決定に関するお知らせ(ソフトバンクグループ)
ハイブリッド証券のメリットとデメリット(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
個人投資家にとっての「個人向け社債」(楽天証券)
「手間とコストを掛けて社債が個人に売られるということは、その社債の発行者の信用リスクや利回りを含めた条件が、機関投資家には魅力的でないからだ、という合理的な推測が成り立つ。
世のセールスマン諸氏には申し訳ないが、「わざわざ売りに来る物に、ろくな物が無い」というのが一般的な経済原則である。社債も例外ではない。」
(大和証券の販売用資料より)
注意書き(網掛け部分)の文字は利率の4分の1の大きさです。
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