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《リーマン・ショック以来の窮地》どうなる農林中金の“出世と人事” 奥和登理事長は2024年6月で2期目終了(文春オンラインより)

《リーマン・ショック以来の窮地》どうなる農林中金の“出世と人事” 奥和登理事長は2024年6月で2期目終了

農林中金が大赤字になりそうだというダイヤモンド・オンラインの記事を先日紹介しましたが(→当サイトの関連記事)、これは、もう少し詳しい記事です(ただし、1月に出たもので少し古い)。

「農林中金が2023年11月16日に発表した同年4~9月期の連結決算は、純利益が前年同期比15%減の1443億円で着地した。表面上は穏当な業績に見えるが、さにあらず。

有価証券の評価損は9月末時点で2兆5356億円と、3月末の9462億円から2.7倍に拡大しています。米連邦準備理事会の金融引き締めによる米金利の上昇によって、外債を中心に、債券の評価損が膨らんだことが主因です」(金融アナリスト)」

農林中金はどのような有価証券投資を行っているのか...

「“日本最大の機関投資家”と呼ばれる農林中金の収益の大半は、潤沢な円資金を国内外の有価証券等で運用するグローバル投資で稼いでいる。「国内の円で日本国債を購入。それを担保にドルを調達し、米国債等に投資する」のが基本投資フローだ。

2023年9月末時点の総資産は約101兆9000億円で、うち有価証券への運用は約44兆1000億円と、全体の43.2%。このうち、USドル建てが53%と過半を占める。つまり、外貨の調達コストが収益を大きく左右する構造なのだ。」

円安ドル高で、外国債券への投資は利益になるのかと思えば、資金調達をドルで行っているので(そうしないと為替リスクが生じてしまうのでしょう)、米国の金利上昇の影響がもろに影響しているようです。

格付けが下がって調達コストが上がる懸念があって、上期決算は益出しを行ったのだそうです。

「「経営陣の方針で今年度上期に、保有するオルタナティブ資産、例えば証券化した不動産などを売却して、益出しをしたのです。目標は1800億円でした」(同前)

つまり、格付けが下がることを懸念した経営陣が、資産を売却してまで利益を捻出していた。これが上期決算の実態だったというのだ。」

記事の後半では、幹部の人事の話や、リーマンショックをどうやって乗り越えたのかなどを述べています。資本増強で時間を稼ぎつつ、証券化関連商品(多くは格付けの高いものだった)は売り急がなかったそうです。

(補足)

農林中金の大赤字は日経も報じました。2025年3月期が5000億円超の赤字になるといっています。

農林中金、1.2兆円資本増強検討 今期5000億円超赤字へ(日経)(記事の一部のみ)

「米金利高に伴って含み損を抱える米国債など運用収支が悪化」とありますが、満期保有として会計処理していれば、含み損は損益には関係ありません。2025年3月期は、保有する債券が低い利回りのままなのに対し、調達コストがあがって、逆ざやになるということなのでしょうか。20兆円超も米ドル建て債券を保有していて、米金利上昇により、仮に1%逆ざやになれば、それだけで2000億円の赤字になります。

リーマンショックのあとは、金融緩和となり調達コストは下がる方向でしたが、今回は、インフレが続く限り、金利は大きく下がらない(採算は改善しない)のでは。

NHKも報じています。

農林中金 1兆円規模の増資検討 米国債など運用で多額の含み損(NHK)

「農林中金は国内で低金利環境が続く中、アメリカ国債を中心に外国債券の運用を拡大してきましたが、アメリカの金利上昇の影響などで金利が低かったときに購入した債券の価値が目減りしていました。

この結果、債券の含み損が大きく膨らみ、この処理に伴って来年3月期の最終利益が5000億円規模の赤字に陥る見通しになったということです。

このため、資本増強によって財務の健全性を確保する必要があると判断した形で、今後、収益性が高い資産への入れ替えを行うとみられます。」

資産を入れ替えるということは、含み損のある債券を売却する(含み損を実現させる)ということなのでしょう。その規模で損益を調整することができそうです。

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