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見応えがあった『福岡アジア美術館ベストコレクション』


もう1ヶ月以上前になるが、所用で福岡市に行く機会があったので、『福岡アジア美術館ベストコレクション』展に足を運んだ。美術館開館25周年スペシャル企画というだけあって、見応えがあった。その中から、FBに書いていたものを掲載しておきたい。

この人の作品は、やはり空間を感じさせる。これは1977年の『線より』と題された作品。『From Line』は、東京都現代美術館など各地の美術館が所蔵しているが、自分的にはここの作品が一番好きだ。こことは、福岡アジア美術館。この人とは、李 禹煥(リ・ウファン)。




『略奪された岸辺』。インドの歴史を知らないながら、スケールの大きさに圧倒されそうだった。物語は左から右へと展開する。一番左がインドに着いたイギリス人。植民地の始まりだ。続く3枚がギリシャ神話の王女メディアを基にした男と女のドラマ。そして西洋文明の自然破壊。最後の2枚は1992年のムンバイ暴動とあった。植民地、男性に翻弄される女性。女性の男性への復讐。環境問題。そして宗教対立。福岡アジア美術館がコレクションするインドの女性アーティスト「ナリニ・マラニ」の作品だ。
この絵を見ながら、サタジット・レイの映画『大地のうた』を思い出した。インドすごい!









『卵 #3』、観ておきたかった作品だ。福岡アジア美術館がコレクションする中国生まれ北京在住というリン・ティエンミャオ(林天苗)の2001年の作品。
自身の大伸ばしにされた出産直後の写真には白い玉がいくつも貼り付き、そしてそこから伸びる糸の先には白い糸玉が床一面に転がっている。それらは、女性が一生のうちに排卵する卵子なのだそうだ。女性が生きる生を生む性と同時に、生む性として社会的に拘束される姿をも感じさせた。






色々と考えさせる絵だ。どこか遠くを見ているような人民服の女性。そしてカッと見開いた目の黄色い顔の男性。両者を結ぶ赤い糸の先には天安門が映るテレビやバラの花、そして何が入っているのか木箱。ちょっと不穏な空気が漂っているようにも感じる。人民服の女性は若い頃の母。黄色い顔の男性は画家自身。文化大革命や天安門事件など波乱の歴史に翻弄されてきた中国人民の姿なのだろうか・・・。1958年生まれの画家は確実に社会を表現しているようだ。
『若い娘としての母と画家』1993年:ジャン・シャオガン(張暁剛)






次々に海面に墜落する軍用ヘリ。右から墜落するかと思えば、左から、あるいは頭上から様々な格好で墜落する。ベトナム戦争に大量投入された軍用ヘリの姿が脳裏を横切る。コッポラの映画『地獄の黙示録』に冒頭から出てきたあの軍用ヘリだ。
1975年4月30日、サイゴン(現ホーチミン市)陥落。幾多の米軍人・高官はヘリコプターで脱出を試みる。だが、航空母艦にたどり着く前に墜落したり、着いたとしても次のヘリ着艦のために海上に投棄されたのだという。
『南シナ海ピシュクン』と題された6分30秒のアニメだ。作者はディン・Q・レ、2009年作。
大きなスクリーンに写し出される軍用ヘリの墜落する姿は、どういうわけか観ていて飽きることはなかった。動画としては撮影禁止だったので、写真のみ。






個人に対する誹謗中傷をはじめ、国家間や民族間、あるいは宗派間や人種間などで繰り返される暴力と殺戮。世界がそのような不条理から解放される手立てはないのか・・・。
一人裸でたたずむ人間に向けられたたくさんの剣先。目を閉じた顔は穏やかな崇高さを感じさせ、剣の側に語りかける。剣なしでいこうよ・・・。
男性の姿は、非暴力・不殺生を説くインドのジャイナ教の聖者像に原型があるという。
『内なる声』N.N.リムゾン(1992年・インド)


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