ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

ジュンスカの日 2024

2024-05-21 19:37:24 | 日記



今日5月21日は、「JUN SKY WALKER(S)の日」。

ということで、例年どおりジュンスカ記事です。

まず、去年発表された新曲。

JUN SKY WALKER(S) -そばにいるから  

去年はジュンスカ関連アーティストという記事だったのでジュンスカ自身の曲は載せてなかったんですが……この曲は35周年記念という意味合いもあって、特別な曲でしょう。


最近の話として、ジュンスカの曲がNHKの「みんなのうた」で使われるということがありました。
「ヒカレ」。

Hikare

歌の中に「雨上がりの夜空」という言葉が出てきたりして、ロックンロールのグレートスピリッツということを感じさせる曲となっています。
ロックンロールというジャンル自体が大きな曲がり角を迎えている状況にあって、ロックンロールの歴史を彩ってきたヒーローたちの業績を踏まえつつ、そのスピリッツを継承していく覚悟というか……最近のジュンスカの曲を聴いていると、そんなふうに感じられることがよくあります。

そして、その歴史のなかには当然自分たちもいるということで……こんな歌がありました。
「もう一度 歩いていこう」。

Mouichido Aruiteikou

代表曲「歩いていこう」を意識した一曲です。
歌の中に「歩いていこう」の一部が引用されており、かと思えば、歌のしめくくりにSTARTが使われていたり……一つのバンドが長くやっていると、過去の自分たちにどう向き合うかという問題が出てくるわけですが、「背負って立つ」というのがジュンスカの出した答えだったのではないでしょうか。

ついでに、もとの「歩いていこう」のほうも。

JUN SKY WALKER(S) - 歩いていこう

この歌は、前にも一度載せたかと思われますが、そのときはアルバムジャケットを使用したオーディオ版だったと思います。こちらは、当時のMV。あの時代、バンドブームのころの勢いが伝わってくる動画です。
あの喧噪は過ぎ去った。時が流れ、あらゆるものが変わってしまった……そうなったときに、ジュンスカというバンドが行き着いたのが、ロックンロールのグレートスピリッツだったのではないでしょうか。


先の「歩いていこう」もそうですが、近年、Youtubueのジュンスカ公式チャンネルでいろいろ動画がアップされているようです。
2年前にジュンスカはサブスク解禁していますが、それ以降Youtubeのコンテンツも拡充しているということだと思われます。これも、時代の変化、音楽を取り巻く環境の変化ということでしょう。
そのなかから、代表曲の一つMY GENERATION。

JUN SKY WALKER(S) -MY GENERATION

もうずいぶん前に一度このブログでとりあげました。
このブログのタイトルも半分はここからきているということで……特別な一曲です。



デッケネの名曲を振り返る

2024-05-18 22:48:56 | 過去記事

Dead Kennedys - "California Über Alles"

今回は、音楽記事です。なぜだか、最近の記事は死去した人物ということを軸にして書くことが多くなっていますが……今回も、その流れは続きます。登場するのは、Dead Kennedy......


過去記事です。


先日セパルトゥラの記事で、ジェロ・ビアフラの名前が出てきました。
そういえば、デッド・ケネディーズの記事を書いたのは去年だったなあ…ということで、デッケネの記事です。



セパルトゥラのBiotech Is Godzilla という曲が、デッド・ケネディーズのボーカルであるジェロ・ビアフラとの共作だという話だったんですが……
Youtubeを見ていると、セパルトゥラがデッケネの代表曲Holiday in Cambodia をライブでカバーしている音源がありました。

Holiday in Cambodia (Live at Zeppelinhalle, Kaufbeuren, West Germany, 9/22/1989)


セパルトゥラは、ジェロ・ビアフラをゲストに迎えて共演したりもしているようです。あのBiotech Is Godzilla も、そういった縁からできた曲でしょう。
このライブ音源では、歌に入る前に反戦の歌であることを紹介しています。このときのセパルトゥラのメンバーは現メンバーとはだいぶ違っていますが、パンク/ハードコアの闘うアティチュードは継承されているのでしょう。



ちなみに、同じ曲をフーファイターズがカバーした音源もあります。


Holiday In Cambodia (Live from the 2007 MTV Music Awards)


どう考えてもデイヴ・グロールの声ではないよな……と思ってコメント欄を見ると、歌っているのはシステム・オブ・ア・ダウンのサージ・タンキアンらしいです。
システム・オブ・ア・ダウンといえば、だいぶ前に一度このブログで紹介しました。ラディカルということでは、デッドケネディーズ直系といってもよいでしょう。
こういった人たちがカバーしているというのは、いかにデッケネが愛されているかということを示しています。



デッドケネディーズといえば、昨年、アルバムFresh Fruit for Rotting Vegetables がゴールドディスクに認定されるということがありました。
1980年のリリースから43年をかけて……これも、デッド・ケネディーズが深く愛されている証左でしょう。大ブレイクしてチャートで一位になったりはしませんが、数十年の時を経ても聴き続けられているということなのです。

そのアルバムに収録されている曲 Kill the Poor を、トリヴィアムがカバーしている動画がありました。

Trivium - Kill The Poor (Official Audio)


トリヴィアムも、前回のセパルトゥラの記事に登場していました。こうしてつながってくる何かがあるということでしょう。



デッケネが愛されていることを示す例をもう一つ。
ジャンル的にはずいぶん離れているようにも思えるMobyです。デッド・ケネディーズのドラム、DHペリグロを迎えた曲を発表していました。

Moby - Power Is Taken ft. D.H. Peligro (Official Video)


ここでのペリグロは、ボーカルというよりも、せりふをしゃべっている感じです。「抑圧を憎むのならば、官憲と闘わなければならない。力は分け合うものではない。奪い取るものだ」……これがまさに、デッケネ流のラディカリズムです。
元記事でも書いたとおりDHペリグロは2022年に死去しています。このMobyのシングルに参加したのは2020年のことで、最晩年の仕事といえるでしょう。文字どおり、死ぬまでロックしていたのです。


もう一つ、昨年の話として、ジェロ・ビアフラがゴーゴル・ボールデロというバンドのチャリティ企画に参加していました。
ゴーゴル・ボールデロは多国籍バンドで、リーダーのユージン・ハッツはウクライナ出身。ということで、ウクライナ支援のための楽曲を発表しています。
United Strike Back - Gogol Bordello & Friends

この企画には、ビアフラのほかにも、グリーンデイ、フガジ、ミニストリーといったバンドのメンバーが参加しました。
ビアフラもまた、闘争のアティチュードを失ってはいないのです。



最後に、デッド・ケネディーズ自身の曲をひとつ。

Dead Kennedys - Nazi Punks Fuck Off (In Studio)


タイトルからだけでも、ラディカル感は伝わってくるでしょう。
これでこそパンク、これでこそデッケネというものです。



Sepultura, Guardians of Earth

2024-05-12 22:03:58 | 音楽批評


今回は、ひさびさに音楽記事です。

前回、過去記事ということで、スリップノットについて書きました。
ジェイ・ワインバーグ脱退後にスリップノットに新ドラマーとして加入したのが、セパルトゥラのエロイ・カサグランデだったということなんですが……そこで名前が出てきたついでということで、今回のテーマは、セパルトゥラです。


セパルトゥラは、ブラジルのメタルバンドです。

前回の記事で書いたとおり、活動終了を決定し、フェアウェルツアーに臨むところです。
近年、大物アーティストでそういう話がよくあるわけなんですが……しかし、セパルトゥラの場合、そんなに高齢のバンドというわけではありません。結成は1984年。メンバーチェンジで若返ったりもしていて、現ボーカルのデリック・グリーンはまだ50歳ぐらい。年齢的な問題で引退ということではないでしょう。カサグランデの脱退はフェアウェルツアーのリハが始まる3日前だったといいますが、そういったところから考えると、バンド内に何かごたごたがあって結束を保てない状態だったのかとも思われます。まあ、推測の域を出ませんが……


このセパルトゥラというバンド、なかなか私の琴線にひっかかるものがありました。
ツボをおさえているというか……そういうところがあるのです。
それゆえに、グローバルなメタルソサエティでリスペクトを受けてもいるようです。
それを示すのが、コロナ禍に行っていたSepalquarta という企画。
ゲストを迎えて過去に発表した曲を再録するという企画なんですが、ここに参加しているゲストたちが非常に豪華なのです。以下、いくつか例をあげましょう。


このときはまだメガデスにいたデヴィッド・エレフソンを迎えて。

Sepultura - Territory (feat. David Ellefson - Megadeth & Metal Allegiance)

エレフソンのシャツに日本語で「ロックンロール」と書いてあるのが気になりますが……


モーターヘッドのフィル・キャンベルを迎えて。

Sepultura - Orgasmatron (feat. Phil Campbell | Live Quarantine Version)

レミー・キルミスターがプリントされたクッションが泣かせます。


アンスラックスのイアン・スコットを迎えて。

Sepultura - Cut-throat (feat. Scott Ian - Anthrax - live playthrough | June 17, 2020)

モーターヘッド、メガデス、アンスラックス……いずれも、このブログで真にリアルなメタルバンドとして取り上げてきました。こうした顔ぶれから、セパルトゥラというバンドがワールドワイドな存在であるということだけでなく、信頼に値するアーティストであることが伝わってくるのです。


もう一曲、Trivium のマット・ヒーフィを迎えたSlave New World。

Sepultura - Slave New World (feat. Matt Heafy - Trivium)

おそらくこのタイトルは、Brave New World のもじりでしょう。シェイクスピア劇からの引用で、ハクスリーが書いたディストピア小説のタイトル。それをモチーフにして、アイアン・メイデンやモーターヘッドといった名だたるメタルバンドが曲を作っているというのをこのブログでは紹介してきました。
セパルトゥラは、彼ら一流のセンスで、それを Slave New World=“奴隷たちの新世界”として歌ったわけです。こういうところが、つまりは「ツボをおさえている」ということなのです。


ちなみに、マット・ヒーフィはミドルネームを“キイチ”といい、日本出身のミュージシャンです。生まれは山口県岩国市。
ここで日系の人とコラボしたのはたまたまかもしれませんが……しかしセパルトゥラは、日本に浅からぬ関心をもっているようなふうもあります。

たとえば、日本の和太鼓を取り入れた曲があったりします。
日本の和太鼓集団「鼓童」とコラボした「かまいたち」です。

Kamaitachi


そして、日本への関心ということでは、こんな曲もありました。
Biotech Is Godzilla。ゴジラソングということで、このブログとしてははずすことができません。

Biotech Is Godzilla

どういう経緯でかはちょっとよくわからないんですが、この曲はデッド・ケネディーズのジェロ・ビアフラが制作に加わっているらしいです。
デッド・ケネディーズといえば、パンク/ハードコアの方面でアメリカ代表ともいうべき存在。先述した大物メタルバンドだけでなく、デッド・ケネディーズまでがからんでくる。いかにセパルトゥラがすごい奴らであるかが伝わってこようというものです。

スラッシュメタルのシニシズムと、パンクのラディカリズム……そこに通底する透徹した目。そして彼らは、突き放すシニシズムだけではなく、闘争するアティチュードももっています。
そんな彼らのスタンスが凝縮されたような一曲がGuardians of Earth です。

Sepultura - Guardians of Earth (Official Music Video)

「地球の守護者」というこの歌は、アマゾンの森林破壊を告発する内容。ブラジルのバンドである彼らだからこそでしょう。
MVは、まるでレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンを彷彿させるようなものに仕上がっています。時代を超え、ジャンルを超え、国境を超えるスピリッツ……セパルトゥラは活動を終了しますが、そのスピリッツが消えることはないでしょう。



スリップノットの名曲を振り返る

2024-05-08 21:07:53 | 過去記事

Slipknot - My Plague

先日、BLACK LIVES MATTER運動についての記事を書きました。その記事で、今回の問題について発言しているアーティストたちの名前を揚げましたが、そのなかにスリップノ......


過去記事です。

スリップノットについて書いています。

スリップノットのドラマーであるジェイ・ワインバーグの父親マックス・ワインバーグは、ブルース・スプリングスティーンのバックでドラムを叩いている人だ、ということを書きました。

そのジェイ・ワインバーグなんですが、最近スリップノットを脱退したという話がありました。

なにかもめたのかと思うところですが……どうやらそういうことではなく、円満な脱退だったようです。
そもそもジェイは、子供のころからスリップノットのファンだったということで、ほかのメンバーよりも一回り若く、おそらくサポート的な立ち位置だったのだと思われます。脱退したジェイは新たにスイサイダル・テンデンシーズに加入し、先日来日公演も果たしました。

一方、スリップノットのほうは、後任のドラマーにセパルトゥラのエロイ・カサグランデを迎えています。
みんなお面をかぶっているので顔はわからず、しばらく正体は伏せられていたんですが、あれはエロイ・カサグランデではないのかとファンの間でささやかれおり……先日、公式サイドからもそれを認めるアナウンスがあったらしいです。

エロイは、「別のプロジェクトでキャリアを積むため」としてセパルトゥラを突然脱退していましたが、それはどうやらスリップノットのことだったようです。
セパルトゥラは、40周年を迎える今年、“意識的かつ計画的な死”としてフェアウェルツアー開始を発表していました。それが終わるまで待てなかったのかとも思いますが……まあ、いろいろ事情があったんでしょう。



憲法記念日2024

2024-05-03 22:29:14 | 日記


今日5月3日は、憲法記念日です。

本ブログでは、毎年この日にあわせて、憲法に関する記事をあれこれ書いています。
改憲云々というのはもうずっと前からいわれていて、改憲派の政治家がその気になればとりかかれる状況が近年あるわけですが……先日の補選の結果なんかからすると、今はそれどころじゃないということにもなってきたんではないかと思えます。そして、そう遠くないうちに行われるであろう総選挙の結果次第では、改憲勢力が3分の2を失うことも考えられるでしょう。そうすると、“改憲の機運”というやつも、一気にしぼんでいくことになります。

そんな転換点にある現状は、いうなれば改憲論議の真空状態……ということで、ここでひとつ、憲法というものに関してそもそものところから考えてみたいと思います。

そもそも、憲法とは何か。
いろんな定義の仕方があると思いますが……
私なりにわかりやすくいうと、憲法とは人類の歴史をもとにした“べからず集”です。

人類が数千年の歴史の中で、いろんな失敗をしてきた。その事例に基づいて、こういうことをやったら世の中が不幸になるという教訓を集めて、同じ失敗を繰り返さないようにしようということなのです。

宗教や肌の色で人を差別してはいけない、言論を封殺してはならない、宗教を政治にもちこんではならない――憲法のこうした条項は、それをやったら世の中が不幸になる、人間が良き生をまっとうできなくなる、そういう歴史の教訓に基づいているわけです。
その教訓に背を向けてしまったら、その社会に住んでいる人間が不幸になるのは、ある意味必然といえるでしょう。
こう考えたときに、私が改憲議論で非常に危うく思うのは、いまこの国で改憲を唱えている勢力は、“人類が歴史から得てきた教訓”としての憲法というものに対して否定的であるように見えることです。
そのことを象徴するのは、自民党の改憲草案では現行憲法の97条が削除されているというところでしょう。
日本国憲法97条には、次のようにあります。

 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

この条文はまさに、日本国憲法が人類数千年の歴史を基盤にしているということの表明です。
これは、憲法全体の第十章「最高法規」という章にあたりますが、つまりは、人類の歴史を基盤にしているからこそ憲法は最高法規であるということなのです。
この97条を削除するということは、人類数千年の歴史の教訓に背を向けることにほかなりません。
せっかく、先人が犯した過ちをもとにしてそうならないようにという教えがあるのに、それを無視してしまったら、同じ過ちを繰り返して国民が不幸になるのは自明というものです。

改憲といえば9条のことがフォーカスされがちですが……そこにばかり注目してしまうと、根幹的な部分を見落とすことにもなりかねません。なぜ憲法はそう簡単に変えられないようになっているのか、憲法は誰に向けられたものなのか――せっかくの憲法記念日、そうしたことを深く考えるきっかけにしたいものです。