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東京・春・音楽祭2024:郷古 廉(Vn)&加藤洋之(Pf)+横坂源(Vc)

2024年04月26日 | pocknのコンサート感想録2024
4月19日(金)郷古廉 (Vn)/加藤洋之 (Pf)
~東京・・音楽祭 2024~

東京春祭〈Geist und Kunst〉室内楽シリーズ vol.4 ~色彩と魂 ー 横坂源 (Vc)を迎えて~
東京文化会館(小)

【曲目】
1.ペルト/フラトレス
2.メシアン/主題と変奏
3.ラヴェル/ヴァイオリンとチェロのためのソナタ
♪ ♪ ♪
4.ケージ/夜想曲
5.ケージ/ヴァイオリンと鍵盤のための6つのメロディ
6.武満徹/十一月の霧と菊の彼方から
7.シマノフスキ/「神話」―3つの詩 Op.30
(アンコール)
♪ メシアン/世の終わりのための四重奏曲~ 第8楽章 イエスの不滅性への賛歌

【出演】
Vn:郷古廉/Vc:横坂源(1,3)/Pf:加藤洋之



昨年の東京春祭の室内楽シリーズと同じメンバーによる演奏会を聴いた。昨年同様に20世紀の作品が集められたが、アグレッシブな音楽が多かった前回に比べ穏やかな曲が中心となった今回の演奏会でも、郷古廉の卓越したヴァイオリンが冴え渡った。

郷古のヴァイオリンの音は研ぎ澄まされた透明な美しさが魅力。更に、正確無比な音程と淀みのない音質が、穏やかな音楽では益々効果を示し、揺らぐことのない静かな安定感を作り出した。多用されるハーモニックスでも音質が安定していて、細く昇る線香の煙のような静けさを湛えていた。

ジョン・ケージの音楽では音の粒子がピアノと共に空中を漂う様子が、何ものにも捉われない自由さを連想させ、武満作品は透明なヴァイオリンの調べが淡い色彩や香りを放つ雅やかな空気に包まれた。こうした「静」の魅力に「動」の魅力も加わったのが最後のシマノフスキの「神話」だった。激しく動き回るフレーズでも粗削りになることなく音の末端まで血が通い、色香に富み、妖艶な表情を湛えて伸縮を繰り返しつつ、熱い吐息を振り撒いて行った。加藤のピアノは冷静で敏感にヴァイオリンの息遣いに呼応し、両者の多彩な音色が溶け合った。

冒頭の横坂のチェロによる「フラトレス」で孤高の静けさを伝えたこのリサイタルのアンコールに、メシアンの「世の終わり」を持ってきたところからも、リサイタル全体を「静」の空気でまとめようという郷古のプログラミングへの思いが伝わってきた。そしてその意図に相応しい静謐な雰囲気を湛える演奏会となった。

この演奏会が、僕にとっては今年の東京・春・音楽祭の最終公演となった。室内楽、歌曲、オペラなど8公演を聴いたが、どれもが充実した多彩な内容を楽しめる演奏会だった。この音楽祭は今年で20回目になるとのことだが、今後も益々充実した音楽祭となることを期待したい。

郷古廉 & 加藤洋之+横坂源~ 2023.4.11 東京春祭室内楽シリーズ vol.3~
ブリテン/ヴァイオリン協奏曲(Vn:郷古廉)~2022年6月N響B定期~
コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲(Vn:郷古廉)~日フィル・サントリーホール定期 21.11.5~

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