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「レバノン」の国名、ラテン文字圏&キリル文字圏比較

「レバノン」という国の名前の各言語での言い方を見比べたら、興味深い点を発見した。

英語でLebanon、フランス語やポーランド語ではLiban、イタリア語ではLibano、チェコ語、スロヴェニア語、クロアチア語、ハンガリー語などではLibanon。

上記にあげたラテン文字圏の例に対して、キリル文字圏では「b」の部分が「v」でになる言語が多い。なぜそうなったかというと、ギリシャ語の「Β/β」の発音が/b/から/v/に変わったことと関係している(詳しくはラテン文字圏では「b」、キリル文字圏「v」になる単語も合わせて見てね)。
キリル文字が作られたのは10世紀で、そのころのギリシャ語はすでに「β」を/v/で発音していた。
キリル文字で、/b/の音を表す文字は「Б/б(べー)」でキリル文字アルファベットの2番目、/v/の音を表す文字は「В/в(ヴェー)」(「B/b」に似てるけど「V/v」です)でキリル文字アルファベットの3番目。「Б/б」と「В/в」ともにギリシャ文字の「Β/β」に由来するとされるが、「Б/б」は字形がラテン文字小文字の「b」と似ているのと、2番目ということから、おそらくラテン文字の影響を受けたんじゃないかとも思う。

ギリシャ語で「レバノン」はΛίβανοςで、古代ギリシャ語ではLíbanos(リバノス)現代ギリシャ語ではLívanos(リヴァノス)と発音する。この地名はキリル文字圏にはキリル文字が誕生した後にギリシャ語経由で伝わったと考えられる。

それでは、キリル文字圏における「レバノン」という単語を見ていこう。

ロシア語、ブルガリア語:Ливан(Livan)
ウクライナ語、ベラルーシ語:Ліван(Livan)

一方、バルカン半島西部では、
マケドニア語、セルビア語:Либан(Liban)
というふうに「b」になっている。

モンゴル語:Ливан(Livan)
モンゴル語はかつてモンゴル文字で表記していて、キリル文字が用いられるようになったのは1941年からだが、「v」になっている。

続いて、中央アジアの言語を見ていこう。中央アジアの言語の多くは、アラビア文字→ラテン文字→キリル文字(→ラテン文字)と、使用文字がたびたび変更された。
カザフ語、キルギス語:Ливан(Livan)
タジク語:Лубнон(Lubnon)
アゼルバイジャン語、ウズベク語:Livan
トルクメン語:Liwan
タジク語はアラビア語からの借用だろう。ラテン文字を使用するアゼルバイジャン語、ウズベク語、トルクメン語もかつてはキリル文字を使用していて、その名残で「v」か「w」になっている。

レバノンを含む地中海の東側の地域を指す「レヴァント(Levant)」は、フランス語で「日が昇る」という意味のlevant(ルヴァン)に由来する。フランス語ではルヴァン、英語ではレヴァントと発音する。レバノンと似ているが語源は全く別。レヴァントはロシア語でЛевант(Levant)。レバノンが「v」になるキリル文字圏では特に、レバノンとレヴァントが似ていると感じるでしょうね。

レバノンの首都ベイルート(Beirut, Beyrut, Bayrut, Beyrout, Beyrouth)は、キリル文字圏でも「b」になっている。
ロシア語、ブルガリア語:Бейрут(Bajrut)
でもギリシャ語ではΒηρυτός(現代発音:Virytós ヴィリトス)というふうに「v」になっている。
語源は全く関係ないけど、ベイルートという地名は英語の「bay(湾)+route(道)」を連想する。英語の発音は同じだし、海に面した町だから。

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