先日、名古屋市長である河村たかし宅への放火事件があり、各紙がその記事を掲載した(リンク切れの場合はウェブ魚拓へ http://megalodon.jp/)
「河村たかし市長宅の外でバケツ燃える、放火か 名古屋」(「朝日新聞」 10月27日)
http://www.asahi.com/articles/ASHBW5DPMHBWOIPE01N.html
「器物損壊容疑:名古屋・河村市長宅敷地でバケツ燃える」(「毎日新聞」 10月27日)
http://mainichi.jp/select/news/20151028k0000m040103000c.html
「名古屋市長の自宅兼事務所に放火か…若い男逃走」(「読売新聞」 10月27日)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20151027-OYT1T50167.html
「河村市長宅前で不審火=ごみ箱燃え、男走り去る-名古屋」(「時事ドットコム」 10月27日)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201510/2015102700768&g=soc
「名古屋市長宅で放火か バケツ燃え、男立ち去る」(「共同通信」 10月27日)
http://www.47news.jp/CN/201510/CN2015102701001747.html
上記の記事によれば、容疑者であろう若い男性が立ち去っていることが載せられているが、その動機についてはわからないので、その事については触れられていない。
しかしそのような中で、「産経新聞」の記事のみが他紙とは違う記事内容である。
「南京記憶遺産批判の河村・名古屋市長宅で放火か バケツ燃え 男立ち去る」
http://www.sankei.com/west/news/151027/wst1510270065-n1.html
まず見出しであるが「南京記憶遺産批判の河村・名古屋市長宅で放火か バケツ燃え 男立ち去る」として、ここにあえて「南京記憶遺産批判」とだしている。
記事内容も、「河村市長は平成24年2月、南京事件を否定する発言を行った。今月10日にも、「南京大虐殺文書」の世界記憶遺産に登録を受けて、「いわゆる『南京事件』については、根本から議論があるところである。今回のユネスコ登録は極めて残念であり、政府は速やかに抗議すべきである」とコメントしていた。」とあり、あたかも南京事件記憶遺産を否定する者に対しての動き、つまり、南京事件肯定派による放火事件のように扱っていることである。これは新聞社としてはあるまじきミスリードを誘う記事内容であろう。
現在容疑者はすでに逮捕されている。この事に対する各紙の記事は下記の通りである。
「名古屋市長宅のバケツに火 容疑の少年「両親の仲悪く」」(「朝日新聞」 11月5日)
http://www.asahi.com/articles/ASHC55FQ5HC5OIPE01Q.html
「名古屋市長宅の不審火:19歳逮捕 器物損壊容疑」(「毎日新聞」 11月6日)
http://mainichi.jp/shimen/news/20151106ddm041040149000c.html
「河村・名古屋市長宅のバケツに火、19歳を逮捕」(「読売新聞」 11月5日)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20151105-OYT1T50103.html
「損壊容疑で19歳逮捕=河村市長宅の不審火-名古屋」(「時事ドットコム」 11月5日)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201511/2015110500891&g=soc
「名古屋市長宅の不審火で少年逮捕 19歳、器物損壊容疑」(「共同通信」 11月5日)
http://www.47news.jp/CN/201511/CN2015110501001360.html
そして「産経新聞」は
「河村・名古屋市長宅の放火、19歳の無職少年を逮捕 「母が応援していた。迷惑を掛けたかった」と供述」
http://www.sankei.com/west/news/151105/wst1511050056-n1.html
という記事を掲載しているが、そこに南京事件記憶遺産のことは何も書かれていない。
犯行時、不審な人物が目撃され、その動機内容も何もわからない状態であったが、逮捕された者の証言によると、「両親が不仲でありストレスがたまっていたこと」、「そのストレスのはけ口を母が応援していた河村市長にぶつけたこと」とあり、その犯行動機は個人的なものであったことが分かる。決して南京事件記憶遺産がらみではない。
つまり「産経新聞」は、動機も何も分からない状況時に、あえて南京事件記憶遺産を記事に入れ、読者をミスリードさせている。新聞社がこのようなことを行うのは大きな問題であろう。
ネット上では、この「産経新聞」の記事に煽られたサイト(まとめ含む)やコメントなどが見られる。
ミスリードさせる記事を掲載しておきながら、事実関係は違っていたのだから、通常なら謝罪コメントなどを掲載するはずであるが、「産経新聞」がそのようなコメントを掲載しているのを私は見ていない(私が見落としているだけかも知れないが)。
現在「産経新聞」は「歴史戦」というものを行っており、「朝日新聞」の記事のあり方を批難しているが、上記のような「妄想的な」ミスリード記事を書くことは、他紙を批難できる資格が「産経新聞」にはないことを意味している。
このことは、「産経新聞」による「歴史戦」は、ブーメランとなって自社に帰ってくることとなるであろう。