バレンタイン


それは、大切な人に気持ちを伝える日
そんな日に
もうすぐ40になる女が
頑張っていた
女はクックパッドで検索をして…
コレを作る事にしたらしい
女は、久々にお菓子作りをしたようだが
いい感じに出来上がりそうな手ごたえを感じていた。
寒い部屋がオーブンの余熱でほんのり温かくなる。
女は鼻歌まじりで、オーブンに可愛く出来た
クッキー生地のプレートを入れ焼き上がるのを待った。
部屋中に甘い香りと香ばしい香りが充満し
女は益々嬉しく幸せな気持ちになった。
「ピーピーピー」
焼き上がりの合図を聞きワクワクする気持ちを
必死で抑えて
クッキーが冷えるのを待つ。
冷えるのを待つ間
クッキーを入れる袋を選び
ようやく幸せの瞬間が来た。
女は高まる気持ちでオーブンの扉を開けた
そこには…
想像を覆す衝撃が待っていたのだ。
女は愕然とした。
そこに中1になる娘が帰宅した。
娘は部屋の中の空気が違う事が
すぐさま分かった様で
キッチンに飛び込んで来た。
そして娘も愕然とする。
「どうするの。コレ…。」
それ以上の言葉が出ない娘。
作った女もどうしていいか分からず
娘の顔を見る。
女は、焼けたクッキーを入れるはずだった
可愛い袋を何も言わずにしまい込んで…
呪いのかかった様な顔のクッキーに
女は決意を固めたのであった。
「主人に食べてもらおう。」



