現実逃避妄想
ルルーシュinワンダーランド/その14>
(くそっ)
ルルーシュは心中で毒づくことしか出来ない。悔しいが、確かにその通りだった。
コスプレ好きなカレン似の白騎士に、自分を手篭めにしようとしたジノそっくりな3月ウサギと、その相棒のロイドとうり二つなマッド・ハッター。
本当にろくでもない目に遭った。しかし、一番ひどい目にあわされたのは他でもない、目の前のスザクと同じ顔をしたこのチェシャ猫だ。
「僕はこの世界に顔が広いし、腕もたつよ。君のボディーガードにうってつけだよ」
確かに先ほどの3月ウサギを一撃でのしたほどのやつだ。
そういう点でも、スザクと同じなのだろう。だからこそ余計に不安なのだ。
(もし、スザクと身体的な事まで同じなら、俺は抵抗できない)
いつ何がきっかけでこいつが不埒な振る舞いをするかわからないのに、一緒にいるのは危険だ。何をされるのかわかったものではない。
だからといって、この訳の分からない世界を一人歩きして、無事にいられる気がしない。
(まったく!これじゃ現実世界とちっとも変わらないな)
情けなくて、憤りを感じる。何時だってそうだ。
自分は守られ、与えてもらうばっかりで何一つ返すことが出来ない。
「ルルちゃんってば、頭がいいくせになぁーんにも解ってないのねぇ」
そう言って困ったように笑ったミレイ。
「ルル様がいてくれる。それだけで、私たちは幸せなんです!」
と、力いっぱい言ってくれたのはシャーリー。
「ルルーシュって、ほんとすごいんだぜ。お前は気がついてないんだろうけど」
そんなことを、なんでもないように笑って言ったルヴァル。
「私は・・・ルルーシュ様に救われたんです。ルルーシュ様の一言で私は自信が持てました。だから、本当に感謝しています」
泣きながら言ってくれたのは、ニーナ・・・。
(それは俺の方だ)
こんな自分を必要だと言ってくれた人たち。大切にしてくれる人たち。
「人はそれぞれやるべきことがある。誰にでも必ず、な」
いつだったか、あの金目の魔女が言っていた。
今の俺には、何が出来るのかわからないけれど。
(それをやるには、帰らなければ)
戻らないと。そのためには、多少の困難は受け入れなければならない。だから、こいつの提案は仕方がないんだ。
自分にそう言い聞かせ、ルルーシュは正面から向き合うことにした。
「わかった。お前に任す」
くうっと屈辱的に顔をゆがめ苦しげに吐いたルルーシュの言葉に、猫スザクはぱぁっと顔を輝かせた。そして。
「大好き!ルルーシュ」
「ほわぁ!」
大喜びでルルーシュを抱きしめた。
(まったく、スザクそのものなんだな)
喜び方も、仕草も、そして腕の強さ。
(この体温も、においもスザクと同じ)
でも、別人。だから一刻も早く、本物に会いたい。
(スザクに・・・会いたい)
「俺は先を急いでいる。こんなことをしている場合じゃない」
やんわりとたしなめると、猫スザクは意外にも素直に腕をはずしてくれた。
「了解。じゃあ、公爵夫人のところに行こう」
「公爵夫人?」
ルルーシュの言葉に、碧の目が優しく笑った。
「うん。公爵夫人の家来に、スケジュール管理をしている女の子のウサギがいるんだ。君の探しているコは、その娘かもしれない」
「そうか」
ようやく掴んで手がかりに、ルルーシュは嬉々として瞳を輝かせた。
それを見て猫スザクはまぶしそうに目を細め、そして誘われるようにルルーシュの白い頬にチュッとキスを落とした。
「おいっ」
思わぬ行為にルルーシュは頬を染め慌てて距離をとろうとしたが、猫スザク一瞬早くその細い手首をとらえた。
そしてルルーシュが次の文句を言う前に、大きな手がするりとルルーシュの手を包み込んだ。
「行こう、ルルーシュ」
きゅっと握り締められる。それもまた、スザクと同じ。
(スザク・・・)
「ああ、行こう」
ルルーシュもまた答えるように、ぎゅっと握り返した。
自分を導くその手に、新たに決意をこめて。
(もうすぐ帰るから。待っていてくれ、スザク!)
<つづく>
不思議の国を旅しているルルーシュがだんだん現実世界に近づいています。近づくにつれ、真実にも近づいていってます。
ルルーシュinワンダーランド/その14>
(くそっ)
ルルーシュは心中で毒づくことしか出来ない。悔しいが、確かにその通りだった。
コスプレ好きなカレン似の白騎士に、自分を手篭めにしようとしたジノそっくりな3月ウサギと、その相棒のロイドとうり二つなマッド・ハッター。
本当にろくでもない目に遭った。しかし、一番ひどい目にあわされたのは他でもない、目の前のスザクと同じ顔をしたこのチェシャ猫だ。
「僕はこの世界に顔が広いし、腕もたつよ。君のボディーガードにうってつけだよ」
確かに先ほどの3月ウサギを一撃でのしたほどのやつだ。
そういう点でも、スザクと同じなのだろう。だからこそ余計に不安なのだ。
(もし、スザクと身体的な事まで同じなら、俺は抵抗できない)
いつ何がきっかけでこいつが不埒な振る舞いをするかわからないのに、一緒にいるのは危険だ。何をされるのかわかったものではない。
だからといって、この訳の分からない世界を一人歩きして、無事にいられる気がしない。
(まったく!これじゃ現実世界とちっとも変わらないな)
情けなくて、憤りを感じる。何時だってそうだ。
自分は守られ、与えてもらうばっかりで何一つ返すことが出来ない。
「ルルちゃんってば、頭がいいくせになぁーんにも解ってないのねぇ」
そう言って困ったように笑ったミレイ。
「ルル様がいてくれる。それだけで、私たちは幸せなんです!」
と、力いっぱい言ってくれたのはシャーリー。
「ルルーシュって、ほんとすごいんだぜ。お前は気がついてないんだろうけど」
そんなことを、なんでもないように笑って言ったルヴァル。
「私は・・・ルルーシュ様に救われたんです。ルルーシュ様の一言で私は自信が持てました。だから、本当に感謝しています」
泣きながら言ってくれたのは、ニーナ・・・。
(それは俺の方だ)
こんな自分を必要だと言ってくれた人たち。大切にしてくれる人たち。
「人はそれぞれやるべきことがある。誰にでも必ず、な」
いつだったか、あの金目の魔女が言っていた。
今の俺には、何が出来るのかわからないけれど。
(それをやるには、帰らなければ)
戻らないと。そのためには、多少の困難は受け入れなければならない。だから、こいつの提案は仕方がないんだ。
自分にそう言い聞かせ、ルルーシュは正面から向き合うことにした。
「わかった。お前に任す」
くうっと屈辱的に顔をゆがめ苦しげに吐いたルルーシュの言葉に、猫スザクはぱぁっと顔を輝かせた。そして。
「大好き!ルルーシュ」
「ほわぁ!」
大喜びでルルーシュを抱きしめた。
(まったく、スザクそのものなんだな)
喜び方も、仕草も、そして腕の強さ。
(この体温も、においもスザクと同じ)
でも、別人。だから一刻も早く、本物に会いたい。
(スザクに・・・会いたい)
「俺は先を急いでいる。こんなことをしている場合じゃない」
やんわりとたしなめると、猫スザクは意外にも素直に腕をはずしてくれた。
「了解。じゃあ、公爵夫人のところに行こう」
「公爵夫人?」
ルルーシュの言葉に、碧の目が優しく笑った。
「うん。公爵夫人の家来に、スケジュール管理をしている女の子のウサギがいるんだ。君の探しているコは、その娘かもしれない」
「そうか」
ようやく掴んで手がかりに、ルルーシュは嬉々として瞳を輝かせた。
それを見て猫スザクはまぶしそうに目を細め、そして誘われるようにルルーシュの白い頬にチュッとキスを落とした。
「おいっ」
思わぬ行為にルルーシュは頬を染め慌てて距離をとろうとしたが、猫スザク一瞬早くその細い手首をとらえた。
そしてルルーシュが次の文句を言う前に、大きな手がするりとルルーシュの手を包み込んだ。
「行こう、ルルーシュ」
きゅっと握り締められる。それもまた、スザクと同じ。
(スザク・・・)
「ああ、行こう」
ルルーシュもまた答えるように、ぎゅっと握り返した。
自分を導くその手に、新たに決意をこめて。
(もうすぐ帰るから。待っていてくれ、スザク!)
<つづく>
不思議の国を旅しているルルーシュがだんだん現実世界に近づいています。近づくにつれ、真実にも近づいていってます。