現実逃避妄想
ルルーシュinワンダーランド/その15>
「なぁ・・・本当にここが公爵夫人とやらの館なのか?」
「そうだよ。どうして?」
チェシャ猫なスザクが、不思議そうに振り返った。しかし、この屋敷を前にすれば誰もがそう思わずにいられないと思う。
「だって・・・」
(ぱりー・・・ん)
「あ」
中から聞こえたその音に、思わず声が出てしまった。
まただ。コレで3度目になる。陶器が割れた音。
「一体、中で何をやっているんだ?」
目の前の扉を、ルルーシュは不安げに見つめた。
猫スザクに導かれ、たどり着いた一軒の館。公爵夫人の邸宅だというそれは、いかにも貴族の屋敷といった立派なカントリーハウスだった。
しかし、着いた早々その外観にふさわしくない物音が聞こえてきた。
(ガラガラガッシャーン!)
「・・・・・・」
むうっとルルーシュの眉間にしわが盛大によった。今度は何か金属製品が落ちた音だ。
ここでこれだけ聞こえたのだから、中はさぞかし五月蝿かっただろう。と、妙な心配をしているルルーシュの隣で。
「あーもう!誰も出てこないじゃないか!」
呼び鈴を鳴らしていた猫スザクが、一向に応答のない家人に痺れを切らした。
物音から中に誰かがいるのは確かなのだが。
(それどころじゃないのかもな)ルルーシュはそっと溜息をついた。
それにしても、先ほどから聞こえてくるあの物音は一体なんだろう?
ひょっとして、中で揉め事が起こっているんだろうか。そんなところに入ったら、また厄介なことに巻き込まれるんじゃないか?
とりあえず17通り考えたが、どれもネガティブ方向になった。
(入りたくないな・・・)
導き出された結論、というよりも(目の前の男に比べればあれだが)本能がここは危険だと訴えている。
「しかたがないなぁ」
呼び鈴を鳴らすことをあきらめたスザクが溜息をついて振り返った。
「どうやら中は取り込み中みたいだ」
「ああ、そのようだな」
中の様子が気になるが、あまり関わりたくない。
「困ったな。今日は取り次ぎの従僕も不在みたいだし」
やれやれと首を振る猫スザク。くせっ毛の茶髪が左右にふわふわと揺れて、目を和ましてくれる。
「・・・なんだけど。どうする?ルルーシュ」
「え?」
髪に関心を取られ、話を聞いてなかったルルーシュは目をぱちくりとさせ少し首をかしげた。
その顔がとてもあどけなくて、可愛かったので今度はスザクの目を楽しませる。
くすりと笑われたルルーシュは、話を聞いてなかったことを笑われたと思いムッと小さく口を尖らせた。
(あ、まずい)
ここに着く間でずいぶんいいムードになったのに(@スザク目線)、こんな些細なことで機嫌を損ねるわけにいかない。
この後の計画が無駄になる。
「ほら、もう陽が傾いてきている。この辺りは夜になると真っ暗になるよ?」
内心慌てて、しかし顔には出さずかつルルーシュを逆なでしないよう先ほどと同じ内容をやんわりと伝える。
「あ・・・」
目の前のスザクの邪な思惑などまったく気付いていないルルーシュは、言われた通り辺りを見渡す。
なるほど陽は傾き、辺りを照らす光は柔らかなオレンジ色へと変わっている。
文明的なものがなさそうなここでは、日が落ちれば歩くのは困難になるだろう。
「明るいうちに移動した方がいいよ」
「仕方がないな。今日はあきらめるか」
とにかく、明日には中も落ち着いているだろう(と、願いたい)。従僕とやらも戻っているだろうから、公爵夫人に取り次いでもらいナナリーに会わせてもらおう。
「じゃあ、行こうか。ルルーシュ」
「ちょ、ちょっと待て!」
再び自分の手を取り、歩き出そうとしたスザクを慌てて引き止める。
「行くって、どこへ?」
「うん、僕の家だけど」
「はぁ?!」
<続く>
日曜日は、母と奈良へご飯食べに行くので早めにUPしました。母の日なので孝行します。(プレゼントは先に渡したけど)
ルルーシュinワンダーランド/その15>
「なぁ・・・本当にここが公爵夫人とやらの館なのか?」
「そうだよ。どうして?」
チェシャ猫なスザクが、不思議そうに振り返った。しかし、この屋敷を前にすれば誰もがそう思わずにいられないと思う。
「だって・・・」
(ぱりー・・・ん)
「あ」
中から聞こえたその音に、思わず声が出てしまった。
まただ。コレで3度目になる。陶器が割れた音。
「一体、中で何をやっているんだ?」
目の前の扉を、ルルーシュは不安げに見つめた。
猫スザクに導かれ、たどり着いた一軒の館。公爵夫人の邸宅だというそれは、いかにも貴族の屋敷といった立派なカントリーハウスだった。
しかし、着いた早々その外観にふさわしくない物音が聞こえてきた。
(ガラガラガッシャーン!)
「・・・・・・」
むうっとルルーシュの眉間にしわが盛大によった。今度は何か金属製品が落ちた音だ。
ここでこれだけ聞こえたのだから、中はさぞかし五月蝿かっただろう。と、妙な心配をしているルルーシュの隣で。
「あーもう!誰も出てこないじゃないか!」
呼び鈴を鳴らしていた猫スザクが、一向に応答のない家人に痺れを切らした。
物音から中に誰かがいるのは確かなのだが。
(それどころじゃないのかもな)ルルーシュはそっと溜息をついた。
それにしても、先ほどから聞こえてくるあの物音は一体なんだろう?
ひょっとして、中で揉め事が起こっているんだろうか。そんなところに入ったら、また厄介なことに巻き込まれるんじゃないか?
とりあえず17通り考えたが、どれもネガティブ方向になった。
(入りたくないな・・・)
導き出された結論、というよりも(目の前の男に比べればあれだが)本能がここは危険だと訴えている。
「しかたがないなぁ」
呼び鈴を鳴らすことをあきらめたスザクが溜息をついて振り返った。
「どうやら中は取り込み中みたいだ」
「ああ、そのようだな」
中の様子が気になるが、あまり関わりたくない。
「困ったな。今日は取り次ぎの従僕も不在みたいだし」
やれやれと首を振る猫スザク。くせっ毛の茶髪が左右にふわふわと揺れて、目を和ましてくれる。
「・・・なんだけど。どうする?ルルーシュ」
「え?」
髪に関心を取られ、話を聞いてなかったルルーシュは目をぱちくりとさせ少し首をかしげた。
その顔がとてもあどけなくて、可愛かったので今度はスザクの目を楽しませる。
くすりと笑われたルルーシュは、話を聞いてなかったことを笑われたと思いムッと小さく口を尖らせた。
(あ、まずい)
ここに着く間でずいぶんいいムードになったのに(@スザク目線)、こんな些細なことで機嫌を損ねるわけにいかない。
この後の計画が無駄になる。
「ほら、もう陽が傾いてきている。この辺りは夜になると真っ暗になるよ?」
内心慌てて、しかし顔には出さずかつルルーシュを逆なでしないよう先ほどと同じ内容をやんわりと伝える。
「あ・・・」
目の前のスザクの邪な思惑などまったく気付いていないルルーシュは、言われた通り辺りを見渡す。
なるほど陽は傾き、辺りを照らす光は柔らかなオレンジ色へと変わっている。
文明的なものがなさそうなここでは、日が落ちれば歩くのは困難になるだろう。
「明るいうちに移動した方がいいよ」
「仕方がないな。今日はあきらめるか」
とにかく、明日には中も落ち着いているだろう(と、願いたい)。従僕とやらも戻っているだろうから、公爵夫人に取り次いでもらいナナリーに会わせてもらおう。
「じゃあ、行こうか。ルルーシュ」
「ちょ、ちょっと待て!」
再び自分の手を取り、歩き出そうとしたスザクを慌てて引き止める。
「行くって、どこへ?」
「うん、僕の家だけど」
「はぁ?!」
<続く>
日曜日は、母と奈良へご飯食べに行くので早めにUPしました。母の日なので孝行します。(プレゼントは先に渡したけど)