エレベータの壁にぶつけてしまった。
拳は傷つき、営業所に帰ると、
太川店長は「助、どうしたんだその拳、どうせ飛び込んで怒られて壁でも殴ったんだろう?」
恵之助「・・・」(すごい、図星だ。)
太川店長「助、ちょっと来い。」と車へ乗せられた。
着いた場所は東京タワーだった。
太川店長「助、登ったことはあるか?」
恵之助「いや、ありません。。。」
太川店長「登るぞ。」
二人は展望台まで登った。
太川店長「どうだ、助。建物もちっちゃいなー。車も、人も、ちっちゃいなー。」
恵之助「・・・・」
太川店長「助が飛び込んだビルはあの辺か?ちっちゃいなー。あの中に助の名刺を投げつけた奴がいるんだな。助、ここから見れば、何もかも小さくみえるだろう。」
恵之助「太川店長、ドラマの見過ぎじゃないですか。。。」
太川店長「俺もたまにこうやって上からちっぽけな人つぶを見にくるんだよ。」
恵之助「太川店長がですか?らしくないですね。」
太川店長「助、辞めたいか?」
恵之助「はい。辞めたいです。」
太川店長「そうか。わかった。じゃ今年一杯だけ頑張ってみろ。」
恵之助「今年いっぱいですか。。。。」
太川店長「適当でいいよ。」
恵之助「はい。」
この営業の仕事を辞めるという目処がつき、
恵之助の死んだ魚の目に、少しだけ精気が戻ったのでした。
持ち前の笑顔も少しぎこちないけれど、笑えるようになった
恵之助をみた太川店長は、「助、自分の身体を傷つけるのだけはやめろよ」といい
ふたり社員寮に帰っていった。
つづく。