何も中身がないように感じていた自分に一生懸命金メッキを塗りたくっている感じ。
いつかこのメッキは剥がれてしまうのではないかという恐怖。
バレないように、バレないように懸命に表面上を取り繕う毎日。
恵之助は、そんな恐怖と戦う毎日に疲れきっていた。
その恵之助に救いの手を差し伸べたのが、のちの恵之助の妻・明美(あけみ)だった。
底抜けに明るく、キラキラと瞳を輝かせている。
大胆に笑い、よく食べる。
やることなすこと適当。
時間にはいつもギリギリ。
わーぎゃーといつも騒ぎまくって準備をしている。
小さな虫にも「ぎゃー」となき、「ゴ」が出てこようものならば、この世の終わりとばかりの阿鼻叫喚。
「くそ」
が付くぐらいの真面目な恵之助には、ニュータイプの人物だった。
「これでいいんだ」と、恵之助は明美を見ているだけでホッとした。
いつの間にか、恵之助は、明美にだけは金メッキの鎧を脱いで接することができるようになっていた。
風邪をひき、仕事を休んでいた恵之助に食事を作り、看病をする明美。
その明美の様子を見ていて、恵之助は結婚を決めた。
すっからかんの中身に一生懸命塗りたくった金メッキを明美の前では剥がすことができた恵之助だったが、「すっからかん」の中身じゃダメだ、自分を変えないとダメだ、今のままではダメだ、と自分を変えることに必死になっていった。
明美と一緒に暮らし、幸せな生活を送っている一方で、自分を変えたいという苦しみを抱え続ける恵之助だった。
つづく。