虹パパの日記〜「きれいなおじさんは苦手ですか?」〜

【小説】日の丸恵之助(ひのまる めぐみのすけ)物語〜その27〜

飛び込み営業で名刺を集め、
集めた名刺でテレコール。

これが、商品先物取引会社・三葉商事営業スタイルだった。

八木先輩にくっついて
恵之助は飛び込み営業にでた。

池袋は
雑居ビルだらけ

雑居ビルを見つけては、
最上階に上り、ダダダダダーっと
片っ端から飛び込む。

断られて当たり前。
「また来たか!」
と怒られるのも当たり前。

飛び込み営業に「行ってきまーす!」と出かけた場合、
上司に1時間ごとに電話連絡を入れ、

「お疲れ様です!〇〇です。ペロ〇件、名刺〇〇枚です!」

と報告をする決まりがあった。

ちなみに「ペロ」とは「契約」のことだ。

契約書の紙「ペラ」が「ペロ」に転じたか?
その辺のことはよくわからない。

ペロなんてそう滅多に取れるものではない。
1時間の成果が名刺も0枚と報告しようものなら、
上司の雷が落ちる。。。。

自然と
いかに
上手に
名刺を騙しとれるか・・・

という、言い方はすごく悪いけれども

「名刺を騙し取る」

というのが正しい表現の飛び込み営業をひたすらしなければならなかった。

八木先輩は言葉巧みに
受付の女性を騙し、
「課長」「部長」「社長」
なるべく上の役職の人を誘い出す。

お金を持っている人でないと、
先物取引なんてやってもらえないからだ。

商品先物取引は

「追証(おいしょう)」

と呼ばれる「追い証拠金」が発生する。

商品により決められた幅の値が下がった場合に、
追加で資金を支払わなければならない制度がある。

そのため会社としても、
余剰資金でやってくれるお客さんでないと、
すぐに資金が尽きてトラブルになるから、

「契約は数百万以上で」

という一応の決まりを設けていた。

八木先輩が集めた
役職者の名刺。

社長
取締役

の肩書きの名刺は、
昔集めたビックリマンのキラキラのようだ。

そのような名刺は
大切にとっておき、
時期を見て、
しつこく
しつこく
電話をかけて
本当に稀中の稀に、契約してくれる人がいる。

少なくとも
1年間契約が1件も取れなかった
なんていう先輩はいなかった。

というか、そういう先輩は辞めていったのだろう。

とても自分にできる芸当ではないと思いながら
1ヶ月間、八木先輩飛び込み営業にくっついて、
社会の厳しさ、言葉巧みに人を騙す方法を学んでいく
恵之助であった。

つづく。

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