「退職金の一括投資はNG!」
2024/12/06 06:00 (女性自身)
「30〜40代の働き盛りは自分が60代、70代になるなど想像しにくく、老後の蓄えは常に後回しに。50代も住宅費に加え子どもの教育費がのしかかり、貯蓄まで手が回らないのが実情。60歳にさしかかり貯金がゼロという現実に、これから先の人生をどうしようと、はたと気づく人も少なくありません。
しかし行動変容することで“60歳、貯蓄ゼロ”からでも老後の資産作りは十分に可能です」
と語るのは、ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さん。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(令和5年)によると、60歳代(二人世帯以上)の平均貯蓄額は2,026万円。
貯蓄額ごとの世帯割合を見ると「3,000万円以上」という世帯が20.5%いる一方で、「金融資産非保有」、いわゆる貯蓄ゼロの世帯も21%いる。
■老後資金を作るには「人生100年」を見据えて
60歳、貯蓄ゼロから老後資金を貯めるには、どうすればいいのか? 山中さんに教えてもらった。
「そもそも60歳で貯金がないから大変だと思っている方は、長生きするかもしれないから不安が生じているはず。つまり、少なくとも健康であるからこそ、心もとないと思っているわけです。
ここで“どうせ私は長生きしないから”と思ってもなにも解決しません。“長生きリスク”ではなく、“長生きするチャンス”を得られたと考えることが第一歩です」
厚生労働省が発表した「簡易生命表」(令和5年)によると、60歳まで生きた場合の平均余命は、女性で28.91歳(男性で23.68歳)。
また、90歳を迎える女性の割合は50.1%(男性は26%)にもなる。
老後資金を作るには“人生100年時代”を見据えてプランを練っていくことがポイント。さらに時代も追い風となっている。
「たとえば60歳を過ぎても働ける環境が整いつつあります。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(令和5年)によると、60?64歳の平均賃金は正社員で月349,300円です。
国も、企業に70歳までの就業機会の確保を努力義務として課していることを考えると、今後、シニアになっても勤労収入を得られる環境は整備されていくことでしょう。
また昨今は、お金を眠らせておくと価値が目減りするインフレ時代。今後も続くインフレから生活を守るためには投資で増やしていくことが重要。そこに2024年に登場した新NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などによる投資が効果的にサポートします」(山中さん、以下同)
株式や投資信託などの運用で生まれた利益が非課税になるNISAとiDeCoは資産形成の強い味方。
しかし投資にはリスクがつきものだ。安定運用には「長期・積立・分散」という三原則がある。なかでも「長期」は、60歳からでは遅すぎるのでは……。
「たしかに、とくにNISAは長期にコツコツ運用することが大切。そのため30代、40代の利用者がもっとも多いのです。
しかし2024年1月からは、投資方法が『積立』だけでなく『一括』と併用できることに。
退職金を長期運用する人が増え、60代以降の利用者も急増しています」
■貯蓄ゼロからの資産作りポイントはお金の三段活用
具体的に、貯蓄ゼロからの資産形成法を解説してもらおう。
「ポイントは、お金の三段活用を意識することです。
65歳まではお金を積み立てる『積立期』、75歳までは運用でお金を増やす『運用期』、75歳からはお金の取り崩しを開始する『取り崩し期』にわけてプランを立てていくことです。
東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情」(令和4年)によると、中小企業の退職金の中央値は約1,092万円。この退職金を無計画に散財せずに、老後資金の準備として活用します」
運用法(1)では、退職金をNISAで運用するパターンだ。
「退職金を一括で投資するのはリスクがあるため、毎月20万円ずつNISAで積み立てします。5年間継続すれば投資元本は1,200万円に。積み立てを終了した時点で運用利回り5%で仮定すると資産は1,360万円に。
そのまま10年間運用のみを継続することで、75歳時点での資産は2,000万円以上に。これを運用しながら少しずつ取り崩すと110歳まで資金が枯渇することがありません」
運用法(2)は、65歳まで働いて生活費を確保しながら、その間、退職金を運用し、さらに公的年金の受給繰り下げにより、不足しがちな資金を年金でカバーする方法だ。
「60歳からの5年間は節税もかねてiDeCoでの会社員の掛け金上限である月23,000円を積み立てます。また退職金のうち500万円をNISAで月20万円ずつ積立投資を行います。どちらも5%の運用が可能ならば、75歳時にiDeCoで254万円、NISAで約1,000万円資産を増やすことができます。
また70歳まで就労が可能ならば、公的年金の受給開始時期を70歳まで繰り下げることで、65歳時点の年金額より42%増額。90歳までの受給額は約600万円も多くなります」
就労収入と退職金の積み立てと運用に加え、公的年金の繰り下げを実行することで、1,800万円ほどのメリットの享受が可能になる。
運用法(3)は、70歳までの就労を見込みながら、積み立てを行っていくケースだ。
65?69歳の人の平均賃金は正社員で約31万円(前出『賃金構造基本統計調査』)を参考に、できるだけ働く期間を長くしたケースで試算。
「まず働いて得た収入から、半年から1年分の生活費を準備。病気やけがで働けなくなった場合に備える貯金(生活防衛資金)を確保します。同時に65歳までiDeCoで月23,000円を積み立て、75歳まで運用を続けます。
さらにNISAには退職金を使って60歳時に、まず240万円を一括投資、それに加えて同時に月20,000円を70歳まで10年間積み立てていくことで、iDeCoと合わせて約1,000万円の資金ができます」
貯金ゼロの60歳からスタートしても75歳で約1,000万円に。
あくまでここで紹介した運用法は仮定であり、投資するときは自己判断で行うことだ。
最後に山中さんがこう語る。
「60歳からの資産作りは無理だと諦めている人が少なくありません。しかし『積立・運用・取り崩し』の三段活用を実行する期間を設けることで、資産形成は十分可能です。
まずは75歳の自分をイメージすること。その姿が幸せなものであるためには、何をするべきか見えてきます。iDeCoやNISAを理解したうえで、行動を起こしてほしいです」
貯金が少ないと嘆く前に、前向きに資産形成に動きだそう!
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