6-よくわかんないプライド
ハハはああ見えて、相当な強情張りだと思う。
優しくて温和に見えるけれど、実は違うらしい。
ハハの姪のF美さんが
「あの強い人が」と何かにつけハハを表現するのを聞いて
最初は違和感があったけれど、
この頃はもう、何もかもが思い当たる。
午後から二人で出掛けて帰って来て、
「るかさんも休まい(休みなさい)、疲れたでしょうから。」
と言われた。
・・・きっとハハが休みたいのだ。
ワタシはやりたいことがあるし、さほど疲れてもいないので
「ハイ。」と返事をして、新聞を読んでいた。
ハハは横にならない。
ワタシが横になれば、きっと横になる。
・・・なんでそこ、いつも意地を張るの?
隣で私の読んでいる新聞を覗き込んでいるので
「今日、新聞まだでしたか、よかったらどうぞ。」と渡した。
「そんな、いいよ。・・・脇から見てた」と言いながら
ワタシが他のことを始めたので、受け取って自分の前に広げたが
ほどなくうたた寝。
体が右方向にユラ~~~っと倒れて行く。
・・・寝ればいいのに。
それでもハハの自由だと思い、あえて声をかけずに見守る。
何度もハッ、と起きてはユラ~~~・・・と倒れて行く。
ワタシは顔がニヤけてしまってたと思うが
ハハはそれにも気づかず、睡魔に襲われ、舟を漕ぐ。
しかしとうとう、傾斜は55度くらいになり、
いつ座椅子から転げ落ちるかと気が気でないが
大事に至らずハッ、と目を覚ます。
「大丈夫ですか~~?倒れそうで心配です。
横になったらどうですか。」と言ったが、無視。
ワタシの声を、「誰か来たのかと思った。」なんてごまかすし。
意地でも寝ない。
あのプライド、なんなんだろ。
多分、あそこでワタシが横になれば
「さて、少し横になる。」って自分も寝るんでしょ。
そうは行くか!(意地の張り合い・笑)
ほどなく、またハハがユラ~っとなった時、
そっとその場を離れ、隣のテーブルでPCを取り出した。
ソファーで見えない位置なので、
目を覚ましたらどうするのかな~と楽しみにしていたら
「編み物でもするか。」と言いながらトイレに立って、
(その時ワタシを見つけたと思う)
帰って来てから編み物を始めた。
えっ、えっ、といつものつらそうな息遣い。
たまに「は~あ、」と飽きたように声を出す。
「昼寝はしないから。」というのが、自慢なのか?
いつもうたた寝してるじゃん。
そして
ワタシが横になってあげると、すかさず横になる。
それ、真似っこなの?それとも勝負なの?
ワタシが負けてあげなきゃ、横になれないの?
もう90過ぎてるんだから、
普通そのくらいの年寄りはしょっちゅう横になってるもんでしょ。
自分がそういう年だと言う自覚がない。
ここは賢い嫁になって、
そっとワタシが横になってあげればよかったのだろうけど
ワタシとて毎回毎回そんな気遣いしてらんないよ。
「るかさんも休まい。」って言われるの、ほんと嫌。
嫁を気遣う優しい言葉なんだろうけど、
「なんで道連れにしようとするの~~~~。」って
いつも思っちゃう。
・・・えっ、えっ、と言いながら
ハハは編み物中。
さて、隣に行って、試しに横になってみるかな~
・・・次回に続く。