透明人間たちのひとりごと

桃太郎の家来 <2>

 昔話 「桃太郎」 の家来は、イヌ、サル、キジ ですが、

 桃太郎は何故、イヌとサルとキジを従えて鬼ヶ島に鬼退治
に出掛けたのか

 なかでも、とりわけ、イヌとサルとトリではなく、何故にキジ
なのか … が、どうにも気になるところです。

 では、その具体的な検証に入りることにしましょう。

 先に、『桃太郎の家来 <1>』 のなかで …、

 高名な経営コンサルタントの田辺昇一氏が、「イヌは行動、
サルは企画、そして、キジは情報である。 日本の企業には
行動と企画はあるが、残念ながらキジがない」 と発言された
ことに対して、「実に説得力があった」 と名エッセイストだった
扇谷正造氏が述懐していたことを紹介しましたが、2号
それをベースにして、独自の意見を展開したいと考えます。

 企業経営に限らず何事に際しても、プラン・ドゥ・シーという
言葉がよく用いられますが、プランを立てる前にまずは情報
の収集が必要不可欠であることは言うまでもありません。

 symbol2 情報力とは、人・物・金(天・地・人)に関する必要最大限
  のあらゆるデータの採取とその正確性に尽きます。

 symbol2 企画力とは、綿密なる作戦としての戦略・戦術の立案力
  と情報の分析力を言います。 

 symbol2 行動力とは、作戦を遂行する上での機動性と柔軟性の
  ある組織立った攻撃力を指しています。

 つまり、桃太郎は家来を選ぶ基準として、それぞれの適性
と積極性(ヤル気)を求めたのです。

 では、まず最初に、トリではなくわざわざキジと指名された
情報の担い手ですが、何故、ハトワシツバメではなくて
キジなのか

 この場合(鬼退治)に必要となる情報内容とは、敵の装備
、配備、勢力といった諜報活動および敵情偵察を言います。

 単なる偵察や哨戒だけが目的なら、俯瞰的な要素をもつ
鳥類の他にも、空を飛ぶことのできるものならば何でもいい
ことになりますが、目的地までの安全なルートの確保という
斥候的な側面と役割を無視することはできません。

 その適性を考慮するとバランス的にキジが無難だと言える
のではないでしょうか。

 なぜならば、キジは、およそ時速50~60kmで空を飛び、
飛び上がっては50mも進まないうちに地上に降りて来ます。

 そして、それを何度となく繰り返すのです。

 一見すると丸見えのバレバレのようですが、実は、これが
斥候にはピッタリのはまり役なのです。

 飛ぶのは苦手ですが、走るのは速く Wikipedia によると
スピードガンの測定では、時速32kmを記録したとか …

 もちろん、もっと長い距離を飛ぶことも可能ですし、ケーン
ケーンと自ら鳴き声を発して怪しまれない工夫も凝らします。

 「雉(キジ)も鳴かずば撃たれまい」 も、このケースでは
余計なことではなく、むしろ隠れ蓑効果となっているのです。

 次に、企画力としてのサルですが、キツネタヌキでは
何故いけないのでしょうか

 この場合の企画とは、戦略や戦術の立案と具体的な作戦
の実行指示です。

 目的は鬼退治、そのために、まずキジが必要となる情報を
収集して来ます。 

 その情報をベースに分析をして、作戦を立てるわけですが
、情報の内容によっては、敵を攪乱したり、離間・反間させる
ための謀略活動も時として必要となるでしょう。

 所謂(いわゆる)、スパイ(諜報)活動や忍びの者といった
感じで、若干なりともキジの任務にダブるイメージもあります
が、同時に、戦術や戦略に基づく作戦を立案する参謀として
の役目も兼ね備えていなければなりません。

 キツネはズル賢く老獪ですが、どちらかと言えば面従腹背
の要素をもった巧言令色的な阿諛追従型のようです。

 権謀術数には長じていても、サルのように変幻自在で縦横
無尽の臨機応変型とは違います。

 タヌキは用心深く敏感で賢い動物ですし臨機応変さも変幻
自在度も高いと言えますが、縦横無尽型ではありません。

 たとえ、作戦が一時的に成功しても、どこかに穴があって
なんだかドジを踏みそうですよね …

 いずれにせよ、「キツネに短し、タヌキに長し」、いや失礼
「帯に短し、襷(たすき)に長し」 でしょう。

 つまるところ、やはり機略縦横型のサルが最適なのです。

 最後に、行動力としてのイヌですが、これについては疑問
の余地ははないでしょう。

 単に行動力と言うのなら、一点突破のイノシシでも、素早く
エサを狙うネズミでも悪くはないかもしれません。

 しかし、ここでは、作戦行動です。

 戦略からブレイクダウンされた戦術を確実に実行すること
が前提となる作戦的行動力が必要不可欠なのです。

 イノシシは、文字通りに猪突猛進で、勝手に突っ走っては
味方を危うくしてしまう恐れがあります。

 ネズミは、細心かつ巧妙なうえに大胆不適なところもあり、
賢くて、すばやく能動的ですが、自己中心的で指示や命令を
無視しがちです。

 むしろ、ネズミは、サルの配下で作戦の立案や諜報活動に
従事した方が能力を発揮しそうですね。

 その点、イヌは忠実で指示命令を遵守し、統制力にも優れ
、思慮分別もあり、組織的です。

 実行(実働)部隊の部下として、これほど頼りになる存在は
ないでしょう。

 主人のためなら一心不乱に全身全霊を傾けて尽くす姿は
感動的ですらあります。

 イヌは人間の友と言うよりもパートナーでしょう。

 いざと言うときに限らず最も身近で役に立つ仲間と言えば
イヌをおいて他にありません。

 行動力ばかりではなく、忠誠心(ロイヤリティー)は絶大で、
裏切りなどは到底考えられません。

 例えて言えば、軍用犬、警察犬、麻薬犬、盲導犬、聴導犬
、介助犬、災害救助犬、牧羊犬、牽引犬(犬ぞり用)等々 …
ありとあらゆる分野でイヌは活躍しています。

 つまり、補佐役としても、100点満点の家来でしょう。

 さて、これで家来も揃い、いよいよ鬼ヶ島に征伐に向かう
わけですが、まったく問題がないとは言い切れません。

 個々の適性を重視し、仲間としてチームを組織しましたが、
チーム内での関係(リレーション)はどうでしょうか。

 情報収集役のキジは、敵情視察に忙しく、常時チーム内に
留まっていることがなく、仮に必要に応じて合流したとしても
性格的に穏やかで、摩擦を招くタイプではありません。

 問題は、作戦参謀のサルと実行部隊のイヌです。

 彼らは、俗に犬猿の仲(間柄)と言われるように非常に仲が
悪いのです。

 それも、そのはずで、情報から推し量っての戦略・戦術とは
言え、机上で作成される作戦の中には空理空論的な要素が
多分にあり、およそ現実的ではない場合が多いのです。

 実行部隊のイヌとしては、現実味のある実効性を常に要求
しますので、どうしても衝突してしまいます。

 そこで、桃太郎の出番です

 彼は、困難な局面の打開を意図したコペルニクス的転回
を想起させ、実効力のある実現可能な戦術や作戦を上奏
するように参謀役のサルを誘導し要請をします。

 すると、それまでは、非現実的で達成不可能であった任務
(ミッション・インポッシブル)が改良され、困難ではあっても、
決して実現不可能ではない作戦任務(ミッション・ポッシブル)
となって、イヌに伝えられるようになるのです。

 かくして、

 キジ の的確なる情報をもとに、サル の卓越した作戦
が練られ、イヌ の献身的な働きと 桃太郎 の卓抜した
手腕をもっての大征伐が行われ、さしもの鬼ヶ島の鬼たちも
降参したのでした。   (めでたし、めでたし … )

  ― 以上 ―  透明人間1号 さん執筆の小冊子、

 「エイドクルーフィールドサービス講座」
   No.15  『桃太郎の家来たち』  より、

 いくつか、適宜に抜粋して引用させていただきました。


 「ちょっと、待った~」 par par

 おっと、誰かが叫んでいます

 異論、反論、objection(オブジェクション)です。

 なにやら、透明人間5号 が反論をしたい様子ですが
、如何せん、もう時間も紙幅もありません。

 次回、『桃太郎の家来 <3>』 での反論の展開を
期待することにして、きょうはこの辺で終わりにします。

 それでは、また、

 symbol3kirakira2お会いしましょう

コメント一覧

透明人間2号
もっともな疑問です。
特定の技術や技能を選別していくとなると、ムダなストーリーを描き足さねばならず、小説ならともかくも、子供向けの童話には不向きだからでしょう。
さすらいの無名人
なるほど、キジが偵察機とは、妙に納得。
でも、およよ氏の言うように、きびだんご欲しさに彼らから志願してきたのはどう説明するんだろう?
およよ
なるほど、納得の家来選抜に拍手 ・・・
でも、募集して選んだわけじゃなくて、彼らの方から
「家来にしてください」って言ってきたんだよね?
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