歯科技工管理学研究

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歯科技工士・岩澤 毅

厚生白書(昭和51年版)

1976年08月31日 | 基本・参考
白書データベース

http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wp/index.htm


書名・件名 厚生白書(昭和51年版)
副書名 婦人と社会保障
編集者・監修者 厚生省
   所在地 東京都千代田区霞ヶ関1-2-2
   国名 日本
   郵便番号 100-0013
   電話番号等 03(3503)1711
発行日 平成51年11月
発行日 昭和51年11月

http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpaz197601/

各論
第1編 健康の確保と増進
第3章 医療保険
第1節 医療保険制度の動向
2 診療報酬問題

http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpaz197601/body.html

(1) 診療報酬
 医療保険制度における診療報酬は,厚生大臣が中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)に諮問の上決定し,具体的には「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(厚生省告示,以下「点数表」という。)に定められ,これに従い算定される。点数表には,一般医科の保険医療機関が選択する甲点数表,乙点数表,歯科の保険医療機関の歯科点数表及び保険薬局の調剤報酬算定表の4表が定められている。各点数表には,医療行為ごとに点数で評価された数百の項目があり,これに1点単価(現行10円)を乗じて診療報酬を算定する仕組み(ただし,調剤報酬算定表は金額表示)となっている。

 診療報酬は,40年以降51年4月改正まで9回にわたって改定されたが,51年4月の改正は,49年10月の改正後約1年半を経過したことにかんがみ,この間の国民の経済力を勘案しつつ,物価,人件費の変動に対応させるとともに,医療技術の進歩に診療報酬を即応させる必要から,3月17日中医協に対し諮問(医科医療費の9.0%増,歯科医療費の9.6%増及び調剤医療費の4.9%増)を行い,3月23日歯科診療報酬を除く答申を得て4月1日から改正を行った。この改正に当たっては,医師等の技術料の適正な評価を図るという従来からの基本方針に沿って,一率的点数引上げを極力避け,医療実態,技術及び診療の難易度に対応した引上げを行うとともに,診療行為間,診療科間のアンバランスの是正を図ることとした。医科における主な改正項目は,初診料,時間外加算等,レントゲン診断,注射,処置,理学療法,精神病特殊療法,入院時医学管理料,室料及び給食料であるが,このほか,乳幼児加算の新設又は引上げによる小児診療の改善,救急医療体制に対応した時間外加算等の大幅引上げ並びに顕微鏡下手術,冷凍凝固法の導入等を図ったところであり,調剤薬局については,内服薬計量混合加算の新設,調剤基本料及び内服薬調剤料等の引上げを図った。

 また,歯科診療報酬については,51年7月28日,日本歯科医師会推せん委員が復帰して再開された中医協において諮問事項の一部修正を含む諮問どおりの答申を得て8月1日から改正したが,今回の改正においてば,歯科診療独自の技術料である歯牙疾患の処置料,吸入鎮静法,多数歯欠損における有床義歯及びリベース等の是正を図るとともに,乳幼児又は心身障害者の加算及び診療手当の改正及び鋳造歯冠修復における全部鋳造冠加算の新設等を図り,あわせて甲点数表と同一取扱い項目については甲点数表と同様の取扱いとした。


(2) 薬価基準

 投薬,注射等に使用する薬剤の価格については,厚生大臣が定める「使用薬剤の購入価格(薬価基準)」によることとされており,薬価基準価格は,薬価調査に基づく90%バルクライン価格(当該医薬品について全体の90%の量を医療機関が購入し得る価格)をもって定められている。

 最近の薬価基準は,49年4月を対象とした薬価調査の結果に基づき50年1月に全面改正が行われた(薬剤費に対して1.6%の引下げ)が,その後同年4月から51年9月までの間に医薬品再評価,医薬品の新規収載及び第9改正日本薬局方の制定等に伴い11回の一部改正が行われ,51年9月1日現在の薬価基準収載品目数は経過措置品目を除いて,7,221品目(内用薬3,781品目,注射薬2,392品目,外用薬857品目,歯科用薬剤191品目)となっている。なお,51年2月10日の中医協において,現行の薬価基準に収載されている医薬品のうち統一限定品目については,次回の薬価基準全面改正から銘柄別収載方式を採り,かねてから問題とされていた薬価基準価格と市場価格とのかい離の是正,医薬品流通市場の適正化,薬剤の多用化傾向の是正等を図ることとなった。


(3) 中医協の審議

 49年12月以降厚生省関係審議会から診療担当者側委員が一斉辞退したため,中医協もその機能を停止していたが,関係委員の復帰に伴い50年9月9日中医協が再開された。しかし,支払者側委員と診療担当者側委員との意見の対立から再度審議が中断したが,関係者の努力により51年2月10日中医協が再開された。この総会において厚生大臣は,懸案となっている医療経済実態調査及び薬価調査を同年5月に実施することについての協力要請及び了承を求め各側委員の賛同を得るとともに,「前回の診療報酬の改正から既に1年有余を経過し,中医協再開の目途のたたないまま51年予算編成期を迎えたため,9.1%の診療報酬の改定を予算案に盛り込むことの止むなきに至った。診療報酬の改正は,国民医療を確保するという観点から早急に3月1日から改正したい。(要旨)」と表明した。同日の全員懇談会から診療報酬改正に関する審議が開始されたが,各側委員の意見が一致せず3月1日の改正に間に合う答申は得られなかった。

3月15日の審議においては,歯科差額問題に関する意見の対立から日本歯科医師会推せん委員2名の退席があったが,審議を行うための定数に達していたので審議を継続した。同月17日厚生大臣は診療報酬改正に関する諮問を行い,これを受けた中医協は同月23日歯科診療報酬を除く診療報酬の改正を4月1日から実施するものとして了承する旨の答申を行った。

 答申の保留された歯科診療報酬の改正については,7月28日の日本歯科医師会推せん委員の復帰により再開された中医協において,先の諮問事項の一部修正を含む改正案の審議が行われ,同日,中医協は歯科診療報酬の改正を8月1日から実施するものとして了承する旨の答申を行った。


(4) 歯科差額問題

 通常必要とする歯科治療は,保険診療で受けられることになっているが,14金を超える金合金,白金加金及び陶材を用いたり,特殊な補綴等を希望する場合は,保険とは別の費用を必要とするいわゆる差額徴収治療が認められてきた。この差額徴収治療については,一部に取扱いの適正を欠く事例が見受けられたので,49年3月差額治療の範囲,要件等について都道府県知事に通知し,また,49年10月9日中医協に対し「保険診療における歯科領域の差額問題に関し」諮問を行った。この諮問を受けた中医協は,同年11月歯科部会を設け,この問題を審議することとなった。しかし,その審議は,委員の辞任届の提出により一時中断し,ようやく51年2月10日中医協が再開された。その後,2月25日には歯科差額問題についての「日医側の意見」が日本医師会推せん委員から提出され,3月11日には歯科部会長から歯科部会の審議経過について中間報告を行い,この問題は診療報酬改正の審議と関連して,全員懇談会において審議された。この審議においては,特に,42年中医協の建議と現行行政の取扱いの異なっていることが論議となった。そして3月15日の全員懇談会において,日本歯科医師会推せん委員2名は歯科差額問題に対する日本歯科医師会の見解を表明するとともに審議に協力できないとし退席し,以降7月28日までの間の総会及び全員懇談会には欠席した。しかし,中医協は,前述のとおり審議を継続し,同月23日次のとおり答申を行った。

 『昭和49年10月9日厚生省発保第81号をもって諮問のあった保険診療における歯科領域の差額問題に関し,次のとおり答申する。

1. 歯科の差額徴収は,歯科材料費のみに限ること。

2. このため,従前の差額徴収に関する局長,課長通達は廃止し,新たな取扱いを通達すること。

3. 昭和42年11月17日以降の高度の技術を伴う新開発技術点数等の設定は,3か月を目途として措置すること。』

 この答申の趣旨を実施するため関係者と折衝を重ね,6月29日,従来の歯科差額徴収に関する通知を7月31日限りすべて廃止することを通知し,その後,7月27日には,歯科領域における差額徴収は答申の趣旨を基本方針とするものであること,中医協の答申のうち,使用した歯科材料費の差額徴収の実施は,所要の諸条件の整備を待つ必要があり,それまでの間は当面の措置として,まず,従来の差額徴収に関する通知を廃止したものである旨この廃止の趣旨について通知し,更に同月29日廃止に伴う経過措置等について通知した,これにより本年8月1日から歯科の差額徴収治療は廃止された。なお,前述の「所要の諸条件の整備」について,7月28日の中医協において引き続き審議を行うこととなった。一方,歯科保険診療における苦情の相談については,従来どおり都道府県保険課,国民健康保険課,社会保険事務所,健康保険組合,市町村等各保険者における苦情相談窓口で行っているが,他方,日本歯科医師会においても7月24日保険給付外診療の料金の自粛措置等を決め,会員の指導に当たっている。


(5) 診症報酬請求事務の簡素化

 医療機関及び薬局の診療報酬請求事務については,従来から社会保険医療と公費負担医療が組合せで行われた場合の簡素化が望まれていたが,51年8月2日及び7日付官報をもって「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令」等を公布するとともに,同月7日にその施行について通知し,51年10月診療分から新様式による請求が実施されることになり,社会保険及び公費負担医療制度の診療報酬請求事務の簡素化が図られた。

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