日本歯科技工学会雑誌第29巻 特別号
第4回国際歯科技工学術大会
第30回日本歯科技工学術大会
プログラム*講演抄録
演題番号 2H 1030
発表日11月22日(土) 発表時間10:30~11:30
テーブルクリニック
座長 保田義雄(和歌山県技 認定士)
130
歯科技工管理学の展開(第1報)
政策過程研究-平成20年歯科診療報酬改定を事例として
A study of management and political knowledge for dental technicians - Examples of the revised medical service fee in 2008
岩澤 毅
秋田県歯科技工士会
Iwasawa Tsuyoshi
Akita D.T.A
For revising medical service fee, “Time-Study Survey on Dental Technology” by Nippon Academy of Dental Technology served as data for revision of category scores of dental technology in 12th division, and “Time-Study Survey on Dental Treatment (Outpatients)” by Japanese Association for Dental Science served as data for that of category scores of dental practice.
We confirmed dental technology management and political process study contribute to faculty formation to increase political capacity of dental-technology-related persons and to dissolve economic problems that served as base of improved and stabilized dental practice and dental technology.
A.目的
歯科技工と歯科技工士を社会科学・人文科学分野等の視点から分析しかつ広義の歯科技工学の一領域を形成する歯科技工管理学・政策過程研究の可能性を,平成20年歯科診療報酬改定を事例に検討を行なう.
B.方法
著者は,日本歯科技工学会(以下本会)第28回学術大会において,健康保険法による社会保険歯科診療における「保険歯科技工士」の不存在と,歯科点数表第十二部歯冠修復及び欠損補綴「通則の5」の健康保険制度内での内在論理の解明を行った.
第29回大会において本会「歯科技工のタイムスタディ調査」を利用した診療報酬改定への応用指針の検討を行った.
本稿においては,中央社会保険医療協議会(以下中医協)資料および議事録の分析と,平成20年改定に関する田辺の論考(注1)の批判的検討から,平成20年歯科診療報酬改定への本会前出調査の影響を分析する.
C.結果および考察
平成18年改定より,医・歯・薬学等専門学会からの技術評価,再評価意見を基本に診療報酬改定の論議(注2)をすることとなった. 田辺は,今次改定の歯冠修復・欠損補綴の係る技術料の見直しに関し,「2005年・日本歯科医学会」「歯科診療行為(外来)のタイムスタディ調査」と中医協の議論の影響により,支台築造印象20点とテンポラリークラウン30点が新設されたとするが,なぜ2006年改定に反映されず今次改定に影響を与えたかの合理的説明が無い.
また田辺は,これらの項目の改定を「保険医協会・保団連が常に」「長年の粘り強い運動が成果」とするが,なぜ2008年改定に至り実現したかの因果関係に対する合理的説明が無い.
野首(注3)は「診療項目の所要時間と社会保険歯科診療報酬との関係をみるために,所要時間1分あたりの保険点数を算出しました.このデータから各診療項目の評価,点数に対する技術度の反映程度,あるいは,これらの診療項目が組み合わされて完結する症例治療としての評価,考察も合わせて行いました.その結果,ドクターフィー とホスピタルフィーの総合的な分析が必要であるという結論に達しました.特に,歯科 においては独特の診療器材,材料費,技工料等々のホスピタルフィーが複雑に影響していますので,タイムスタディのみでは,社会保険歯科診療報酬の評価は容易でないという考察をしました.」としている.
日本歯科医学会による調査(2004年版 平成17年3月)は,その調査資料および調査方法として,2.調査方法4)診療時間の測定と評価の「(5)診療中に必要となる技工作業についてもチェアタイムに付随するものとして測定した.なお通常の内注,外注技工時間はともに測定の対象外とした」と明記する.技工分野は調査されていない.ここに,本会「歯科技工のタイムスタディ調査」の存在理由と必要性がある.
今次数改定において,メタルコアー,金属裏装ポンティク(ダミー) ,局部義歯の少数歯欠損等の評価を是正する資料は,本会「歯科技工のタイムスタディ調査」による第12部内の歯科技工と密接に係る各区分点数間の作業時間の相対的な比較資料であった.
本会「歯科技工のタイムスタディ調査」は,第12部内の歯科技工と密接に係る各区分点数の改定の資料となったことが確認された.歯科技工を担う歯科技工士を主な構成員とする本会は,診療報酬の評価に資する根拠ある資料提供を担うべき役割を持つことが明らかになった.
D.結論
歯科技工管理学の研究は歯科医療と歯科技工の供給体制の安定を図るために不可欠の要素となる. 歯科技工管理学・政策過程研究は,関係者の政策形成能力を高め,歯科医療と歯科技工の質の向上と安定を図る基礎となる経済問題等の解決のための能力基盤形成に資するものと考える.
(注1)田辺隆:論考 歯科技術料の変遷と08年診療報酬改定の評価,今後の課題,月刊保団連,2008.7,No.976,54~59
(注2)医療技術の評価・再評価係る希望書提出について(事務連絡):厚生労働省保険局医療課,平成17年1月15日
(注3)平成17年5月18日開催:中央社会保険医療協議会・医療技術評価分科会議事録
参考文献
1)岩澤毅:社会保険歯科診療点数と歯科技工の法的位置-法令の構造の考察を中心として,日本歯科技工学会雑誌,28:135~139 2007
2)井部俊子ほか:看護管理学習テキスト(8)看護管理学研究,日本看護協会出版会,2004
3)見藤隆子ほか:看護職者のための政策過程入門, 日本看護協会出版会, 2007
4)外科系学会保険委員会連合:手術報酬に関する外保連試案(第7版),2007
http://www2.convention.co.jp/4thicdt/index.html
学会名称
第4回国際歯科技工学術大会
第30回日本歯科技工学会学術大会
会期
平成20年
11月21日(金) 11:00~18:00
11月22日(土) 9:30~20:00(18:30~20:00 ウェルカムパーティー)
11月23日(日) 9:30~17:30
大会テーマ
世界に発信!日本の歯科技工 - 審美修復・インプラント治療そして教育 -
開催場所
大阪国際会議場(グランキューブ大阪)
〒530-0005 大阪市北区中之島5-3-51
TEL:06-4803-5555(代)
http://www.gco.co.jp/
オフィシャル言語
英語・日本語
内容
開会式・基調講演・特別講演・シンポジウム・招聘講演
デモンストレーション(賛助会員)・ランチョンセミナー(賛助会員)
テーブルクリニック(会員)・ポスター発表(会員)
テクニカルコンテスト(会員)・デンタルショー(企業展示)
ウェルカムパーティー(リーガロイヤルホテル)
閉会式・表彰式
第4回国際歯科技工学術大会
第30回日本歯科技工学術大会
プログラム*講演抄録
演題番号 2H 1030
発表日11月22日(土) 発表時間10:30~11:30
テーブルクリニック
座長 保田義雄(和歌山県技 認定士)
130
歯科技工管理学の展開(第1報)
政策過程研究-平成20年歯科診療報酬改定を事例として
A study of management and political knowledge for dental technicians - Examples of the revised medical service fee in 2008
岩澤 毅
秋田県歯科技工士会
Iwasawa Tsuyoshi
Akita D.T.A
For revising medical service fee, “Time-Study Survey on Dental Technology” by Nippon Academy of Dental Technology served as data for revision of category scores of dental technology in 12th division, and “Time-Study Survey on Dental Treatment (Outpatients)” by Japanese Association for Dental Science served as data for that of category scores of dental practice.
We confirmed dental technology management and political process study contribute to faculty formation to increase political capacity of dental-technology-related persons and to dissolve economic problems that served as base of improved and stabilized dental practice and dental technology.
A.目的
歯科技工と歯科技工士を社会科学・人文科学分野等の視点から分析しかつ広義の歯科技工学の一領域を形成する歯科技工管理学・政策過程研究の可能性を,平成20年歯科診療報酬改定を事例に検討を行なう.
B.方法
著者は,日本歯科技工学会(以下本会)第28回学術大会において,健康保険法による社会保険歯科診療における「保険歯科技工士」の不存在と,歯科点数表第十二部歯冠修復及び欠損補綴「通則の5」の健康保険制度内での内在論理の解明を行った.
第29回大会において本会「歯科技工のタイムスタディ調査」を利用した診療報酬改定への応用指針の検討を行った.
本稿においては,中央社会保険医療協議会(以下中医協)資料および議事録の分析と,平成20年改定に関する田辺の論考(注1)の批判的検討から,平成20年歯科診療報酬改定への本会前出調査の影響を分析する.
C.結果および考察
平成18年改定より,医・歯・薬学等専門学会からの技術評価,再評価意見を基本に診療報酬改定の論議(注2)をすることとなった. 田辺は,今次改定の歯冠修復・欠損補綴の係る技術料の見直しに関し,「2005年・日本歯科医学会」「歯科診療行為(外来)のタイムスタディ調査」と中医協の議論の影響により,支台築造印象20点とテンポラリークラウン30点が新設されたとするが,なぜ2006年改定に反映されず今次改定に影響を与えたかの合理的説明が無い.
また田辺は,これらの項目の改定を「保険医協会・保団連が常に」「長年の粘り強い運動が成果」とするが,なぜ2008年改定に至り実現したかの因果関係に対する合理的説明が無い.
野首(注3)は「診療項目の所要時間と社会保険歯科診療報酬との関係をみるために,所要時間1分あたりの保険点数を算出しました.このデータから各診療項目の評価,点数に対する技術度の反映程度,あるいは,これらの診療項目が組み合わされて完結する症例治療としての評価,考察も合わせて行いました.その結果,ドクターフィー とホスピタルフィーの総合的な分析が必要であるという結論に達しました.特に,歯科 においては独特の診療器材,材料費,技工料等々のホスピタルフィーが複雑に影響していますので,タイムスタディのみでは,社会保険歯科診療報酬の評価は容易でないという考察をしました.」としている.
日本歯科医学会による調査(2004年版 平成17年3月)は,その調査資料および調査方法として,2.調査方法4)診療時間の測定と評価の「(5)診療中に必要となる技工作業についてもチェアタイムに付随するものとして測定した.なお通常の内注,外注技工時間はともに測定の対象外とした」と明記する.技工分野は調査されていない.ここに,本会「歯科技工のタイムスタディ調査」の存在理由と必要性がある.
今次数改定において,メタルコアー,金属裏装ポンティク(ダミー) ,局部義歯の少数歯欠損等の評価を是正する資料は,本会「歯科技工のタイムスタディ調査」による第12部内の歯科技工と密接に係る各区分点数間の作業時間の相対的な比較資料であった.
本会「歯科技工のタイムスタディ調査」は,第12部内の歯科技工と密接に係る各区分点数の改定の資料となったことが確認された.歯科技工を担う歯科技工士を主な構成員とする本会は,診療報酬の評価に資する根拠ある資料提供を担うべき役割を持つことが明らかになった.
D.結論
歯科技工管理学の研究は歯科医療と歯科技工の供給体制の安定を図るために不可欠の要素となる. 歯科技工管理学・政策過程研究は,関係者の政策形成能力を高め,歯科医療と歯科技工の質の向上と安定を図る基礎となる経済問題等の解決のための能力基盤形成に資するものと考える.
(注1)田辺隆:論考 歯科技術料の変遷と08年診療報酬改定の評価,今後の課題,月刊保団連,2008.7,No.976,54~59
(注2)医療技術の評価・再評価係る希望書提出について(事務連絡):厚生労働省保険局医療課,平成17年1月15日
(注3)平成17年5月18日開催:中央社会保険医療協議会・医療技術評価分科会議事録
参考文献
1)岩澤毅:社会保険歯科診療点数と歯科技工の法的位置-法令の構造の考察を中心として,日本歯科技工学会雑誌,28:135~139 2007
2)井部俊子ほか:看護管理学習テキスト(8)看護管理学研究,日本看護協会出版会,2004
3)見藤隆子ほか:看護職者のための政策過程入門, 日本看護協会出版会, 2007
4)外科系学会保険委員会連合:手術報酬に関する外保連試案(第7版),2007
http://www2.convention.co.jp/4thicdt/index.html
学会名称
第4回国際歯科技工学術大会
第30回日本歯科技工学会学術大会
会期
平成20年
11月21日(金) 11:00~18:00
11月22日(土) 9:30~20:00(18:30~20:00 ウェルカムパーティー)
11月23日(日) 9:30~17:30
大会テーマ
世界に発信!日本の歯科技工 - 審美修復・インプラント治療そして教育 -
開催場所
大阪国際会議場(グランキューブ大阪)
〒530-0005 大阪市北区中之島5-3-51
TEL:06-4803-5555(代)
http://www.gco.co.jp/
オフィシャル言語
英語・日本語
内容
開会式・基調講演・特別講演・シンポジウム・招聘講演
デモンストレーション(賛助会員)・ランチョンセミナー(賛助会員)
テーブルクリニック(会員)・ポスター発表(会員)
テクニカルコンテスト(会員)・デンタルショー(企業展示)
ウェルカムパーティー(リーガロイヤルホテル)
閉会式・表彰式