結論:
歯科技工士資格試験において実技試験は重要な技能評価法として、国家資格の試験としてふさわしい客観的評価基準が担保されたものでなければならない。そこで今回、歯科技工士養成機関の学生120名を対象に模擬的資格試験を実施、所属の異なる評価者4群28名によって採点評価を行い、評価方法および評価者の違い、合格基準、実技試験評価と学内成績との関連性などについて検討した.その結果、以下のような知見を得た.
1. 試験課題別および評価者群別にみて、概略的評価合計値と細分化評価合計値は相関していることが明らかとなった。
2. 概略的評価および細分化評価の評価値における評価者群間比較によって、概略的評価において臨床系歯科医師の評価者群以外は類似した評価値であることが明らかとなったが、細分化評価においては評価者群間で相違があることが明らかとなった。
3. 概略的評価における各評価者群評価精度は試験課題によって異なっていたが、大学および歯科技工士専門学校の教員群の評価は他の群より良好な精度であることが明らかとなった。
4. 概略的評価と細分化評価の構造解析から各評価者群が概略的評価において細分化評価における各評価項目に依存する度合いに差があること差があることが明らかとなった。
5. 概略的評価における評価者内のばらつきは認められるが、評価に大きな影響を与えるものではないことが明らかとなった。
6. 評価者群間の評価所要時間の比較において大学および歯科技工士学校教員の評価群の所要時間は、臨床系歯科医師および歯科技工士の評価群に比較して短時間であり、またばらつきが少ない傾向にあった。
7. 概略的評価総合計評価値において、歯科技工士学科学生の学内成績上位者の評価値は中位者および下位者より高点で有意の差が認められたが、歯科技工士専攻科学生の学内成績と試験評価値との間には有意の差は認められなかった。また、いずれの評価群においても受験者全体の評価値は歯科技工士専攻科学生のほうが歯科技工士学科学生より高い評価値を示した。
8. 合格基準を総合計点数の60%とした場合、不合格率は評価者群よって異なり、臨床系歯科医師の不合格率はその他の評価者群に比較して高かった。また、いずれの評価者群においても歯科技工士専攻科学生の不合格率は歯科技工士学科学生より著しく低かった。さらに、いずれかの試験課題に評価値が最低点を含む場合を不合格とする合格基準を設定した場合、不合格率は比較的高くなることが明らかとなった。
以上の結果から、歯科技工士資格試験の実技試験評価にあたっては、評価精度ならびに時間的要素から複数の評価者による段階的評価法による概略的評価が望ましく、評価者は十分なトレーニングと評価項目に対する理解と評価レベルの確認を行うことが重要であり、合格基準の設定にあたっては十分な配慮が必要で、不合格者に対しては複数の評価者による再評価の必要性が明らかとなった。さらに学内成績で資格試験の実技評価は困難であり、実地試験による技術評価の重要性が示唆された。
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更新日 -
研究報告書
ファイルリスト 200301061A0001.pdf 200301061A0002.pdf 200301061A0003.pdf
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歯科技工士資格試験において実技試験は重要な技能評価法として、国家資格の試験としてふさわしい客観的評価基準が担保されたものでなければならない。そこで今回、歯科技工士養成機関の学生120名を対象に模擬的資格試験を実施、所属の異なる評価者4群28名によって採点評価を行い、評価方法および評価者の違い、合格基準、実技試験評価と学内成績との関連性などについて検討した.その結果、以下のような知見を得た.
1. 試験課題別および評価者群別にみて、概略的評価合計値と細分化評価合計値は相関していることが明らかとなった。
2. 概略的評価および細分化評価の評価値における評価者群間比較によって、概略的評価において臨床系歯科医師の評価者群以外は類似した評価値であることが明らかとなったが、細分化評価においては評価者群間で相違があることが明らかとなった。
3. 概略的評価における各評価者群評価精度は試験課題によって異なっていたが、大学および歯科技工士専門学校の教員群の評価は他の群より良好な精度であることが明らかとなった。
4. 概略的評価と細分化評価の構造解析から各評価者群が概略的評価において細分化評価における各評価項目に依存する度合いに差があること差があることが明らかとなった。
5. 概略的評価における評価者内のばらつきは認められるが、評価に大きな影響を与えるものではないことが明らかとなった。
6. 評価者群間の評価所要時間の比較において大学および歯科技工士学校教員の評価群の所要時間は、臨床系歯科医師および歯科技工士の評価群に比較して短時間であり、またばらつきが少ない傾向にあった。
7. 概略的評価総合計評価値において、歯科技工士学科学生の学内成績上位者の評価値は中位者および下位者より高点で有意の差が認められたが、歯科技工士専攻科学生の学内成績と試験評価値との間には有意の差は認められなかった。また、いずれの評価群においても受験者全体の評価値は歯科技工士専攻科学生のほうが歯科技工士学科学生より高い評価値を示した。
8. 合格基準を総合計点数の60%とした場合、不合格率は評価者群よって異なり、臨床系歯科医師の不合格率はその他の評価者群に比較して高かった。また、いずれの評価者群においても歯科技工士専攻科学生の不合格率は歯科技工士学科学生より著しく低かった。さらに、いずれかの試験課題に評価値が最低点を含む場合を不合格とする合格基準を設定した場合、不合格率は比較的高くなることが明らかとなった。
以上の結果から、歯科技工士資格試験の実技試験評価にあたっては、評価精度ならびに時間的要素から複数の評価者による段階的評価法による概略的評価が望ましく、評価者は十分なトレーニングと評価項目に対する理解と評価レベルの確認を行うことが重要であり、合格基準の設定にあたっては十分な配慮が必要で、不合格者に対しては複数の評価者による再評価の必要性が明らかとなった。さらに学内成績で資格試験の実技評価は困難であり、実地試験による技術評価の重要性が示唆された。
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